はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

抗生物質 虎の巻

いーきーなーりーですが!
冬です。
昨日、一昨日は暖かいを超えてもはや暑く、日中はシャツ1枚で犬の散歩に出られたのが噓のように、今日は寒いですね。
これから、いよいよ冬になるんだなと、ユニ○ロのダウンベストに袖をとおしながら噛み締めています。


そんな ここ数日。
実は、1号はお休みをいただいていました。
というのも、去年のクリスマス生まれの次女が 高熱を出していたから。
熱のある子は 保育園にも行けませんし、病児保育もいっぱい。
電話をすると、「もうご予約でいっぱいです。いまの時期、予約もなしにいきなりお預かりのできる病児保育なんてありませんよ」とけんもほろろに断られ、えっ?病児保育って病気の子がいくやつじゃ…病気って事前に予約できるの??と 頭の中に疑問符がクルクルしましたが、背に腹は変えられず お休みをいただいて看病に専念しました。
なんとかしてー!と 駆け込んだ小児科も、「院長が倒れましたので、代診医師1名で診察を行っております。お待たせして申し訳ありません」の看板があり、待合室には体調と機嫌の悪いちびっ子と 疲れ果てた親御さんが満員電車並みにひしめき合い、あまりの人手不足に 受付のおねえさまが駐車場の交通整理や何かの後片付けに追われ…という地獄絵図。
急な気候の変化は、影響が大きいですね。


そんなわけで、半日がかりで ようやく手に入れたのが、
抗生物質、整腸剤
・咳止め、痰と鼻水の切れをよくする薬
・坐薬の解熱剤
のセットでした。


というわけで、抗生物質の話をします。
抗生物質、またの名を 抗生剤。
国によっては、ドラッグストアでサプリなどのように気軽に買えてしまうとか。
でも実際は、抗生物質は わりと難しい薬。
使い方を間違えると、大きなしっぺ返しがありますから、なかなか気軽には処方できないお薬なんです。


抗生物質の難しさは、使い方を間違えると 簡単に「耐性菌」といって、薬の効かない 強い菌ができてしまうことにあります。
菌をやっつける目的で使ったのに 一歩間違うと、やっつけるどころか むしろより強い耐性菌ができてしまう。
これが、抗生物質は難しい と言われる理由です。
しかも、 耐性菌というのは、「飲み忘れがあった」「飲ませようとしたら寝てしまって飲ませられなかった」「症状が良くなったから、飲むのを止めた」「余ったから取っておいて、次回調子が悪くなったときにまた使う」なんていう、お薬を使っていると「あるある」な状況で 簡単に生まれてしまうんです。
そう、抗生物質は、医療者のように 医学の知識のある人ではなく、体調が悪かったり 看病で疲れていたりする 使用する人自身こそが正しく使わなくてはならない薬です。
使い方を間違えたときの代償が とても大きいのが 恐ろしいんですね。


さて、そんな 抗生物質
どうぶつたちに処方されたとき、こうするといいですよ!のコツを お伝えしますね。


まず、包みにはすぐに飲ませる日付とタイミングを書きましょう。
錠剤であれば アルミのあれに、粉薬であれば 袋に直接、「●月●日 朝」というふうに書きます。
これで、飲ませたと思ってたのに!とか、もう飲んでたの!?知らずにもう1回飲ませちゃった!なんて事故を防げます。
次に、飲ませ方を確認します。
ごはんに混ぜてよいか?混ぜてはいけないのか?
食前?食後?
そういったことを確認してください。


実際に飲ませるぞ、となったら、まずはごはんに混ぜて飲ませるのか、混ぜないのかを決めます。
喉の奥に薬をうまく入れられる という器用な方は、混ぜるよりも 直接飲ませることをおすすめします。
ごはんに混ぜると、どうしてもロスが出ますし、猫さんは特に、薬の影響でごはんの味や食感が変わるので 嫌がる子も多いからです。
が、中には1号家のシェパードのように、飲んだふりをして 後からペッ!と吐き出す子もいますから、きちんと飲み込んだかどうか?を よく確認してくださいね。


きちんと飲めたら、それを続けます。
これが、実はいちばん大事なこと。
一度や二度飲ませるのではなくて、わたしたち獣医師がお伝えした期間、お出しした量を きちんと飲みきってください。
途中で良くなったから とか、なんか多い気がする とか、そんな理由で 飲むのを止めてはいけません。
家事に仕事に育児に介護、何かと忙しくてちゃんと飲ませる自信がない!という方は、長く効くタイプの注射が使えることもあります。
先生に相談してみてください。


抗生物質の使い方を失敗してできてしまった 耐性菌。
ときどき、MRSAなどという 恐ろしげな名前の菌が、院内感染のニュースなどで出てくることがありますが、実はあれも耐性菌の一種です。
耐性菌というのは、抗生物質が効きません。
つまり、薬でやっつけることができないので、感染してしまったら最後、患者さんの免疫力に頼るしかなくなります。
抗生物質が効かない 恐ろしい菌を生み出さないため、抗生物質はきちんと飲まなければならないんです。


お渡しするときに お伝えしているものの、なかなかお伝えしきれないのが もどかしいところ。
気になることがあったら、ぜひおたずねくださいね。
1号はもとより、抗生物質について何も語れません…という獣医師は ほとんどいないはず。
あなたと抗生物質のお話をするのを、楽しみにしています。