はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

始めてみましょう!ハズバンダリートレーニング

月曜日の夜(と木曜日の夜中の再放送)は アツい夜でしたね。
プロフェッショナル 仕事の流儀 動物スペシャル」、ご覧になりましたか?

あの中で取り上げられていた 秋田県の大森山動物園。
日本のハズバンダリートレーニングの さきがけなんです。

(アルティス動物園にて)

番組でも説明があったように、ハズバンダリートレーニングとは、どうぶつに不必要なストレスを与えずに健康管理をするためのトレーニングのこと。
採血や爪切りなどができるようになれば、キリンがより良く暮らせるようになる。
動物園での生活をより良くするための方法のひとつです。

ときどき、「そんなものは芸と同じ」「野生動物はしないトレーニング。不自然だ」なんて意見を見かけますが、ハズバンダリートレーニングの真髄が伝わっていないと感じます。
というのも、ハズバンダリートレーニングでは、たとえば 爪切りや採血などといった 健康管理を、無理やり押さえつけてするのではなく、どうぶつ自身が楽しめるようにして行うことを目指します。
子どもに歯みがきをさせるとき、大暴れするのを無理に押さえつけてするのではなく、楽しく自主的にできるよう、キャラクターものの歯ブラシを使ったり 甘い歯みがき粉を使ったり、絵本を読み聞かせたり歌ったりと楽しい雰囲気を作ったりしますね。
小児科や耳鼻科などでも、ぬいぐるみを置いたり 診察の前にはおもちゃをわたしたりと、子どもが嫌がらないよう さまざまに工夫をこらしていると思います。
ハズバンダリートレーニングも、それと同じことなんです。

番組では キリンの話をしていましたが、わんちゃんやねこさんも 同じです。
ハズバンダリートレーニングがうまくいくと、爪切りで大暴れしたり、シャンプーやトリミングでパニックになったり、病院へ連れていこうとしたら 隠れて出てこなくなったりといったことがなくなります。

キリンの場合は、食べものを与えながら慣らしていきます。
食べることが最大のよろこびですから、それを使うわけです。
手から食べものを与えてもらうことで、エサ箱に顔を入れれば食べられるといった、決まりきった退屈な生活でなくなります。
刺激のある野生生活に近づける という意味でも、いい方法なのですね。
そして、食べているときに体を触ります。
徐々にいろんなところを触れるようにし、人間が首に触ったり脚に触ったりしてもだいじょうぶなんだと教えるのです。
このように時間をかけ、ゆっくりと慣らしていくことで、徐々に採血したり、爪を切ったりといったことができるようにしていきます。

いっぽう、わんちゃんやねこさんの場合、慣らす方法は食べものに限りません。
既に 撫でられたり、優しく声をかけられたり、オモチャで遊んでもらったりといったことでも 彼らにとってはよろこびですから。
遊びながら爪を触ったり、撫でるついでに唇をめくって歯を見たり。
クレートケージの中でオヤツを与えれば、災害などへの備えにもなりますね。

そう。
わんちゃんやねこさんにとっては、毎日が
ハズバンダリートレーニングのチャンスなんです。
日常のあらゆることを、トレーニングの一環にしてしまえば、数ヶ月で見違えるように変化します。
いまは、爪切りは大暴れ、歯石チェックでは噛みつき、病院へも連れていけないような子でも時間をかけて練習すれば、必ずできるようになります。
なんせ、あの 大きくて怖がりで繊細なキリンができるようになるんですから。

飼い主さまも、わたしたち医療者も、わんちゃんやねこさん自身も、みんながハッピーになれる健康管理。
そのための ハズバンダリートレーニング、始めてみませんか。
まずは、頭を撫でながら頰も撫でてみる。
抱っこしながら握手してみる。
そんな、ちょっとしたことから始めてみましょう。

 

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あなたのご来院、お待ちしています。