はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

秋花粉のシーズン前に

すっかり秋ですね。

令和最初の夏、楽しめましたか?

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 夏が過ぎれば、秋はもう目の前。

秋といえば… そうです。

花粉のシーズンです。

 

春の花粉に比べ、草による花粉症が多い印象のある 秋花粉。

背の低い草から花粉が… ということは、わたしたちより低いところを移動する どうぶつたちのほうが、付着のリスクが高いんです。

しかも、どうぶつの花粉症の症状が最も出やすいのは、皮膚。

皮膚につきやすく、皮膚に出やすい… ということは、見方を変えれば 洗い流しやすくもあります。

 

シャンプーには、皮膚の上から 花粉を洗い流してあげることで、花粉症の症状が軽くなる効果。

そして、使うシャンプーの種類によっては、皮膚の症状をしずめる効果も期待できます。

 

シャンプーの方法は、以前の記事で お伝えしましたね。

花粉症総まとめ。正しく洗ってラクになろう! - はい、栗本動物病院です。

きみがすぅきだぁーと!さけびぃーたい!!陵南戦 もとい 花粉症対策、総まとめをお送りします。最初からこの記事だけでよかったとか… まず、前提として、どうぶつの花粉症はあります。でも、わたしたち 人間とはちがい、症状は 皮膚に出ることが主。そこで、皮膚についた花粉を洗い流してあげる、つまり、シャンプーをすることで、花粉症対策になります、というお話でした。 シャンプーのコツ。まずは、薬浴用の処方シャンプーであれば、処方した先生に使い方をよく聞きましょう。薬浴用のシャンプーではない場合は、まず全身をよく濡らし、シャンプー液を洗面器一杯のお湯で割って 全身に掛けます。その後、全身をよくよく撫で回し、汚…

 

そうです。

肝心なのは、シャンプーそのものよりも、洗い方よりも、すすぎと乾かし。

地肌まで乾いて初めて、乾いた といえるのです。

そして、地肌まで乾かせないのならば、おうちシャンプーは却って皮膚には悪影響。

地肌まできっちり乾かす自信のない あなたは、プロに任せてしまいましょう。

 

当院では、プロのトリマーが常駐しており、薬浴シャンプーやトリミングを行っております。

一般のサロンさんではトリミングを引き受けてもらえない 皮膚病のある子や、心臓、呼吸器などにトラブルを抱えた子。

そういった子に、動物病院ならではの技術と仕上がり、そして 獣医師がすぐそばで見守りながらの施術という安心を提供しています。

必要であれば、疲れすぎないよう 数日かけての施術や、酸素室での休憩タイムなども取り入れていますので、 トリミング前より元気になって帰ってきた!と、喜んで頂けることもあるんですよ。

当院で混合ワクチンを受けていただいているかどうか? など、確認事項もありますので、ご希望の方は ぜひ一度お問い合わせください。

 

トリミングは、連れてきていただき、お迎えにきていただくので、1日2回来院していただくことになります。

それに、半分医療目的でのトリミングになりますので、基本的に当院では、短いスタイルをおすすめしています。

具体的には、バリカンを使って6MMとか9MMといった、毛足の短めなぬいぐるみのようなスタイル。

可愛らしい雰囲気になりますが、元のスタイルによっては、 ある程度大きくスタイルが変わることにも。

 

ちょっとそれはなあ…という あなたのために、おうちシャンプーを少し楽にする 部分カットというメニューもあります。

これは、お腹など、外からはあまり目につかない部分を短くカットしてしまうスタイルです。

これにより、毛の量が減るので 洗いもすすぎも乾かしも楽になります。

そればかりではありません。

外からは目につきにくい場所 ということは、汚れがつきやすく、かつ 綺麗にしにくく 乾かしにくい場所 ということ。

そこの毛がなくなるわけですから、得られる効果が高いんです。

かなりコスパに優れたメニューといえますね。

 

そして、部分カットのよさは、すぐにその場でできること。

どうしてもトリマーにやってほしい!といったご希望がなく、わたしたち獣医師や、専門的教育は受けつつも、トリミングではなく 看護をメインとして勤務している 看護師による施術でもかまわない!という方には、長時間待つ必要もなければ、改めてお迎えに来ていただく必要もない、オススメのメニューです。

 

去年の秋。

思い返してみてください。

 

お腹や耳をやたらと掻いていませんでしたか。

鼻をベッドやクッションにこすりつけていませんでしたか。

 

それはもしかすると、秋花粉のせいかもしれません。

今年は、症状が出始める前に 対策を始めましょう。

あなたの来院、お待ちしています。

短頭種症候群と気管虚脱、付き合い方のコツ

夜明けが遅くなってきています。
お盆前は、5時にはもう完全に夜明け!夏の朝!という感じだったのに、最近では 5時にようやく朝焼け。
5時半近くまで 朝らしい感じになりません。
季節は、確実に 進んでいるのですよね。

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あの夏も この夏も 過ぎてしまえば なんだか恋しい…

そんな最近。
前回、前々回でくわしくお話しした、呼吸器の病気、中でも 短頭種症候群と 気管虚脱との付き合い方、日常生活で 気をつけていただきたいポイントをお話しします。


呼吸器の病気のある子は、全般に気温差に弱いもの。
でも、短頭種症候群は、特別 夏に弱いといわれます。
それは、短頭種症候群の子たちの身体の作りが理由です。


短頭種症候群の子たちは、マズルが短く、空気の取り込み口である 鼻先に熱気がこもりやすいんです。
ここに熱気がこもりやすい ということは、身体に取り込む空気も 熱く湿ったものになりやすい ということ。
取り込む空気が熱ければ、体温は上がりますし、空気を取り込みたいのに 湿気の高いもの、つまり 水分が気道に入ってきてしまっては 呼吸ができません。


体温が上がって暑いから、体温を下げるために口を開けてハッハッハッと呼吸する(パンティング)。
すると、自分の吐いた息で 鼻先の温度や湿度が上がる。
鼻ぺちゃなので、鼻まわりの空気の入れ替え効率が悪く、新鮮な空気が取り込めない。
ますます暑いから、ますます呼吸が増え、ますます熱気と湿気がこもる。
そのうち、マラソンの後や 久しぶりに全力疾走したあとのように、喉の粘膜がむくんで腫れてきます。
すると、空気の通り道が狭くなるため、呼吸が苦しくなってきます。
苦しいから、吸おうと頑張るけれど、頑張れば頑張るほど、身体は辛くなっていく…


しんどいですね。
こういった症状を予防したり、抑えるために、わたしたちが行うのは、大きく三つ。
・酸素の濃度を上げる…酸素室に入れたり、マスクを当てたりします。
・気道を広げる薬を使う…喉の炎症を抑える 消炎剤や、気管支拡張薬、腫れを引かせるような薬を使うこともあります。
・とにかく、涼しいところで過ごさせる…病院なら、酸素室の設定室温をうんと下げて そこへ入れます。


ふたつ目までは、やっぱり 病院でなくては難しいですが、三つ目は おうちでもできます。
短頭種症候群 といわれなくとも、短頭種の子を飼えば、暑さに弱いのは当たり前。
エアコンを導入して、涼しくしてあげてください。
短頭種症候群との付き合い方は、一にも二にも 涼しくすること。
室温を下げることで、寿命が長くなりますから。


いっぽう、気管虚脱は、短頭種症候群ほどは 暑さに敏感ではありません。
それよりも危険なのが、運動と無駄吠えです。


運動は、ストレス発散にも 体重コントロールにもとてもよいこと。
でも、長距離走のような 長くゆっくりとした運動ならまだ良いのですが、激しく呼吸するような運動は 合わない子が多いです。
具体的には、フリスビーやアジリティなどのジャンプをする運動や、短距離を駆け抜ける ドッグレースのような競技。
こういった運動をすると、短い時間で 速く、しかも 激しく 空気が気道を通ります。
これが刺激となり、気管虚脱が起きてしまうことがあるからなんです。


無駄吠えが良くないのも 同じこと。
大きな吠え声を出すと、喉も荒れるため、よりいっそう刺激に敏感になります。
そう。
気管虚脱の子に良くないのは、喉や気道を刺激するようなこと、全般なんですね。
ですから、こういったことを避けるような 生活をさせてあげなければなりません。


喉や気道を刺激する…?
そうなんです。
気管虚脱は、首輪やチョークチェーンがきっかけになることがあるんです。


これを避けるためには、首輪やチョークチェーンは使わず、ハーネスやジェントルリーダーを使いましょう。
フルチョークはかなり見かけなくなりましたが、ハーフチョークは店頭でもまだまだよく見かけます。
元気な子に、きちんと知識のある人が正しくチョークを使うことを止めはしませんが、気管虚脱の子には絶対に使わないほうがいいものです。
特に、元気すぎて お散歩で引っ張り合い、綱引き状態になってしまう子には、使ってはいけません。


短頭種を飼ったら、まずは エアコンを。
気管虚脱といわれたら、首輪をハーネスに変えましょう。
おうちで できるだけのことをして、それでも症状が強く出てしまうのなら、わたしたち動物病院の出番です。


あなたのご来院、お待ちしています。
 

気管がいきなりぺちゃんこに?気管虚脱の話

台風に、熱帯夜に、と 気候の落ち着かない日々です。
恐怖を感じるほどの雨が降った数分後に いきなり晴れたりして、もうほんと日本は温帯というより亜熱帯になってしまってるのでは…

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せめて写真で 涼をどうぞ!


そんな日々、やはり気になるのは 呼吸器の病気。エアコンの効いた部屋から外へ出た瞬間に感じる、うッ というあの息の詰まる感じ。
キュッと身のすくむような 冬の寒さもかなりのダメージになりますが、夏のこの 高湿・高温のダブルパンチも、なかなか厳しいものがあります。


前回 取り上げたのは、短頭種症候群 という病気でした。
マズルの短い いわゆる鼻ぺちゃの子たちは 気道のつくり的に 呼吸器にトラブルを抱えやすく、それがもとで 突然死するリスクが高いので 飛行機に乗れないことがある…というお話でしたね。
犬のほうが マズルの短い種類が多いので、この病気もある程度は知られていますが、猫さんも最近は 鼻ぺちゃの種類が増えてきました。
鼻ぺちゃ猫といえばマンチカン、という印象もありますが、実は アメショーもそちらの部類。
猫さんは、わんちゃん以上に個体差が大きいので、品種でひとくくりにすることはあまりありませんが、イビキなどの症状が出始めると 猫さんのほうが重症なことが多いので、早めに病院へ連れて行きましょうね。


今回は、気管虚脱 という病気の話です。


これは、比較的 小型の子に多いものの、短頭種症候群ほど 特定の品種には偏っていません。
言い換えれば、どんな種類の子でも、出る可能性があるということなんですね。


気管、はわかるけど、虚脱って? と お思いのあなた。
これは、気管が形を保っていられず、ぺたんと平たくなってしまう という病気です。
この 形を保っていられない という現象を 虚脱 とよぶので、気管が虚脱する=気管虚脱 という病名になりました。


気管は、ふつうは ホースのような形をしています。
これが、ぺたんと平たく潰れてしまうので、空気の通り道は狭くなってしまったり、ひどい場合は 塞がってしまったり。
息が吸えないわけですから、死んでしまいます。
死なないために、一生懸命に吸おうとするので、咳込んだり、ガーッガーッといった 喉が鳴る音を立てながら、息をします。
喉よりも奥が原因の音なので、鼻が関係している イビキのような 短頭種症候群の音とも、また違う音がすることが多いです。


悪化すると、いきなり倒れたり、チアノーゼといって 舌が青紫になることがあります。
寒い日のプール上がりのような色ですが、これは寒いわけではなく、息がうまくできないせい。
息ができないから、酸素をうまく取り込めないので、酸素を取り込んだ赤い色でなく、老廃物や二酸化炭素でいっぱいの 青紫になってくるんです。


これは、悪化させる要因として、肥満や興奮がありますが、案外見逃せないのが 首輪による刺激。
はしゃぐタイプの子など、お散歩の時にテンションが上がりすぎて思い切り引っ張ってしまい、首輪が食い込んでしまったりするんです。
これが、案外刺激になって、症状を悪化させてしまいがちなんですね。


日本人の国民病とまで言われている 肩こりなどからの連想もあり、首輪よりもハーネス、チョークチェーンよりもジェントルリーダーが一般的になってきました。
気管虚脱は、原因がわかっていないので、発症するか しないかがわかりません。
少しでも、愁いをなくしておくために、気管に影響を及ぼしにくいものを使うのは、とてもいいこと。
こんど 首輪を買い換えるときには、ぜひ ハーネスも検討してみてください。


ご相談も 承っていますよ。
あなたのご来院、お待ちしています。

飛行機に乗れない犬。短頭種症候群のはなし

夏です。
それでも、いつの間にか時間は過ぎ、季節は進んでいて。
日の出は少しずつ遅くなり、日の入りも早くなり…
短い夏が終わっていきますね。
素敵な思い出を作れていますか?


夏の思い出といえば、やはり旅行。
中でも、飛行機に乗るくらいの長距離旅行となると。
夏休みくらいの機会がないと、なかなか出かけられませんよね。


実は、飛行機に乗るには いろいろと健康上のチェック項目があるのだそう。
爆発するかもしれないから、酸素ボンベの手放せない人は乗れないとか、
閉所恐怖症、パニック発作のある人は、最後の発作から何日か経っていないと乗れないとか、
ほかにも オストメイトや 妊婦さんなど、さまざまな人が チェックに引っかかる可能性があるのだそうです。


どうぶつたちの場合、もっとも引っかかる可能性が高いのが、呼吸器疾患。
中でも、タイトルにもした 短頭種症候群で、夏場は飛行機に一切乗せてもらえない という犬種があるのを ご存知でしょうか。


短頭種症候群というのは、パグちゃんやシーズーペキニーズ、フレンチブルや一部のチワワちゃんのように、鼻の潰れた顔の犬種に多い呼吸器の病気。
息をするときに、アヒルの鳴き声のような、イビキをかくような音がするので、すぐにわかります。
こういった子たちは、あの愛嬌のある顔立ちや体型と引き換えに、
・鼻の穴=空気の取り込み口が小さい
・軟口蓋(人間ののどちんこ周り)が大きく、空気の通り道が塞がりやすい
・運動に向かない身体の作りなので、太りやすい
といった特徴があります。
つまり、空気をうまく身体に取り込めない という特徴があるんですね。


この病気は、ほぼ その犬種であることとイコール。
あの顔立ち、あの体つきなら、程度の大小はあっても 必ず持っているものです。


飛行機にどうぶつを乗せると、気圧の関係で どうしても平地よりは むくみやすくなります。
1号も、妊娠中に何度か飛行機に乗りましたが、国内線でもそこそこ、国際線では 靴が履けないくらいのむくみに悩まされました。
足が小さいので、日常で靴が履けないくらいまでのむくみになることはほとんどないのですが、気圧ってすごいですね。
機内ではそれなりに調整されているのに、こんなになってしまうんだな…と 驚かされます。


実は、この むくみこそが、短頭種の子たちが 夏に飛行機に乗せてもらえない大きな理由なんです。
というのも、短頭種症候群では、軟口蓋という部分がむくんで のどを塞いでしまうことが多いから。


軟口蓋というのは、人間でいう のどちんこのあたり。
どうぶつには わたしたちのような形ののどちんこはありませんが、気管につながる 軟らかいあのへんです。
カ とかガ とかの音を出すときに、舌が当たる場所でもありますね。
もともと、短頭種の子たちは、この 軟口蓋が長めです。
長いうえに、むくみやすいとなれば、塞がってしまっても まったく不思議はありません。
ここが塞がってしまうと、気管の手前が塞がってしまうわけですから、息ができなくなります。


軟口蓋が大きく、気管にかぶってくると、呼吸をするときに音が出るようになります。
これは、軟口蓋が 気管を通る空気によって震えるから。
つまり、軟口蓋がサックスのリードのような役割をして 音が出るわけです。
そして、これがあのイビキのような音の正体です。


すでに イビキ音がしている子はもちろん、まだの子も、飛行機に乗ると 症状が悪化してしまいやすい。
だから、この犬種の子たちは、夏に飛行機には乗せてもらえないことがあるんです。


意地悪では ないんですね。


呼吸をするとき、ガーガーとアヒルの鳴くような声や、大きなイビキが聞こえるようになったら。
一度、病院へ連れてきてください。
あなたの来院、お待ちしています。

は のつく八月、歯のケアの話

8月になりました。
電車の中には、休みを楽しみに 仕事に向かう人、まさにこれから 遊びにゆく人、楽しかった休みから 戻ってきた人…
みんな それぞれに事情がありますね。

 

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こんな木漏れ日の下で のんびりお昼寝できたらなー…

八月は 和風月名で「はづき」といいます。
旧暦の八月では、落葉、つまり 木々の葉が落ちるのが八月でした。
それにちなみ、葉落ち月、つまり 葉月 となったのだそうです。
小学校で習ったときは、はちがつ を略して はづき とこじつけて暗記しましたが、本当は違うのですね。
そして、さらに 何かとこじつけがちな1号。
はづき の音にちなんで、八月前後には、歯のケアをするのをおすすめします。


歯のケア、と言っても、いろいろあります。
どうぶつの場合、麻酔をかけての 徹底クリーニングと、日常のメンテナンスに分かれます。
ときどき、ペットショップなどでも行っている 麻酔なしでの歯石ケアも、こちらの仲間ですね。


徹底クリーニングは、麻酔のかけられる動物病院でしか行なえません。
当院では、スケーラーなどの 専門器具を使うのはもちろん、超音波で洗浄する 本気の徹底クリーニング。
でも、麻酔は どうしたって体に負担がかかります。
どうぶつたちは、人間のように 部分麻酔や笑気ガスでの口腔ケアはできず、全身麻酔しか選択肢はありませんから、なおさらですね。


徹底クリーニングしなければならない状態にしてしまわないためにも、一度おこなった徹底クリーニングの効果をキープするためにも、大切なのが 日常ケアです。
お手軽なのはやはり デンタルガムを与えること。
当院では、ワクチンも作っている製薬会社が出していて安心の デンタルチュウをおすすめしていますが、やはり味には好みがあります。
デンタルチュウよりも 緑色のグリニーズが好き!というスタッフ家のワンコもいますし、それでもいいんです。
きちんと 習慣として続ける ということが大事ですのでね。


それよりも効果的なのは、やはり食後の歯磨きですが、時間が取れなかったり どうぶつが嫌がることも多いもの。
時間があるときや 機嫌のいいときには頑張ることにして、ふだんはデンタルガムをあげる というのが、いちばんムリなく続けられる方法ですので おすすめです。


ただ、獣医師として おすすめできないのが、蹄を使ったジャーキー・ガムの類と、キシリトール入りのもの。
特に、最近 ジビエが流行っているせいか、エコという意味で 人間の食べない蹄の部分をそのままジャーキーやガムに加工し、どうぶつ用として売っていることがありますが、これはいただけないですね。
ごく細かくパウダー状にするなどして、フレーバーとして振りかけてあるタイプなどでは、問題ない場合もありますが、
ほとんどは「しっかり長持ち!カミカミする力の強い子に」という触れ込みで そのまま干しただけ に近い状態で売られています。
硬いので、しっかり噛むから 歯磨き効果がその分高い という理屈のようですが、
蹄は硬すぎるので 歯が折れたり 最悪の場合には 割れてしまうこともあります。
こういった、蹄のままの ジャーキーや 歯磨きガムには ご注意ください。


それと、キシリトール入りのもの。
これは明確にいけないもの。
キシリトールは、中毒を起こします。


キシリトールは、わたしたち人間では 血糖値を上げにくいんですね。
糖尿病の人たちがキシリトールを甘味料として使うのは、これが理由です。
他にも、むし歯菌をやっつける機能があったり、むし歯の原因となる 酸を中和したりと、素晴らしい機能があるんです。
キシリトールは、人間の歯をケアする上で、欠かせない存在なのですね。
こんなにいいなら…と、犬にも使いたくなりますが、とんでもない!
血糖値が上がらない どころか、下がりすぎて倒れてしまいます。
血糖値は 下がりすぎると、命に関わります。
犬には 決して使ってはいけないものです。
キシリトールの怖いのは、体に入る量が少なくても 症状が強く出る場合があること。
食事といっしょに キシリトールを取った場合、それほどひどい低血糖症状は出ないといわれていますが単独で食べてしまった場合、ごく少量でも 危険な場合があります。
具体的には、10kgくらいの 大きめの柴犬ちゃんや ふつうサイズのコーギーちゃんは、キシリトールガム2個で 倒れる場合が。
5kgくらいのトイプーちゃんなら1個ですし、2kgないチワワちゃんや 小さめのハーフ犬たちなら  カケラでも危険なんです。


人間と同じと思いこみ、キシリトールなら、身体にいいし。
夏は暑いから、食欲がわかないから、せめて甘みを足してあげよう…なんて、与えてしまったらもう終わりです。
わざわざ与えなくても、含まれているジャーキーを与えてしまったら 同じことですから、気をつけてあげてくださいね。


は のつく 八月は、歯のケアのこと。
少しだけでも 意識してみてくださいね。
クリーニングのご相談も お受けしております。

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小さい夏 見つけた!

犬と心臓病② 拡張型心筋症

こんにちわわ!
なんて書き出しで、ブログを書いていた時代がありました。
…(枕に顔を押し当て足をバタバタさせながら)そんな時代もありました。


さて。
前回、心臓病のお話をしました。
見ていただいているようで、twitterなどのSNSや、診察室で、お声がけをいただくことが増えています。
今回は、引き続き心臓病の話をいたします。


前回は、僧帽弁閉鎖不全症といって、小型犬に多い病気でした。
マルチーズヨークシャーテリア、チワワやキャバリアといった子たちに多い病気です。


今回は、拡張型心筋症という病気。
これは、シェパードなどの大型犬や、わんわん物語で有名な コッカースパニエルに多い病気です。


心臓というのは、筋肉の塊です。
肺と全身に血液を巡らすポンプです。
筋肉の中でも、手足のように わたしたちの意志で動かせる筋肉ではなくて、平滑筋 という特殊な筋肉。
他の内臓と同じように、自分の意志では動かせない筋肉=不随意筋 で、できています。


普通の心臓では、この 心臓の筋肉がしっかりしており、ばねのように必要なときに大きく、強く伸び縮みしますので、たくさんの血液を押し出せます。


でも、この 拡張型心筋症 の子の心臓は、筋肉が薄くなってしまいます。
ばねが伸びきってしまった状態ですので、がんばっても 押し出せる血液の量が少ないんですね。
巡る血液の量が少ないわけですから、回数を多く鼓動するしかない…
前回と 似たような展開になってきましたね。


普通の心臓は、水風船に水を入れて口をきゅっと締め、必要になったら口を開け ぎゅっと風船を握りつぶして水を勢いよく押し出すことができます。
僧帽弁閉鎖不全症では、この風船に水をいっぱいに入れても、口をきゅっと締めることができないため、ダラダラと口から水が漏れ続けます。
なので、ぎゅっと風船を握りつぶしても、押し出せる水の量が少ないんですね。
いっぽう、拡張型心筋症では、風船自体のゴムがダランと伸びきってしまっています。
なので、水をいっぱいに入れてぎゅっと握りつぶしても、勢いよくたくさんの水を押し出すことができないんです。
ほかに、風船のゴム自体が分厚くなり、水を入れるスペースが小さくなってしまう、肥大型心筋症という病気もありますが、これは犬たちではかなりまれですので、わたしたちが日ごろよく診るのは 圧倒的にこのどちらか。
心臓病は、口の締まりがゆるくなるか、ゴムが伸びきるか、です。


拡張型心筋症の場合も、僧帽弁閉鎖不全症と同じように、心臓の動きを助ける 強心剤や、出口を広くして 少しでも多くの血液を送り出せるよう、血管拡張薬がよく使われます。
このほかに、拡張型心筋症の場合、心臓の無駄打ち、つまり 鼓動はしているのに 血液を送り出せない といった症状が出ることがあります。
これが続くと、要は 心臓がまったく機能できてない、つまり 止まっているのと同じ状態になります。
いきなり倒れたり、最悪 突然死してしまうこともある、恐ろしい状態です。
こういった症状を抑えてくれるのが、抗不整脈薬。
この薬も 使われることの多いお薬です。


拡張型心筋症は、何より怖いのが この突然死。
突然死を防ぐ!が、何よりも優先されます。
大型犬が、夏の暑さでハアハア言ってるだけ…と思ったら、バタッと倒れてそのまま。
そんなことも普通にあるのが、拡張型心筋症の怖さです。


本格的に暑くなってしまうと、出かけるのもためらいます。
外へ出るだけで具合が悪くなってしまいそうですよね。
そうなる前に、一度 心臓のチェックをしておきましょう。
心臓病は、早くケアを始めれば 始めただけ、調子のよい期間が長く、お薬も少なくて済みます。
少し天気の悪い日なんかは 大チャンス!
早めに 動物病院にお越しください。
当院では、待合室を涼しくして みなさまをお待ちしています。
お散歩ついでに、ぜひ お立ち寄りください!
あなたの来院、お待ちしています。

 

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犬と心臓病① 僧帽弁閉鎖不全症

過去の自分に元気をもらったり、ベッドに頭からダイブして 枕に顔を押し付けながら、わー!と叫びたい気持ちにさせられたり。
長くブログを書いていると、いろいろなことがありますね。
ごきげんよう、あなたの1号です。
(数年前のテンションを引きずりながら)

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1号が思い出しジタバタから復帰するまで、しばらく綺麗な写真をお楽しみください


さて。
前回の記事→http://kurimotoah.hatenablog.com/entry/2019/07/12/172911
で、これから少し 病気の話をしようかなあなどと考えておりました。
有言実行、とまではいきませんが、有言手を付ける、くらいは (忘れちゃうから)やっておきたいタイプの1号です。


最初のターゲットは、前回少しお話に出た 心臓病の話を。
中でも、マルチーズシーズーなどといった小型犬に多い、僧帽弁閉鎖不全症 という病気の話です。


心臓というのは、4つの部屋のある臓器。
人間では、握りこぶしくらいの大きさの臓器です。
握りこぶしの中が、上下左右に分かれていて、左右は筋肉の壁で隔てられていますが、上下を隔てるのは弁という、パラシュートのような形の薄い膜。
それぞれ、右にあるのが三尖弁(さんせんべん)、左にあるのが僧帽弁(そうぼうべん)という名前がついています。


僧帽弁閉鎖不全症というのは、その名のとおり、左側の上下を隔てる弁がきちんと閉まらなくなってしまうという病気。
弁の開け閉めは、心臓の内側の壁とくっついたひもが担当していますが、このひもが ダランと伸びきってしまったり、切れてしまったり、弁自体が 分厚くなって きちんと閉めているのに すき間ができるようになってしまうことがあります。
僧帽弁閉鎖不全症とは、そんな病気なんです。


じゃあ、弁がちゃんと閉まらないと、なぜいけないか?
なぜ病気になるのか?
それは、心臓の役割が 代わりの効かない大切なものだからなんです。


そもそも、心臓というのは、全身に血を巡らすポンプと、肺に空気を回して呼吸をさせるポンプ、二つのポンプの役割を担っています。
僧帽弁閉鎖不全症は、この ポンプの働きが落ちてしまうという病気なんですね。


わたしたちにとって 身近なポンプといえば、自転車用の空気入れでしょうか。
僧帽弁閉鎖不全症は、自転車のタイヤの 空気入れ孔に、きちんと空気入れの先がはまっていない状態です。
こんな状態では、頑張ってシュコシュコとポンピングしても、空気が漏れてしまいますから、頑張ったわりに タイヤにはあまり空気が入りませんよね。
それと同じで、僧帽弁閉鎖不全症になると、頑張って心臓は鼓動するのに、全身や肺に血液が効率よく巡らなくなってしまうんです。


血液を巡らすポンプが効率よく働かないということは、体の中での 液体の動きが悪くなる ということ。
その結果、肺に水がたまる 肺水腫が起きたり、肺でうまく酸素を取り込めなくなったりします。
水にじゃまされ、肺の働き自体が悪くなったり、肺はきちんと働いていても、肺から全身に酸素を巡らすことが 効率よくできなくなるわけです。


するとどうなるか。


たとえば、酸素を100行き渡らせる必要があるとしましょう。
そして、100の酸素を行き渡らせるためには、100の血液を巡らさないとならないとします。
僧帽弁閉鎖不全症でない子が、一度の鼓動で20巡らすことができるなら、鼓動5回で100巡りますね。
でも、病気の子は、一度の鼓動で10しか巡らすことができません。
すると、同じ100巡らすためには、倍の10回の鼓動が必要になるんです。


それだけではありません。
100の酸素を行き渡らせるということは、その分の酸素を取り込む必要があります。
病気でない子が、一度の呼吸で10酸素を取り込めるとすると、100取り込むには10回の呼吸が必要になります。
ところが、病気の子は、一度の呼吸で取り込める酸素は5くらい…
そうなれば、呼吸は20回。
病気でない子の倍、呼吸をする必要があります。


病気の子は、こういった流れで、少し運動しただけで、すぐに息が上がってしまったり、脈が早くなってしまう、頻脈といわれる状態になってしまったりするんですね。


わたしたちは、こういった子には、心臓の負担を取るようなお薬を使います。
お薬でポンプの不具合を治すことはできませんが、たとえば、ポンプにつながるホースが太ければ、流せる血液は多くなります。
つまり、血管拡張剤 といわれる薬を使うことがあります。


また、肺に溜まった水分を おしっことして体の外へ出せるよう、利尿剤を使ったりもしますし、
強心剤で 心臓の働きを助けたり、心臓の働きを抑えて 休ませるような薬を使うこともあります。


僧帽弁閉鎖不全症は、小型犬に多い病気です。
実は、この病気にいちばん良くないのが、怒ること。
嗅ぎ慣れない臭いや 聞きなれない音、チャイムの音や 宅配便のトラックの音にカーッとのぼせ、歯をむき出しながら玄関へ走っていくにも、大きな声で吠えるにも、酸素をたくさん消費してしまいますから。
でも、小型犬たちは、一般的に怖がりでおこりんぼうの子が多いです。
そうすると、どうしても 悪化させてしまいがちです。


病気の悪化を 最小限に食い止めるには、やっぱり 生活改善が重要です。
中でも、血管を狭くしてしまいがちな 塩気のつよい食事やジャーキー。
こういったものはできるだけ 与えないようにしていきましょう。
薬を きちんと飲ませることも、とても重要です。


最近、なんだかやたらとハアハアいうようになったとか。
疲れやすいようだとか。
気になることがあれば、できるだけ早めに ご来院ください。
心臓の治療は、早く始めるほど いい状態をキープできます。


あなたのご来院、お待ちしています。