はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

気管がいきなりぺちゃんこに?気管虚脱の話

台風に、熱帯夜に、と 気候の落ち着かない日々です。
恐怖を感じるほどの雨が降った数分後に いきなり晴れたりして、もうほんと日本は温帯というより亜熱帯になってしまってるのでは…

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せめて写真で 涼をどうぞ!


そんな日々、やはり気になるのは 呼吸器の病気。エアコンの効いた部屋から外へ出た瞬間に感じる、うッ というあの息の詰まる感じ。
キュッと身のすくむような 冬の寒さもかなりのダメージになりますが、夏のこの 高湿・高温のダブルパンチも、なかなか厳しいものがあります。


前回 取り上げたのは、短頭種症候群 という病気でした。
マズルの短い いわゆる鼻ぺちゃの子たちは 気道のつくり的に 呼吸器にトラブルを抱えやすく、それがもとで 突然死するリスクが高いので 飛行機に乗れないことがある…というお話でしたね。
犬のほうが マズルの短い種類が多いので、この病気もある程度は知られていますが、猫さんも最近は 鼻ぺちゃの種類が増えてきました。
鼻ぺちゃ猫といえばマンチカン、という印象もありますが、実は アメショーもそちらの部類。
猫さんは、わんちゃん以上に個体差が大きいので、品種でひとくくりにすることはあまりありませんが、イビキなどの症状が出始めると 猫さんのほうが重症なことが多いので、早めに病院へ連れて行きましょうね。


今回は、気管虚脱 という病気の話です。


これは、比較的 小型の子に多いものの、短頭種症候群ほど 特定の品種には偏っていません。
言い換えれば、どんな種類の子でも、出る可能性があるということなんですね。


気管、はわかるけど、虚脱って? と お思いのあなた。
これは、気管が形を保っていられず、ぺたんと平たくなってしまう という病気です。
この 形を保っていられない という現象を 虚脱 とよぶので、気管が虚脱する=気管虚脱 という病名になりました。


気管は、ふつうは ホースのような形をしています。
これが、ぺたんと平たく潰れてしまうので、空気の通り道は狭くなってしまったり、ひどい場合は 塞がってしまったり。
息が吸えないわけですから、死んでしまいます。
死なないために、一生懸命に吸おうとするので、咳込んだり、ガーッガーッといった 喉が鳴る音を立てながら、息をします。
喉よりも奥が原因の音なので、鼻が関係している イビキのような 短頭種症候群の音とも、また違う音がすることが多いです。


悪化すると、いきなり倒れたり、チアノーゼといって 舌が青紫になることがあります。
寒い日のプール上がりのような色ですが、これは寒いわけではなく、息がうまくできないせい。
息ができないから、酸素をうまく取り込めないので、酸素を取り込んだ赤い色でなく、老廃物や二酸化炭素でいっぱいの 青紫になってくるんです。


これは、悪化させる要因として、肥満や興奮がありますが、案外見逃せないのが 首輪による刺激。
はしゃぐタイプの子など、お散歩の時にテンションが上がりすぎて思い切り引っ張ってしまい、首輪が食い込んでしまったりするんです。
これが、案外刺激になって、症状を悪化させてしまいがちなんですね。


日本人の国民病とまで言われている 肩こりなどからの連想もあり、首輪よりもハーネス、チョークチェーンよりもジェントルリーダーが一般的になってきました。
気管虚脱は、原因がわかっていないので、発症するか しないかがわかりません。
少しでも、愁いをなくしておくために、気管に影響を及ぼしにくいものを使うのは、とてもいいこと。
こんど 首輪を買い換えるときには、ぜひ ハーネスも検討してみてください。


ご相談も 承っていますよ。
あなたのご来院、お待ちしています。