はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

熱中症の応急処置、知っておくべきこと

暑いですね!
今年の立秋は先週末、8月7日でした。
ということは、この暑さは残暑。
残…暑……
と、思わず遠い目になってしまう暑さです。
連日、ひどい日には 40度を超えるという、とんでもない最高気温が予想されていますね。
1号も、梅雨明けまでは シャツ+パンツの通勤スタイルで頑張っていましたが、ついにギブアップ。
ガーゼやかのこ素材のワンピースに シフトチェンジしました。


さて、これだけ暑いとなると、やはり熱中症も増えてきています。
フレンチブルやパグなど、特に暑さに弱い犬種の子は特に、ごく短時間でも熱中症を発症してしまいます。
大きなショッピングモール内の動物病院に勤める後輩から、駐車場に車を停めてから、モール内の病院にたどり着くまでに、熱中症を発症したフレンチブルがいると聞いたことも。
そこまで行くと、もはや受診することさえ 命がけになってきますが、
そうでなくても 熱中症になると、見る見る体調を崩してしまうので、気が抜けませんね。


実際、熱中症になると、一分一秒を争います。
とにかく早く病院へ連れて行かなければなりません。
でも、ただ漠然と病院へ向かうより、同時進行でできることがあれば…
というときに、知っておくべき知識の話です。


応急処置をする上で、必ず知っておくべきこと。
それは、熱中症は、体温調節全般ができなくなる病気だ、ということです。


熱中症というのは、高温に晒され続けて 脳が壊れてしまう病気。
それは、間違いではありませんが、熱中症を理解するには 不足があります。


高温に弱い脳が壊れてしまわないよう、体には体温を調整するしくみがあります。
ですから、ちょっとサウナに入ったとか、お風呂につかったくらいでは 熱中症にはなりませんし、ごく短時間ならば 暑い時期に屋外にいたって、熱中症を発症することはありません。
ではなぜ熱中症になるのか。
それは、暑さが体温調節のキャパを超えてしまい、体温が調節しきれなくなるので 脳にダメージが及ぶ、つまり 熱中症になってしまうのです。


熱中症 というと、やはり 暑さで脳が壊れる!と思う方がとても多いです。

そのとおりではあるのですが、それだけではないのが 熱中症の怖さ。
熱中症になると、体温調節全般が効かなくなるのですね。
つまり、熱くなっても冷ますことができないし、寒くなっても 体温を保つこともできないのです。


このことを理解していないと、「先生!うちの子熱中症だと思うんです!体温を下げるためにクーラーボックスに氷水を張って、入浴させながら連れていきますので!!」ということになってしまいます。
冷やせばいい、温度を下げれば助かると思うと、このような応急処置になってしまいますよね。


たしかに、こうすれば、体温は下がりますが、今度は体温が下がりすぎてしまう可能性があります。
これが、体温調節機能がおかされる 熱中症の恐ろしいところ。
応急処置を難しくしている点なのです。


実際、熱中症だからとフルパワーで冷やしすぎてしまうと、体温の上昇が落ち着いたら、今度は体温が下がり始めてしまいます。
下がって、下がりすぎ、平熱を下回ってしまうことも よくあるのですね。
低体温もまた、雪山で遭難している人をイメージしていただくとわかりやすいように、死につながりますし、
熱でダメージが及んだ脳の回復にも、低体温は悪影響を及ぼします。
熱中症だから、何がなんでもとにかくキンキンに冷やさなきゃ!と考えるのは、実は 危険なことなのです。


そのようなわけで、熱中症の 応急処置。
手足の付け根や 首など、太い血管の走っているところに、保冷剤などを押し当てるのは 良いでしょう。
ハッハッと大きく息をしている口を 仰いであげるのも良いですね。
ても、冷水風呂に入れるとかは やめてください。
それくらいなら、横倒しにごろんと寝かせて、冷たい缶ジュースを 足と足の間に入れるなどするほうがよいです。


熱中症
年々 暑くなりますし、どうぶつたちも年々 歳をとります。
歳を取ると暑さに弱くなるのは、わたしたちもどうぶつたちも同じですから、去年よりも今年、うんと気をつけてあげてくださいね。


あなたのご来院、お待ちしています。