はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

サル痘のはなし

# サル痘 #WHO #コロナ #獣医師
サル痘が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に指定されて1ヶ月が経ちました。
日本でも患者さんが確認され、本格的に流行してしまうのか…


コロナやインフルエンザのような 呼吸器感染症、いわゆる 咳や鼻水といった症状が出て ウイルスが広がっていくタイプと違い、サル痘で出るのは 主に頭痛や発疹といった症状。
広まり方も、患者さんとの直接の接触が主で、コロナほどの綿密・周到な感染対策は必要ないといわれています。


そんな サル痘。
病原体は、私たち人類が撲滅したといってよい たった二つのウイルスのうちの一つ、天然痘によく似たウイルスです。
え?
撲滅したウイルスに似てる?
じゃそのウイルス対策と同じことをすればいいのでは?
WHOは大げさだなあ…なんて思った方もおられるのではないでしょうか。


ですが、今回のこの サル痘の流行。
今までと違う点があり、そのせいで WHOは警戒をしているんですね。
何が違うのかというと、流行のしかたです。


今までは、アフリカのごく限られた地域で、たまに流行するくらいだったんです。
ですが、今回は、今まで流行していなかった国から流行が始まっているんですね。
それが何を意味するか、というと、もちろん たまたま流行している地域で不幸にして感染、もともといた国に戻ってから 不幸が重なって周りに感染が広がってしまった…という可能性もあるのですが、
コロナのオミクロン株のように、うつりやすいような変異を起こしていたり、
あるいは、今までほとんど病原性がなかったり、弱かった株が、デルタ株のように強い病原性に変異している可能性もあるのではないか?
ということが、WHOを始めとした 専門家が心配していることなんです。


今まで流行していたサル痘は、それほど深刻な症状が出ないことがほとんどなのですが、
今回新しく流行しているものがどうなのか?というのは、まだわかっていないことが多いんですね。
ですから、WHOは早めに警戒を呼びかけている…というわけなんです。
コロナのときよりもやたら早くない!?と驚いた人も多いかもしれませんが、裏にはそんな事情があったんですね。


わたしたち獣医師が、人間の診療をすることはありません。
医師法の第一条に、わたしたちの診療対象が規定されていて、そこにははっきりと、飼育動物、と書いてあるからです。
でも、サル痘のような人獣共通感染症、いわゆる ズーノーシスにおいては、わたしたちの知識も活用してもらえたらと思っています。
だって、その続きには、公衆衛生の向上に寄与する、と書かれているのですから。
医師であるかのように振る舞うことは、絶対にNO ですけどね。