はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

コロナウイルスの恐ろしさ

大変なことになっています。
中国でいま話題の、肺炎。


もともと、湖北省武漢 という、中国の中央部にあるところで出た病気でした。
症状は重いものの、亡くなった方はいない…ということでしたが、ついにこの三連休、お一人亡くなったという報道に。
さらに、今日、日本国内でも このウイルスの陽性反応が出たとの報道が。
病気の感染も、ヒトからヒトへの持続的な感染は確認されていないとはいうものの、日本で陽性が確認された患者さんは 中国で肺炎の方と過ごしていたとか。
家族のように、濃厚な接触がある場合の限定的な感染は 否定しないかのような表現もありました。


この肺炎。
WHOが公式に コロナウイルスによる肺炎 と発表しています。


コロナウイルス
人間だけでなく、さまざまな動物に さまざまな症状を引き起こすことが知られています。
牛や馬の下痢から、ウイルスが出ることもありますが、
わたしたち獣医師は、やはり国家試験に出題されることの多い ニワトリと豚にまず注目します。
ニワトリでは伝染性気管支炎、豚ではPED(豚流行性下痢)とTGE(伝染性胃腸炎)が、それぞれ 届出伝染病に指定されていますから。
どの病気も、ヒトにうつることはないと言われていますが、
令和に入ってからも 発生報告のある病気。
いったん出てしまうと、撲滅がたいへんな病気なのです。


そして、獣医師のなかでも、動物病院や 動物園で働く獣医師が恐れているのが、猫のコロナウイルス
猫伝染性腹膜炎、という病気です。
これは、FIP、という略称で呼ばれたり、文脈や相手によっては、さらに略してP、だけで伝わることも。


これは、コロナウイルス という、そこまで強い病気は起こさないタイプのどこにでもいるウイルスが、猫の体内で性質を変え、
強い病原性をもつようになったとき、FIPという病気を発症する、という点がとてもおそろしい病気。
まず、発症してしまった場合の致死率がとても高い病気ですし、
どこにでもいるウイルスが体内で性質を変え、強い病原性を獲得、発症するというメカニズムは、他にはあまりありません。
とても怖い病気なのです。


猫。
動物園にも、猫がいますね。
そう、ライオンやトラなど、猫科のどうぶつたちです。
動物園で働く後輩は、「ここにいる限り、怖くて家で猫は飼えない」といいます。
それは、FIPを恐れてのこと。
ペットとして暮らすねこさんよりも、動物園にいるような子たちは FIPに弱いとされています。
つまり、発症しやすく、発症したらさらに致死率が高いということ。


ペットの猫、いわゆる イエネコ以外の猫科動物は、すべてワシントン条約で保護されています。
言い換えれば、どれも 保護しなければ絶滅してしまう可能性のある、貴重な種なのですね。
そんな貴重な動物を、FIPのような病気で死なせるわけにはいかない…という話です。


FIPの厄介なのは、ほぼ無害なウイルスが突然牙を剥く、ということ。
そして、牙を剥くきっかけも、仕組みも、ほとんど分かっていないことです。
分かっているのは、どうやら、ストレスが関係しているようだ…ということだけなんですね。


FIPは、ヒトにうつることはありません。
飼っているねこさんが FIPでも、人間には感染しませんので、そこは安心。
でも、ウイルス自体は、猫さん同士ではうつります。
うつされた子が またFIPを発症するか、無害なコロナウイルスのままで済むかは うつされた子次第ですが…ね。


中国の肺炎も、FIPも。
感染症は、とにかく予防が大切です。
家から一切出ない!のは、人間には難しくても ねこさんには簡単ですね。
ねこさんは家から出さずに飼いましょう。


あなたのご来院、お待ちしています。