はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

痒い、痒すぎる!イベルメクチンの話

日がいちだんと短くなってきました。
今日は霜降。霜の降りる金曜日です。
水を扱うとよい日なのだそうで、水拭きをするととても良いそう。
食事でも、積極的に汁物などを摂ると良いのだそうですよ。


最近、疥癬(カイセン)の子を診ることがありました。
カイセンは、ヒゼンダニというダニの一種が 皮膚に住み着いて起こす皮膚病です。
あらゆる皮膚病の中でも、痒みはトップクラスと言われていて、皮膚を掻きこわしてしまってそれでもなお痒く、血を流しながらも掻く手が止められない…ということも よくあるようです。
実際に1号の診た子も 昼夜を問わず 後ろ足でかいたり、口の届くところは 歯で噛んだり。
届かないところは家具の角に身体をこすりつけてしまうとのことで、皮膚はボロボロでした。


この、カイセン。
一瞬ですが、人間にもうつります。
本来、ヒゼンダニは、種特異性といって、特定の動物にしか 感染はしないもの。
言い換えれば、ヒトにはヒトの、イヌにはイヌのヒゼンダニがいるわけです。
とはいえ、長生きできないだけで、痒みはばっちりあります。
おおよそ30分くらいしか生きられないと考えられていますが、蚊だってブヨだって 数分ですものね。
カイセンで痒いのは、血を吸うかれらとは すこしメカニズムは違うのですが ね。


さて、カイセンの治療には、ノーベル賞受賞、そして コロナの治験開始でもすっかりおなじみとなった、あの薬を使います。
それは、イベルメクチン。
北里研究所の大村先生が発見された化学物質です。


イベルメクチンは、寄生虫に全般的に、しかも 少量でよく効くのに対し、わたしたち哺乳類には まったく作用をしません。
つまり、薬自体による 副作用がほぼない、とてもありがたいお薬なのですね。
最近の研究で、寄生虫だけでなく、一部のウイルスにも効果があるようだとわかってきました。
カイセンは、ダニ…つまり、外部寄生虫の一種ですから、イベルメクチンがとてもよく効くのです。


1号の診た子も、イベルメクチンがよく効いて、あっという間に 症状がカイセン… じゃなかった、改善。
これから、経過を見つつ、皮膚が綺麗に治り、毛が生えてくるよう 治療を進めてゆくことになっています。


実は、この他にも、どうぶつたちにイベルメクチンを使う機会は とても多いのです。
子猫など、お腹の虫にも イベルメクチン。
耳ダニに使うのも、イベルメクチンですし、フィラリアの予防薬も イベルメクチンの仲間です。


イベルメクチンは、このように とても身近なおくすりなのです。
ノーベル賞受賞とか、熱帯病対策の父、2億人を救った薬、などと言われると、どこか 自分たちには遠い存在と思ってしまいますが、そんなことはないのですね。


今回、コロナへの有効性を確認するための治験が始まり、また話題を集めている イベルメクチン。
それがイベルメクチンでも、そうでなくても、早く治療法が見つかればいいなと思います。


あなたのご来院、お待ちしています。