はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

熱中症とイオンバランス

梅雨が明け、暑くなり、お盆を過ぎて、そして秋の足音が。
信じられないようでも、夜明けは遅くなり、確実に季節は先へと進んでいるのですね。
真夏生まれで、誕生日の近い 院長と1号。
今年も無事、それぞれひとつレベルを上げました。


真夏といえば 熱中症
前回、熱中症は実は体温調節が壊れるので、冷やしすぎも危ないですよ!というお話をしましたね。
今回は、熱中症を理解する上で欠かせない 電解質の話。
つまりは、ミネラルバランス、イオンバランスのことです。


ミネラル、イオン、電解質
熱中症の話をする上で、こういった単語は、だいたい同じ意味で使われます。
涙や血が少ししょっぱいのも、こういった物質のせいなんですよ。
これらは、血液の中に溶けていて、血液が濃くなりすぎたり、または薄まりすぎたりしないようにしています。
バランスを保つとは?
具体的に見ていきましょう。


そもそも、血液は、血管というホースの中を流れる液体です。
こうした物の中に、赤血球などの細胞や老廃物、栄養なども一緒に流れているのですね。


かつて、理科で習った、「浸透圧」という単語を覚えているでしょうか。
血管は、実は 穴だらけのホースなんです。
でも、血管の中と、血管の外とは、この 浸透圧 のバランスが取れています。
中を流れる物たちは、ホースの中と外を 自由に行き来しつつも、トータルで見れば、外と中にあるものの割合が大きく変わることは
ない。
つまり、中と外とのバランスが取れているわけです。


それが、暑くなってくると…
まず、汗をかきますから、単純に水分が減りますね。
それに、汗はしょっぱいですよね。
つまり、塩分も汗として出ていくのです。
塩分とはなにか。
その正体こそが、ミネラルであり、液体に溶けた状態のミネラルのことを イオン、日本語では 電解質というのです。


電解質は、体の中で、phを保つ役割をしています。
ですから、体から水分や電解質が失われると、phを保つことができなくなるのですね。
では、phが保てなくなると、どうなるのでしょうか。


通常、血液は、わずかにアルカリ性です。
これが、さらにアルカリ側に傾いてしまうのは、たとえば過呼吸のときや、何度も吐いてしまったとき。
このようなとき、多くみられる症状は 筋肉のけいれんです。
今年はまったく見かけることはないでしょうが、大学のサークルなどで、自分の限界を知らない子が飲み過ぎて吐きまくり、しまいには震えだす…といった光景を 見たことのある方は多いのではないでしょうか。
けいれん までは至らなくとも、体調を崩して何度も吐いたときなどに、指先にチリチリとした違和感を感じたことのある方も 多いと思います。
これが アルカリ側に傾いた…つまり、アルカローシスの自覚症状です。
放置すると、意識を失い、死に至ります。


では、逆に、酸の側に傾いてしまうとき。
これは、アシドーシスとよばれます。
喉がひどく渇いたり、吐き気や嘔吐が起きることもあります。
こちらも、放置しておくと 昏睡に陥り、そしていずれ死んでしまう 恐ろしい状態なのですね。


熱中症は、汗をかき 体から水分や電解質が出ていくことにより、体のイオンバランスが崩れます。
つまり、phが酸に傾いたり、逆にアルカリに傾いたりするのですね。
すると、様々な症状が現れてきます。


熱によるダメージで亡くなることもありますが、このように 電解質異常、イオンバランスが崩れたことにより 亡くなることもあるのが、熱中症の恐ろしさです。
とはいえ、予防する方法が明らかになっているのも、熱中症ですね。
今年の夏は、特別な夏。
家の中で、快適に過ごし、世界を感染症から救う夏です。