はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

短頭種症候群と気管虚脱、付き合い方のコツ

夜明けが遅くなってきています。
お盆前は、5時にはもう完全に夜明け!夏の朝!という感じだったのに、最近では 5時にようやく朝焼け。
5時半近くまで 朝らしい感じになりません。
季節は、確実に 進んでいるのですよね。

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あの夏も この夏も 過ぎてしまえば なんだか恋しい…

そんな最近。
前回、前々回でくわしくお話しした、呼吸器の病気、中でも 短頭種症候群と 気管虚脱との付き合い方、日常生活で 気をつけていただきたいポイントをお話しします。


呼吸器の病気のある子は、全般に気温差に弱いもの。
でも、短頭種症候群は、特別 夏に弱いといわれます。
それは、短頭種症候群の子たちの身体の作りが理由です。


短頭種症候群の子たちは、マズルが短く、空気の取り込み口である 鼻先に熱気がこもりやすいんです。
ここに熱気がこもりやすい ということは、身体に取り込む空気も 熱く湿ったものになりやすい ということ。
取り込む空気が熱ければ、体温は上がりますし、空気を取り込みたいのに 湿気の高いもの、つまり 水分が気道に入ってきてしまっては 呼吸ができません。


体温が上がって暑いから、体温を下げるために口を開けてハッハッハッと呼吸する(パンティング)。
すると、自分の吐いた息で 鼻先の温度や湿度が上がる。
鼻ぺちゃなので、鼻まわりの空気の入れ替え効率が悪く、新鮮な空気が取り込めない。
ますます暑いから、ますます呼吸が増え、ますます熱気と湿気がこもる。
そのうち、マラソンの後や 久しぶりに全力疾走したあとのように、喉の粘膜がむくんで腫れてきます。
すると、空気の通り道が狭くなるため、呼吸が苦しくなってきます。
苦しいから、吸おうと頑張るけれど、頑張れば頑張るほど、身体は辛くなっていく…


しんどいですね。
こういった症状を予防したり、抑えるために、わたしたちが行うのは、大きく三つ。
・酸素の濃度を上げる…酸素室に入れたり、マスクを当てたりします。
・気道を広げる薬を使う…喉の炎症を抑える 消炎剤や、気管支拡張薬、腫れを引かせるような薬を使うこともあります。
・とにかく、涼しいところで過ごさせる…病院なら、酸素室の設定室温をうんと下げて そこへ入れます。


ふたつ目までは、やっぱり 病院でなくては難しいですが、三つ目は おうちでもできます。
短頭種症候群 といわれなくとも、短頭種の子を飼えば、暑さに弱いのは当たり前。
エアコンを導入して、涼しくしてあげてください。
短頭種症候群との付き合い方は、一にも二にも 涼しくすること。
室温を下げることで、寿命が長くなりますから。


いっぽう、気管虚脱は、短頭種症候群ほどは 暑さに敏感ではありません。
それよりも危険なのが、運動と無駄吠えです。


運動は、ストレス発散にも 体重コントロールにもとてもよいこと。
でも、長距離走のような 長くゆっくりとした運動ならまだ良いのですが、激しく呼吸するような運動は 合わない子が多いです。
具体的には、フリスビーやアジリティなどのジャンプをする運動や、短距離を駆け抜ける ドッグレースのような競技。
こういった運動をすると、短い時間で 速く、しかも 激しく 空気が気道を通ります。
これが刺激となり、気管虚脱が起きてしまうことがあるからなんです。


無駄吠えが良くないのも 同じこと。
大きな吠え声を出すと、喉も荒れるため、よりいっそう刺激に敏感になります。
そう。
気管虚脱の子に良くないのは、喉や気道を刺激するようなこと、全般なんですね。
ですから、こういったことを避けるような 生活をさせてあげなければなりません。


喉や気道を刺激する…?
そうなんです。
気管虚脱は、首輪やチョークチェーンがきっかけになることがあるんです。


これを避けるためには、首輪やチョークチェーンは使わず、ハーネスやジェントルリーダーを使いましょう。
フルチョークはかなり見かけなくなりましたが、ハーフチョークは店頭でもまだまだよく見かけます。
元気な子に、きちんと知識のある人が正しくチョークを使うことを止めはしませんが、気管虚脱の子には絶対に使わないほうがいいものです。
特に、元気すぎて お散歩で引っ張り合い、綱引き状態になってしまう子には、使ってはいけません。


短頭種を飼ったら、まずは エアコンを。
気管虚脱といわれたら、首輪をハーネスに変えましょう。
おうちで できるだけのことをして、それでも症状が強く出てしまうのなら、わたしたち動物病院の出番です。


あなたのご来院、お待ちしています。