はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

今は、知多半島へは行かないで! 最恐の寄生虫の話

大変なことになりました。
エキノコックスが愛知県は知多半島に定着、の報です。


知多半島は、大都市名古屋からのアクセスのよさもあり、県内屈指の釣り人のメッカです。
そんなところにエキノコックスが定着…?
あの、最恐の寄生虫が…?


以前、当院ブログでも取り上げた、エキノコックス
寄生虫の卵の入った土などが口や傷口から 体に入り、肝臓や脳などで袋のような形になり、肝臓や脳などが押しのけられて ダメージを負う寄生虫症です。
治療せずにいると、死んでしまうこともありますが、治療には手術が必要。
具体的には、寄生虫がいる部分を含めて 臓器を切り取る手術を受けなければならず、
薬を飲めば寄生虫が死んでハイ回復!とはなりません。
寄生虫症は、だいたいは 寄生虫自体が悪さをしているので、薬で虫をやっつければ改善するものが多いのですが、
エキノコックスの場合、寄生虫が肝臓で袋状になり、臓器にダメージを与えます。
がんなどと同じように、ダメージを負った臓器ごと切り取ってしまわなければならないのですね。


この寄生虫症の恐ろしいところはまだあって、すぐには症状が出ないんです。
発症するまでには、年単位で 時間がかかります。
ですから、すぐには わからないことも多く、エキノコックスだ!と診断がつくまでには時間がかかります。
診断がつくまでに、病気はどんどんと進行してしまいますから、とてもやっかいです。


そんな エキノコックス寄生虫の卵から感染してしまうのですが、卵がとても小さいのも 恐ろしいところ。
感染したどうぶつの糞便に含まれるのですが、大きさがわずか0.03mmですから、髪の毛の1/3なんです。
もしもそんなのが手に着いてしまっても、気づかないで口に入ってしまう可能性、高いと思いませんか。


そんなわけで、私たち獣医師は、エキノコックスに対して とても警戒をしています。
獣医師はそもそも、人間が健康でいるために動物の診察や治療を行う職業ですから、
どうぶつから人間に病気がうつる可能性があるとなると…
深刻にならざるを得ないのです。
もともと、北海道のキタキツネが この寄生虫症にかかっていることが多く、北海道で気をつけるべき病気…と思っていたわけですが、
愛知県で出たとなれば。
交通の要所、名古屋も近いですし、セントレアこと中部国際空港もすぐそばですからね。
しかも、知多半島は比較的温暖な気候で、外遊びには向いた地域です。
緊急事態宣言も明け、とはいえ屋内での三密を避け、寒くなる前に遊びに行こう!という人々を介し、全国へ一気に広まってしまう可能性があるのですね。


とはいえ、潜伏期間が長いこともあってか、まだまだ自治体は対策に乗り気ではないようです。
もうすぐ 接種が終わってしまう コロナワクチンや、衆議院解散総選挙など、やらなければならないこと 目白押しですものね。
でもね。
もし、このまま エキノコックスが広がって、定着してしまったら…
- 川遊びは危険なので一切できない。
- 野良猫は素手では触れない。
- 散歩が必要な犬や外へ出かける猫は、帰るたびに全身をよく洗い流す必要あり。それでも危険は残る。危険を避けるには、飼わないか、家の外へは一切出さないかのどちらか。
このようなことになってしまうんです。


ひとまず、私たちにできることは、
- できるだけ危険なエリアへは行かない。
- 行く場合、絶対に絶対に絶対に生水はそのまま口にしない。
- 遊んでいるときも、土や水が口に入らないよう最大限に警戒する。
- 帰宅したら全身をよく洗う。
- どうぶつは連れて行かない。
このような基本的なことです。


エキノコックスは、最恐の寄生虫です。
知多半島でレジャーを計画中の、あなた。
今は行かないでください。
本当に危険です。