はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

新型肺炎、絶対にやってはいけないこと

寒くなりました。
北海道で19年ぶりマイナス35度、という報道もありましたね。


マイナス35度といえば、外でちょっと深く呼吸するだけでむせるくらいの温度。
気道を通っても、空気が十分あたたまるまえに、気管支や肺にたどり着いてしまうからでしょうか。
呼吸で身体が芯から冷えますから、出来るだけ息をひそめるように、浅く呼吸を繰り返していた記憶があります。
そんな夜、散歩に連れ出した犬たちの鼻の頭は、呼気が凍ったり溶けたりを繰り返し、雪明かりにキラキラと反射して…
いや、寒いですね。
綺麗は綺麗ですけど、でも、とにかく寒いですね。

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そんな寒い中、新型肺炎がどんどんと広まっていきます。
たくさんの方が亡くなったり、入院したり、クルーズ船から下りられなくなったり。
船に閉じ込めておくのはかわいそうだから、とりあえず船から下ろしてあげて、全員病院で隔離を、という論調もありますが、それならば船の中にいた方が快適なはず。
船ではお金を払えばお酒やタバコも手に入るようですが、病院の、しかも感染症病棟であればまず無理ですし。
お風呂や他の人との交流が自由に出来ないのも、船と病院は同じです。
それに、病気でない人を、健康保険を使って入院させ、病院の施設を使わせるわけにはいきません。
妊娠が病気ではないから健康保険が使えない、臨月だから、いつ生まれてもおかしくないからってすぐに入院はできないのと同じです。
病院は、ホテルではありませんから、隔離をするためだけに利用することはできません。
終わりが見えないのが辛いですが、難しいところですね。


さて、これほど恐ろしい コロナウイルス
治療方法が気になるという方も、多いのではないでしょうか。


人間の場合、解熱剤を使って 体力を温存しつつ、点滴で体力を維持して、患者本人の免疫力、回復力での回復を促す治療がメイン。
これに、必要であれば 人工呼吸器を使って呼吸を助けたり、透析をして 腎臓の負担を減らしたりといった さまざまな治療を、個別に組み合わせて行います。
これらは、いわゆる 対症療法 といって、根本的な治療ではなく、ひとつひとつの症状を和らげていくような治療方法。
ウイルス自体を叩くことのできる武器、つまり ウイルスに効く薬がないので、このような治療方法を取ることになります。


この コロナウイルス
以前、お伝えしたように、犬や猫にも うつらない、とはいえません。


もし、うつってしまった場合。
犬や猫と、わたしたち人間との、決定的な治療方法の違いがあります。


それは、解熱剤を使わない、ということ。


特に、猫さんには、絶対に使ってはいけません。
肝臓の構造がわたしたち人間とは全く違うので、猫さんは解熱剤を分解し、身体の外へ出すことができません。
解熱剤は、猫さんにとっては毒なんですね。
使うと死んでしまいます。


今回のこの流行では、コロナウイルスで苦しむ患者さんを何とか救おうと、エボラウイルス に効くといわれている薬や インフルエンザの薬を使ってみたり。
検査が受けられず、いま苦しんでいる症状が コロナウイルスによるものなのかどうか わからない人たちも、何かしたいと、ツボを押したり、部屋の温度を上下させてみたり、お茶を飲んだりと、ありとあらゆる方法が試されているようです。


これからどうなっていくのか…
先のことは わかりませんが、常に大切なのは 科学的な知識に基づく行動を取る ということ。
闇雲にマスクを買い占めたり、おかしな差別をしたりする行動は、科学的とはいえませんよね。
やるべきことは、まず手洗い。
そして、咳やクシャミなど 症状のある人は、周りに広めないために マスクの着用です。


そろそろ、花粉のシーズンです。
当院スタッフにも、花粉症で苦しんでいる人がおり、花粉から身を守る目的、万一感染していた場合に 飼い主さまにうつしてしまわない目的で、マスクを着用して 診察を行う場合があります。
ご理解、ご協力を お願いいたします。


あなたの来院、お待ちしています。

新型肺炎は犬や猫にうつるのか

新型コロナ(nCoV、新型肺炎)が収まりません。
日に日に感染者が増えています。


今日、ついにWHOは緊急事態宣言を出しました。
とはいえ、発症者こそ多いものの、亡くなった方はみなさん高齢の方や、もともと別の病気にかかっていた方だそう。
それほど体力の落ちていない人や、若い人では、ふつうの風邪とほぼ変わらない日数で、回復したという方もいるようです。
感染が確認され、一度は入院したものの、退院する人も日に日に増えてきました。
もともと、コロナウイルスは、風邪の原因となるウイルスでもありますからね。


ネットニュースなどでは、近くの工場から生物兵器が漏れた、などとまことしやかにいう人もあるようですね。
でも、1号がお金も時間もかけて生物兵器を作るなら、コロナウイルスは選びません。
コロナウイルスは、インフルエンザウイルスやノロウイルスほどの感染力でもなければ、エボラウイルス狂犬病ウイルスに比べ、病原性も弱いうえに、すぐ変異しますから。
頑張って作ったのに、すぐ質が変わってしまううえ、効果も影響も大したことない。
そんなしょぼい生物兵器、お金と時間をかけて作る意味なんてありませんからね。
知識もないのに不安だけを煽るのは良くないことです。
こんなデマには騙されないでくださいね。


とはいえ、緊急事態宣言以降、さっそく渡航制限をする国も増えてきたようです。
日本でも、外務省が発表する感染症危険情報を、レベル1から2に引き上げたそうで、
これは「不要不急の渡航は控える」というレベルだそう。
台風のときなど、何度も聞いた表現に近いですね。
これは、もともと WHOの緊急事態宣言が出るとレベル2に引き上げられるものですから、当然のことではあります。


でも、やっぱりなんとなく不安になりますよね。
わたしたちも、職業柄、「犬にうつったりしないでしょうか」「うちの猫は大丈夫かしら?」といった お問い合わせを受けることが多くなってきました。
当院のある 小平市
新宿、東京に1本で行ける中央線沿線ですし、新型肺炎の治療も可能な 公立昭和病院もほど近いため、このような 新しい病気への 意識も高いのです。


結論からいいましょう。
犬、猫への感染はまだ確認されていないけれど、否定する理由はありません。
言い換えれば、ないとはいえない です。


この新型肺炎、もともと 野生の動物からうつったと考えられています。
コウモリか、ヘビか、さまざまな説があるようですが、もともと 野生の動物の持っていたウイルスが、
野生の動物を捕まえて食べるため 取引をする市場で、偶発的に人間に感染。
免疫のなかった人間同士で、どんどんと広まっていっている…というのが 今最も有力と考えられているんです。


こういった病気は、人獣共通感染症、ズーノーシス などと呼ばれます。
人間も、動物もかかる病気なのですね。
種が違っても広まっていく病気です。
中でも、コウモリやヘビは 人間とはかなり遠い動物。
サルやチンパンジーとは比べ物にならない遠さです。
にもかかわらず、うつった、ということは…?


犬や猫は、人間と同じ哺乳類。
ヘビは爬虫類です。
ヘビからヒトに感染しているのなら、
爬虫類から哺乳類に感染したということ。
哺乳類どうし、ヒトからイヌ、ヒトからネコへ、うつらないとは限らないんですね。


とはいえ、どうぶつにマスクをつけるのも難しいですから。
わたしたちが 愛犬家、愛猫家として いまできる対策は、ふだん どうぶつに触るときと同じことです。
つまり、どうぶつにキスするなど、不要な濃厚接触は避ける。
どうぶつに触った後は、手洗いやうがいをする。
こういった、普通のことを普通にしていくことが とても大切なんです。


こういった、新しい病気、まだ情報の少ない危機に、わたしたちは翻弄されがちです。
でも、大切なことは、昔からずーっと 変わらないんですね。
病気を怖がることは大切です。
でも、怖がり方を間違えてはいけません。
いま、必要なことは、マスクやレトルト食品の買い占めや、SNSでの個人特定などではなくて、自主的な隔離と 手洗い・うがいです。


知識に基づく、確かな医療。
あなたのご来院、お待ちしています。

 

コロナウイルス と デマのおそろしさ

コロナウイルス の脅威が続いています。
感染が初めて見つかった武漢は、周辺都市と合わせ、明日の旧正月を前に、交通を遮断することになりました。
日本からは、成田・関空から直行便があり、全便欠航となっているそうですね。


原因のコロナウイルス は、MERSと同様、コウモリに由来すると分析されているようです。
コウモリの体内でコロナウイルスが変異→そのコウモリを食べたヘビが感染→ヘビを捕まえて市場で販売→市場関係者から感染拡大、という説が有力なようですよ。

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ウミヘビ…とは また違うヘビの話


先週、猫科動物で恐れられている 猫コロナウイルス感染症、またの名を FIPの記事を書きました。
では、FIPにならないコロナウイルス に感染すると、どうなるか。


犬、猫で知られているコロナウイルス 感染症は、主に子犬・子猫に 下部消化器症状 がみられます。
具体的には、下痢。
ちょっと緩くなる、というより、水状、泥状に近いくらい、ピーピーの下痢になります。


子犬や子猫は、この 下痢が原因で、死んでしまうことも。
でも、それは ウイルスのせいというより、下痢によって脱水するなどしたせい。
コロナウイルス による下痢でも、寄生虫など その他の要因による下痢でも同じように、脱水などが起きれば 死んでしまう可能性があります。


それから、コロナウイルスは、他のウイルスと混合感染することも多いもの。
そうなると、ウイルスがそれぞれ体内で暴れ、ウイルスに応じた症状が起こるので、加速度的に弱ってしまう場合もあります。


とはいえ、もともと、コロナウイルス はどこにでもいる類のウイルス。
ある程度の月齢になれば、自然とかかり、免疫を獲得します。
その結果、さほどひどい症状が起きることは少なく、FIPを除き、コロナウイルス による病気で 大人になったどうぶつが死んでしまうことはまれなんですね。


人間でも同じで、いわゆる風邪は、コロナウイルスによるものであることも多いとか。
でも、普通のコロナウイルスであれば これほどの問題になることはありません。
いま、問題となっている、新型のコロナウイルス は、病原性が強く、症状が重いのです。
だから、これほどの深刻な事態になっているのですね。


とはいえ、いま最も恐ろしいのは、病気そのもののパンデミック(大流行)よりも 病気にまつわる悪質なデマ と言われています。
すでに、このコロナウイルスに感染し発症している人が関空から病院へと搬送される途中で逃走した というデマが拡散し、否定されています。
以前、地震のあとに ライオンが逃げたとか、古くは 井戸に毒が入れられた なんてデマもありました。
こういった事態のときは、まことしやかな嘘や、出所不明な 訳のわからない噂に 振り回されてしまうことも。


なにか、情報を知ったら、何でも鵜呑みにして広めるのではなく、必ず 裏をとりましょう。


小さな家族の健康管理、たしかな情報の知りたい方は 当院へ。
あなたのご来院、お待ちしています。

コロナウイルスの恐ろしさ

大変なことになっています。
中国でいま話題の、肺炎。


もともと、湖北省武漢 という、中国の中央部にあるところで出た病気でした。
症状は重いものの、亡くなった方はいない…ということでしたが、ついにこの三連休、お一人亡くなったという報道に。
さらに、今日、日本国内でも このウイルスの陽性反応が出たとの報道が。
病気の感染も、ヒトからヒトへの持続的な感染は確認されていないとはいうものの、日本で陽性が確認された患者さんは 中国で肺炎の方と過ごしていたとか。
家族のように、濃厚な接触がある場合の限定的な感染は 否定しないかのような表現もありました。


この肺炎。
WHOが公式に コロナウイルスによる肺炎 と発表しています。


コロナウイルス
人間だけでなく、さまざまな動物に さまざまな症状を引き起こすことが知られています。
牛や馬の下痢から、ウイルスが出ることもありますが、
わたしたち獣医師は、やはり国家試験に出題されることの多い ニワトリと豚にまず注目します。
ニワトリでは伝染性気管支炎、豚ではPED(豚流行性下痢)とTGE(伝染性胃腸炎)が、それぞれ 届出伝染病に指定されていますから。
どの病気も、ヒトにうつることはないと言われていますが、
令和に入ってからも 発生報告のある病気。
いったん出てしまうと、撲滅がたいへんな病気なのです。


そして、獣医師のなかでも、動物病院や 動物園で働く獣医師が恐れているのが、猫のコロナウイルス
猫伝染性腹膜炎、という病気です。
これは、FIP、という略称で呼ばれたり、文脈や相手によっては、さらに略してP、だけで伝わることも。


これは、コロナウイルス という、そこまで強い病気は起こさないタイプのどこにでもいるウイルスが、猫の体内で性質を変え、
強い病原性をもつようになったとき、FIPという病気を発症する、という点がとてもおそろしい病気。
まず、発症してしまった場合の致死率がとても高い病気ですし、
どこにでもいるウイルスが体内で性質を変え、強い病原性を獲得、発症するというメカニズムは、他にはあまりありません。
とても怖い病気なのです。


猫。
動物園にも、猫がいますね。
そう、ライオンやトラなど、猫科のどうぶつたちです。
動物園で働く後輩は、「ここにいる限り、怖くて家で猫は飼えない」といいます。
それは、FIPを恐れてのこと。
ペットとして暮らすねこさんよりも、動物園にいるような子たちは FIPに弱いとされています。
つまり、発症しやすく、発症したらさらに致死率が高いということ。


ペットの猫、いわゆる イエネコ以外の猫科動物は、すべてワシントン条約で保護されています。
言い換えれば、どれも 保護しなければ絶滅してしまう可能性のある、貴重な種なのですね。
そんな貴重な動物を、FIPのような病気で死なせるわけにはいかない…という話です。


FIPの厄介なのは、ほぼ無害なウイルスが突然牙を剥く、ということ。
そして、牙を剥くきっかけも、仕組みも、ほとんど分かっていないことです。
分かっているのは、どうやら、ストレスが関係しているようだ…ということだけなんですね。


FIPは、ヒトにうつることはありません。
飼っているねこさんが FIPでも、人間には感染しませんので、そこは安心。
でも、ウイルス自体は、猫さん同士ではうつります。
うつされた子が またFIPを発症するか、無害なコロナウイルスのままで済むかは うつされた子次第ですが…ね。


中国の肺炎も、FIPも。
感染症は、とにかく予防が大切です。
家から一切出ない!のは、人間には難しくても ねこさんには簡単ですね。
ねこさんは家から出さずに飼いましょう。


あなたのご来院、お待ちしています。

2020年の年頭所感

2020年になりました。
令和 初のお正月ですね。
9連休を堪能した方も、ふだんと変わらず 日常を駆け抜けた方も。
時代と年の初めです。
平成の自分も良かったけれど、令和の自分はもっと良い。
そう思えるように、頑張っていきたいですね。

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今年の撮り初めは 実家そばの四季桜でした。

令和はもっと 気に入る写真が撮りたいな。


去年の、ラグビーワールドカップに続き、今年は オリンピックやパラリンピックが開催されます。
あの、東京!ウワアーッ!の中継を見ていたのが、つい先日のことのようです。


東京大会に出ること。
それを目標とし、叶えた選手はもちろん素晴らしいのですが。
前人未到の五連覇を目指した伊調馨選手、現在治療に専念している 池江璃花子選手をはじめ、今回代表に選ばれなかった選手にこそ、惹かれてしまう自分がいます。
甘いジュースも大好きだけれど、ほろ苦いコーヒーにも惹かれる。
努力や、才能や、絶望感や、悔しさや、称賛や、夢や、渇望や…
今までのすべてが濃縮して作り出す、唯一無二のその苦みだからこそ、惹かれてしまう。
…1号もまた一つ、大人になったかもしれません。


いろいろなことがある 今年。
今年こそ、そして 今年も、
頑張っていきましょう。
 

猫と心臓病・終章 治療と予後のはなし

クリスマスでしたね。
1号にとっては、下の子の誕生日でもありました。
サンタさんがやってきた方も、サンタさんの代行という重責を果たされた方も、ふつうの水曜日だった方も。
みなさまお疲れ様でございました。


さて。
今回は、先週の続き。
猫と心臓病 シリーズの3番めの記事をお届けします。


前回、お伝えしたのは、心臓病で足の痛みが出ることがある、ということでした。
それは、肥大型心筋症という、心臓病の筋肉が病的に大きくなる病気によるもの。
全身の血の巡りが悪くなると血栓ができ、足への血管を詰まらせるために激痛が起きる、という流れでした。


実は、当院、この状態で駆け込んできた子を たくさん診ています。
当院には休診日がないので、ふだんは もっとご自宅に近い病院などにかかっている子が、よりによってかかりつけ医の休診日に…!と、駆け込んで来られることが多いんです。


心臓病で足の痛みが出るまでになると、詰まりを取るための治療が必要になります。
飲み薬が効くのも待っていられない、急を要する事態ですから、直ちに入院して 点滴の治療をします。
血栓を溶かす薬、言い換えれば、カサブタを溶かして血を止まりにくくような薬や、心臓の機能を改善する薬を、ひたすら点滴します。


ものすごく高いけれど、時間を戻したんですか?レベルでものすごくよく効く薬を使うか?
一定の効果はあって、実績もたくさんあるけど、ものすごくよく効くというほどではない薬を使うか?
体質や持病の関係で、一般的によく使うものが使えないから、また別な方法を使うか?


人間と違い、保険や 高額医療の制度のない どうぶつたち。
いわゆるペット保険も、月間の使用額や回数には上限があるものがほとんどですし、ねこさんの場合 まだまだ入っていないという方も多いので。
飼い主様や、その子の状態を見ながら、どの薬を使うのか?を 判断していきます。


入院、点滴で症状が改善したら、退院して飲み薬の治療に移行します。
心臓の機能を上げる薬。
心臓の負担を減らす薬。
詰まりにくい血液の状態を保つ薬。
さまざまな薬を使い、少しでもいい状態へもっていけるようにします。


足にまで症状の出るレベルの心臓病ですから、飲み薬もとても重要。
でも、飲みたがらない子も多いので、出来るだけ数を少なくしたり、ごはんなどに混ぜて 飲ませやすいものを選んだり。
他の子に評判の良かったものにしたり。
いろいろ工夫をしながら、病気と付き合っていきます。

 


予後についても 少しだけ。
この病気になった子、しかも、入院・点滴にまでなった子は、やっぱり その後5年、10年と長生きすることは 難しい場合が多いようです。
でも、治療が手遅れにならなければ、おうちに帰れる子も多いんですよ。


足が痛そう?
最近機嫌が悪いし、歩きたがらない。そういえば元気もないようだけど…
そんなふうに感じたら、早めに動物病院を受診してください。
それは、待っていても、治らないどころか、悪化する一方です。
最悪、突然亡くなってしまうこともありますから。
様子を見たりはせず、ご相談くださいね。


あなたのご来院、お待ちしています。
 

猫と心臓病 「風が吹けば桶屋が儲かる」

寒いですね。
寒さにもいろいろありますが、忘れられないのはやはり 某国での寒さ。
気温はマイナス20度以下が当たり前なのですが、向こうで気にしているのはそれより何より 体感温度
実際の気温がどうか?より、何度くらいの寒さと感じるか?が大事なんです。

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川が凍り出す時期。

来てます。寒波が来てます。

 

そんな某国、天気予報に欠かせないのが 「ウインド・チル」の有無でした。
これは、日本で最近使われるようになった、「チルってる=心地いい」とは、真逆の意味。
ウインド・チルとは、北極からの風が強く吹くことなんです。
すごく冷たい風が吹いてくるので、気温は高くても 体感温度がむちゃくちゃ下がります。
晴れた日など、「今日は気温はマイナス20度くらいまで上がりますが、お昼ごろはウインド・チルがあるので、体感温度はマイナス40度以下。室外へ出るのは避けましょう」なんて、予報を聞くことがあります。
低すぎてなんだかよくわかりませんが、気温の差でいうと、20度くらいです。
この差を、日本で考えてみます。
いま、12月の東京の平均気温は 12度。
8月の平均気温が、ちょうど20度くらい上、31度くらいです。
つまり、風が吹くだけで、実際の気温は8月なのに、12月くらいに感じられてしまう、というのが、ウインドチルなんです。


たかが 風。
でも、気温を20度も下げて感じさせるくらいの力があるのが 風なんですよね。


そんな 風。
風が吹けば桶屋が儲かる、ということわざを ご存知でしょうか。
1. 風が吹くと、埃が立つ
2. 埃が目に入り、目の病気で失明する人が増える
3. 失明した方は音楽を生業とすることが多いので、三味線の需要が増える
4. 三味線の材料にされるため、猫が減る
5. 猫が減ると、ねずみが増える
6. 増えたねずみが桶をかじって壊す
7. 桶の需要が増えるので、桶屋が儲かる
というのが一般的ですが、オホーツク海沿岸では違うのだそう。
オホーツク海沿岸バージョンでは、
1. 北風が吹くと、流氷が接岸
2. 室温が氷点下になる
3. 水場で使われる桶が凍結し、壊れる
4. 桶の需要が増すので、桶屋が儲かる
と、全く別な流れで 桶屋が儲かるのだそうですよ。

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寒波により、完全に凍りついた時期の同じ川。

セントラルヒーティングがなければ、確かに、室内のものが壊れてもおかしくないかも。


ところで、足の痛みから、心臓の病気がわかることがあるのを ご存知ですか。
一見、まったく話がつながらないようですが、「風が吹けば桶屋が儲かる」のと同様、背後には隠された流れがあるんです。


足の痛みを引き起こす 心臓の病気。
それは、肥大型心筋症 という病気です。


肥大型心筋症とは、その名の通り、心筋が肥大する病気。
ひらたくいえば、心臓の筋肉が 分厚くなる病気です。
筋肉体操などで鍛えられる、いわゆる 裏切らない 筋肉とは違い、心臓のような臓器は 平滑筋 といって、鍛えても大きくはならない筋肉でできています。
これが、大きくなってしまう病気。
それが 肥大型心筋症なんです。


心臓の筋肉が大きくなる、つまり、心筋が分厚くなると、何がいけないか。
まず、心臓の中の部屋、血液を貯めておくスペースが 狭くなります。
これにより、一回の鼓動で 押し出せる血液の量が少なくなりますね。
全身に血液を巡らせるために、鼓動の数が増えるわけです。


さらにいけないのは、鼓動がうまくできなくなること。
そもそも、心臓は、電気信号で鼓動を生み出しています。
縮め!という電気信号が心臓の筋肉に伝わるから 縮む。
縮め!の信号がなくなるので、ゆるむ。
これの繰り返しが 鼓動です。
ということは。
縮め!の信号が、心臓の筋肉にうまく伝わらなかったり、伝わっても 縮むことができない場合。
心臓は鼓動ができません。


病気で大きくなってしまった 心臓の筋肉は、信号をうまく伝えられず、伝わっても うまく縮むことができません。
つまり、鼓動ができないんですね。


鼓動ができないということは、心臓が止まっているのと同じこと。
全身に血液が巡らないわけです。
でも、止まりっぱなしではありません。
止まりっぱなしでは死んでいたり、倒れたりします。
病気が進行して 重症になれば、もちろんそうなることもありますが、初めのうちは ときどき脈が飛ぶとか、脈が乱れる状態になります。


この、脈が飛んだり 乱れたりしているとき。
血液はどうなっているか?というと、澱んでいます。
巡らない、動いていないわけですからね。


するとどうなるか。
しだいに集まり、固まって、栓を作ります。
これが突然、後ろ足のほうへと伸びている血管に詰まってしまうことが ねこさんではよくあるんですね。


脳の血管に栓が詰まると、脳梗塞を起こします。
このとき、感じる症状としては、「経験したことのないほどの頭痛」「バットで頭を思い切り殴られたような痛み」など、とにかく強い痛みが出ます。
これと同じことが 足に起きるわけです。
脳梗塞と違い、意識はありますから、痛いままなのですね。


そうです。
これが、足の痛みから 心臓病がわかる!?の流れ。
1. 心臓の筋肉が病的に分厚くなる
2. 電気信号がきちんと伝わらなかったり、伝わっていても送り出せる血液の量が減る
3. 血液の巡りが悪くなる
4. 血液が澱み、血栓が出来る
5. 血栓が詰まって、痛みが出る
全身のうち、到達するまでの道のり=血管が長い分、途中で詰まるリスクが高いのが 足。
そして、動かす部分なので、より症状が分かりやすいのも 足なんです。


…すっかり 長くなりました。
次回、治療と予後(その後)を お送りします。


当院、かなり 経験を積んでいます。
ある日急に足が動かなくなり、ニャーニャーと騒ぐようになったら。
出来るだけ早く、病院へ連れて行ってください。
それは、様子を見ていても、良くならないどころか どんどん悪くなっていく病気。
引っ張れば引っ張るほど、時間もお金もかかるし、命にも関わる病気です。


あなたのご来院、お待ちしています。