はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

ワクチン、それは秋

秋も深まりまくって 冬になってきましたね。
保育園のお迎えにいくのに、ノースリーブ+カーディガンを貫いてきましたが、さすがにそろそろ…と フリースを投入。
片手に3歳を抱っこ、もう片手で10ヶ月の乗ったベビーカーを 片手運転していても、数百メートルなら、そこまで汗だくには ならずに済む季節です。


関節痛、尿石症と、寒くなるに従い 増える病気のお話をしてきました。
今日は、年末年始に向けての ワクチンのご案内です。
もう年末年始とかw早wwwと、お思いになりますか?
でもね。
11月最終週、すでに年末年始のペットホテルやトリミングのご予約 どんどん埋まってきているんですよ。
やっぱり、綺麗にして新年を迎えたいですし、年末年始は旅行!という方は、なかなか連れては行けないですものね。
そして、当院に限らず、ペットホテルやトリミングを受けるには、「ワクチンを打ってきてください」というところ 多いんです。
むしろ、ワクチンは不問!というところのほうが 却って心配。
他の子から、恐ろしい伝染病をもらう可能性もあるわけですから。
たとえ、ワクチンについて 何も言われなかったとしても、だいじな家族を守るためには ワクチンを打っていきましょうね。


とはいえ、なんだかわからないけどとりあえず高そう。ボッタクられそう…
そんなイメージの強いワクチン。
実際、ボッタクられた!?!と感じている飼い主さんも多いようで、某質問サイトなどでは、◎円は安いだの、原価は△円くらいなので動物病院はボッタクリだの、子どものワクチンなら無料なのに高すぎるなどと、いろんなことが書かれていたりします。
まあ、原価どうのという方には、獣医師の原価、つまり わたしたちが獣医師になるまでに いくらかかっているのかとか、病院の維持費とかについてもぜひ 原価計算をしていただきたいですし、子どものワクチンは無料という方には 公費補助のないロタウイルスワクチン(1回につき1万2千円で2回接種が標準、しかもインフルエンザ同様打っていてもかかっちゃうこともあり)についても ぜひ考えてみていただきたい、ついでに国民皆保険制度や ペットの飼育頭数と子どもの数についても考えてみていただきたいと思うわけですが…
閑話休題


そうはいっても、ボッタクられたと感じる飼い主さまも実際いらっしゃるわけで、それは 獣医師としては恥ずかしい事態です。
それはつまり、ワクチンをなんで打つのか、どうして必要か、お伝えしきれてないということですからね。


まず、ワクチンは2種類あります。
狂犬病ワクチンと、それ以外です。
わんちゃんの場合、狂犬病ワクチンは毎年1回打つこと!と 法律で決められていますし、ねこさんも 海外から連れてくる場合は 必須のワクチンです。
これは、打ちたいとか 打ちたくないとかでなく、わんちゃんを飼うのであれば必ず打たなければならないもの。
電車には乗るが、電車賃は払わない。
テストは受けなかったが、合格はさせてほしい。
これらと同じように、義務を果たさず権利だけを主張している状態です。
「だって日本にはもうない病気だから、予防する必要はないじゃない」というのは、「だって●●線はしょっちゅう遅れるから、時間どおり到着しない電車にお金を払う必要はないでしょ」「偏差値的には●●学校のボーダーラインは余裕で超えているし、模試でもずっとA判定だったのだから、合格でいいじゃないか」という主張と同じ。
そういう主張を、こじつけ といいます。
また、ねこさんを海外から連れてくるときに必要だから、海外旅行へ連れていくのなら打ちましょう、血液検査もしましょう、とお伝えすると、ときどき「狂犬病は犬の病気でしょう?この子は猫だから、打つ必要はないと思います」と仰る方も。
ワクチンを打っていない子は、空港で止められ旅行から帰ってこれなくなりますので、みなさん最終的にはご理解くださるのですが、「狂犬病」という 名前に惑わされがちなのは事実です。
実際は、犬の病気どころか、すべての哺乳類がかかる病気。
つまり、犬、猫、人間、牛、馬、ネズミ、きりん、みんながかかる病気なんです。

ちなみに、英語では Rabies といい、犬のいの字もありません。


このように、法律に決められた 飼い主さまみんなの義務となっている狂犬病ワクチンに対し、それ以外のワクチン。
子犬・子猫ちゃん用のタイプや、鼻に入れるタイプなど、特殊な場合を除いて、何種類かの病気が一度に予防できる「混合ワクチン」であることがほとんどです。
この混合ワクチン、何種類の病気に効くかで 接種料金が変わる病院さんがほとんどだと思います。
ちなみに、原価も変わります。


まず、わんちゃん。
日本でふつうに出回っている混合ワクチンは、「レプトスピラ」という病気に効くかどうか?で 大きく分かれます。
効かないのは 5種か6種、効くのはそれ以上です。
レプトスピラに効かないものは、さらに コロナ という下痢の病気に効くかどうかで5種か6種かに分かれます。
レプトスピラに効くものは、さらにいくつのタイプのレプトスピラに効くかどうかで、7種から10種までに分かれています。
「とりあえず10種!多ければ多いほうが安心だから!!」と思われますか?
実は、多いほうが副作用が多く、強いと言われています。
ですから、体質によっては 打ちたくても打てない!ということも。
当院では、バランスをみて 6種のものと 8種のものをご用意しています。


そうはいっても、レプトスピラって何?
うちの子は予防が必要なの?
と、迷っている方は、休日の過ごし方を中心に考えます。
まず、休日は野山へ行ってアクティブに過ごす!という アウトドア派の子。
この子には、レプトスピラのワクチンが必要です。
それは、水辺でうつることが多いから。
川や湖のあるところへ行く子は 必須のワクチンです。
他にも、家にネズミが出る…というおうち。
こちらも打っておきましょう。
ネズミのおしっこからうつる病気 ですのでね。


どちらにも当てはまらない、野山へも行かないし家にネズミも出ない という子は、5種や6種でもじゅうぶんと考えます。
当院で6種をおすすめしているのは、コロナウイルス というウイルスはうつりやすくしつこいから。

身体に入りこみやすく、入ったら長くとどまって 感染源となることが多いうえ、他のウイルスといっしょになることで より症状が重くなることが多いからです。

ちなみに、コロナウイルス というのは、ちょっと前に流行った SARSやMERSといった 呼吸器に出るタイプもいますが、わんちゃんでは下痢や吐き気といった 消化器に症状の出るタイプが主です。


それでも迷うーという方。
水辺のレジャーへ行くかなあ…どうかなあ…という方には、とりあえず6種をおすすめします。
それは、レプトスピラは単独のワクチンもあるから。
あとで、やっぱり打ちたい!となったとき、追加で打てるからです。
だいたい、2週間くらいでピークまで上がりますから、わりと直前になってから打っても ワクチンにばっちり守ってもらえます。
ただ、当院も含め、レプトスピラの単独ワクチンは いつもは置いてない!という病院さんも多いです。
やっぱり打ちたい!となったら、まずはお電話して、在庫があるかの確認をしてくださいね。


続いて ねこさん。
ねこさんは 3種と5種のご用意がありますが、使い分けはわんちゃんよりもさらにシンプルです。
5種は、外へ行く子に。
3種は、室内だけの子に。
病院やホテルなど、他の子と「空間を共有する」だけなら、3種で大丈夫です。
5種のワクチンには、3種で予防できるものに加えて 白血病クラミジアも予防できる効果がありますが、これは 他の猫さんと けんかなどで直接接触するとうつる可能性のある病気。
こちらも、副作用がありますので、外へ行く子でなければ 強くおすすめはしていません。

 


このように、簡単におすすめしているようにみえて、わたしたち獣医師は その子にとってベストのワクチンをおすすめしています。
生活パターンは?
休日はどんな感じかな?
問診や、時には雑談などを通して、いろんな情報を集め、ベストなワクチンをおすすめしているんです。
うちの子にどうしてこのワクチンを勧めるのかな?と、気になったら、ぜひ 聞いてみてください。
当院はもちろん、どこの病院でも、きっと アツく語ってくれると思いますよ。


あなたと ワクチンの話をするのを、楽しみにしています。
あなたのご来院、お待ちしています。