はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

IBD:炎症性腸疾患の話

安倍総理が辞任をされることになりました。
情報がリークされるや、株式市場も為替相場も大きく荒れたそうです。
いろいろな人がいて、いろいろな意見があるとは思いますが、相場はこの長期政権をこのように捉えていたのだなと思います。


そんな安倍総理の辞任理由。
会見では、健康不安と語っておられました。
元々、炎症性腸疾患の持病があり、このコロナ禍の中で再発。
投薬治療で効果がみられているものの、予断を許さない状況なので、治療を優先したい。
そのような話をされていましたね。
今まで約8年、常に自分よりも国民を優先してこられた方です。
そして、同じように難病に苦しむ方にとっても、難病患者だって総理大臣ができるんだ!と、大きな希望であり続けた方です。
希望は、病気に立ち向かう上で、時には薬よりも大きな役割を果たしますから。
これからは自分を最優先に、一日も早く寛解できますように。


さて、そんな 炎症性腸疾患。
腸に炎症の起きる病気の総称です。
安倍総理の持病は、この中でも潰瘍性大腸炎といい、大腸に強い炎症が起きる 原因不明の病気です。
おもな症状は下痢、強い腹痛で、一日に20回以上 お手洗いに行くこともあるのだそう。
1号も 長女を妊娠している時、お手洗いが近く、それくらいの頻度でお手洗いに入っていた時期がありましたが、しんどいです。
起きているのがだいたい16時間として、1時間に1回以上お手洗いに入るわけですから。
集中もクソもないわけで、他に何もできないのですよね。
1号の場合は、妊娠して大きくなった子宮に 膀胱が圧迫され、尿意をとても感じやすくなっていただけでした。
腹痛があるわけでもなく、ただ単にお手洗いに行きたくなる頻度が高いだけでしたが、それでも あんなに辛かったのですから。
都度、下痢や腹痛があるとなれば、どれだけ辛いことかと思います。
安倍総理の場合、奥様と仲が良いことでも知られていました。
そばで見ているしかない 奥様の辛さも、相当なものだったのではないかと思います。


そんな炎症性腸疾患。
実は、どうぶつたちにも よく似た病気があることが知られています。
もともとは同じ病気と考えられていましたが、研究が進み、症状こそ似ているけれど 別の病気だとわかりました。


下痢を繰り返し、しだいに痩せていく。
わたしたちは、そういったご相談をうけると、まずはアレルギーや膵炎、腫瘍といった病気を疑います。
ごはんを変えてみたり、炎症などの数値を見て考えたり。
そして、それでもどうしても改善していかない場合、この病気を疑います。


どうぶつの炎症性腸疾患は、新しい名前を「慢性腸症」といいます。
なにがなんだかわからない病名ですので、お伝えしても 戸惑われる飼い主様も多い病名ですが、
腸に症状がずっとある病気 という意味。
ある意味で清々しいくらいに ストレートな名前なんです。
これは、アレルギーや腫瘍といった 明らかな原因がないのに、腸に炎症が起きて しかもそれをうまくコントロールすることができない病気です。
抗生物質ステロイド免疫抑制剤といった 炎症を抑え込む薬、ごはんなど、さまざまな方法で 症状を抑えることを目指しますが、うまくいかずに どんどん痩せていってしまうこともあります。


こういった経過を辿る病気の場合、転院を繰り返し、いわゆる ドクターショッピングのようにもなりがちです。
ヒトの場合、下痢や体重の変化といった 目に見える変化だけではなく、体調がちょっと良くなったとか、腹痛が減った、マシになったといった、
患者さん自身の体感で 転院を思いとどまることも多くあるそうですが、
どうぶつの場合、やはり 目に見える変化がないと、このままじっくり通い続けよう というよりも、何か新しい治療法を…と、違う病院を探してしまうことも多いのですね。


最近では、再生医療のようなアプローチで この病気に挑んでいる病院さんもあります。
当院は、一般的に手に入る薬で うまくコントロールできるようにという方針でアプローチをしているため、そこまで目新しいことはしていませんが、
ご希望があれば 紹介状…というか、今までの経過を紙にまとめて お渡しすることもできますし、大学病院をご紹介することもできます。


大切な家族が 病気で苦しむのを見るのは、辛いですね。
たとえその家族が 四本足でも、総理大臣でも それは同じだと思います。
当院では、どうぶつ自身の治療もそうですが、看病する 飼い主さまの辛さにも 寄り添った診察を目指しています。
最新のすごい治療法、出たばかりの薬が 常にたくさんあるような動物病院ではありませんが、どうぶつと飼い主さまに じっくり向き合って治療をしている病院です。


あなたのご来院、お待ちしています。