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はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

獣医師が語る、ノーベル医学賞とフィラリア症のおはなし

年の瀬を前に、諸々振り返りだした ここ最近の1号です。
みなさま 2015年は どんな1年でしたか?

さて、1号が帰ってきてからはや1年となる 当ブログ。
皆さまに知っていただきたい 季節の予防や、おすすめの過ごし方も 一周した感じがあります。
そこで、2016年は、いろんな病気の お話をしていこうと思っています。
私たち獣医師が 日常よく見る病気から、めったに見ない病気まで、幅広く取り扱っていく予定です。
この病気について書いてほしい!というリクエストがありましたら、当院Twitterまでお寄せくださいね。

最初となる今日は、フィラリア症のお話です。
実は、つい先日授賞式が行われた ノーベル医学賞と、ふかーい関係があるんですよ。

フィラリア症というのは、外飼いの子やアウトドア好きの子など、蚊に刺される機会の多い子に よくみられる病気です。
初めは 蚊の吸い口を通るくらい小さかった寄生虫が、血管に入ったあとでどんどん成長します。
そして、ついには 心臓に入り、血液が心臓から送り出されるのをじゃまするように。
素麺のような 白くて細長い寄生虫が心臓にぎっしり詰まってしまい、血液を送り出せなくなったり、
血管に詰まってしまって 肺や肝臓などにひどいダメージを与えることもあるんです。
ゼイゼイという咳をしたり、失神したり、お腹に水が溜まってパンパンになったりするなどの症状が出て、おかしいなあと病院へ連れてきたら、超・緊急の大手術になったり、中には間に合わなくて亡くなる子も。

こんな恐ろしい病気である フィラリア症。
実は、かつて日本じゅうで、ごくふつうにみられた病気でもありました。
沖縄県民の1/3で、身体の中からフィラリアが見つかった などのショッキングな事実もあれば、
上野の銅像でも有名な、明治維新の立役者 西郷隆盛も、フィラリア症にかかっていたんですよ。
この フィラリア症、日本では人間の患者さんを見ることは もうほとんどなくなりましたが、アフリカを初めとした熱帯・亜熱帯地域では 今でもたくさんの人がかかる病気なんです。
そういった地域で まん延しているフィラリア症は、血管よりもリンパ管に入り込んで詰まってしまうことが多く、もし このタイプのフィラリア症にかかってしまうと、治ったあとも後遺症に苦しむことになります。

こんな恐ろしい病気の原因となる フィラリアに、とてもよく効く虫下し。
それが、今回 ノーベル医学賞を受賞した 大村先生が発見した イベルメクチン というお薬なんです。
いま、当院で フィラリア症のおくすりとして処方しているのは、イベルメクチンよりさらに わんちゃんにやさしく、高い効果が期待できるおくすりです。
血管に入り込む フィラリア症だけでなく、お腹の虫にも 効くお薬ですから、お散歩中に拾い食いしたり 草木を舐めたり ほかのわんちゃんにご挨拶したときに お腹の虫をうつされたり…というリスクにも ばっちり対応していますよ。


フィラリア症のおそろしいのは、一度の油断で 命に関わることがある ということ。
というのは、フィラリア症のおくすりは、蚊の出るシーズンは毎月1回飲み続け、さらに蚊がいなくなってからもう1回飲まなくてはいけないのですが、その最後の1回をうっかり忘れてしまって フィラリアが身体の中に入り込んでしまうことがとても多いんです。
フィラリア症に かかってしまっていますね」と お伝えすると、「そんな…予防もちゃんとしてきたのに…」とおっしゃる方 多いのですが、よくよくお話を聞くと、最後に飲ませたのは9月だったり 10月だったりと、最後の1回を忘れてしまっている方が とても多いんです。
一度の油断で、辛い思いをさせないでほしいから、当院では最後まで必ず飲ませていただくよう お願いしています。

ノーベル医学賞、人間の最先端医療に関わるトピックで受賞が決まることが多いので、正直 なかなか実感が湧かないことも多かったのですが、大村先生の受賞で また最先端の科学研究を身近なものとして感じることができました。
イベルメクチンの発見は、熱帯の人々を救い、さらにわたしたちの大切な家族を守ってくれています。

12月、フィラリアのおくすりの飲ませ忘れはありませんか?
もう蚊なんて…と思う時期に、だめ押しの1錠が大切です。
最後の1錠、どうかお忘れなく!


。。。あとがき
1号の2015年は、激動の年でした。
冬に最愛のシェパードを亡くし、春には子どもが生まれ、夏からは生活パターンが一変…と、ほんとうにいろいろなことを経験した1年でした。
辛いことも、楽しいことも、みんなみんな糧にして成長していける自分で在りたいと思います。
残り少ない2015年、最後まで成長を続けていきたいです。
…あ、いえ、
横への成長は しない方向で。(="=;;;;;;;