はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

台風のときは絶食!?獣医が勧める下痢対策

続けざまの台風です。
今度の25号も、かなりの勢力のようですね。
予想進路をみる限り、日本海を北上するようで、24号のように首都圏直撃とはならないようですが、油断はできません。
停電に備え、モバイルバッテリーなど買っている人も多いとか。
スマホ中毒の1号にとっては、バッテリーはライフラインも同然。
ふだんから充電式と電池式のモバイルバッテリーを持ち歩いていますが、よりいっそう手放せない思いを新たにしました。


台風をはじめ、低気圧が近づくと、体調が不安定になりやすいという方は多いと思います。
実は、わたしたちもどうぶつたちも同じ。
低気圧の時期には、体調を崩しやすくなります。が、そこにはちょっとした違いも。


わたしたち人間の場合、頭痛や関節痛、神経痛などの出る方が多いのに対し、どうぶつたちはお腹をこわしやすいといわれています。
実際、聴診しているときにも、お腹がゴロゴロ、ギュルギュル鳴っている子は 秋に多いと感じます。
特に下痢とか、吐くといった症状のない子も、聴診器を当ててみると、ギュルギュルと音がしていることもあるんです。


どうぶつたちのお腹の調子の悪いとき、当院ではまず うんちの検査をします。
お腹の虫がいないかな?悪玉菌が増えているのかな?といったことが、これでわかります。
お腹の虫がいるときには、虫下しがよく効きます。
ですが、この時期はまだ フィラリアのお薬を飲んでいる子も多いので、虫がいることはあまりありません。
中には、フィラリアのお薬は効かないタイプの虫が見つかる子もいますが、少数派。
圧倒的に多いのは、悪玉菌がうんと増えているケースです。


悪玉菌には、よく効く抗生物質がありますから、これを使ってあげると 症状はわりとすぐに落ち着いてきます。
でも、もっと効きをよくしてあげたい。
早く症状がおさまるように手助けしてあげたい。
そんな優しいあなたにおすすめの治療法が、絶食です。


絶食というのは、簡単にいえば 食べものを与えない ということ。
食べものを与えず、消化管を休ませましょう、そして回復に専念させましょう、というのが目的です。
お腹を休めるために食べものを与えないわけですから、もちろんオヤツや缶フード、人間の食べものも無しですよ。
ごはんを抜いてくださいね、とお伝えすると、はいわかりました、と言いつつも ごはんじゃないから、とオヤツを与えてしまう方や、
お腹が空いてかわいそうだし、カリカリより消化が良さそうだから、と食べ慣れない缶フードをあげてしまう方、
お粥なら…なんて人間のごはんをあげてしまう方もいますが、完全に逆効果。
かえって長引いてしまうので、やめておきましょうね。

 

実は、ごく軽い下痢なら、抗生物質を使わなくても 絶食だけで治ってしまう場合もあるんです。

病院さんによっては、「下痢?下してるだけで吐いてはないのね。そしたらまずね、明後日まで水以外一切何も口に入れさせないで。明々後日になっても下痢だったら、また連れてきて」なんてところもあるくらいなんですよ。

当院では、うんちの検査で 明らかに悪玉菌が多いことを確認したら、抗生物質をお出ししていますが、下痢のときには絶食 というのは、治療法なんだ!とおっしゃる先生もいるくらい、大事なことなんです。


下痢のひどいときも、そうでもないときも。
あなたのご来院、お待ちしています。

健康チェックのすすめ〜動物愛護週間によせて

ひどい台風でした。
JR東日本は、早々に計画運休を発表し、全線が運休。
私鉄もそれに倣って運休。
電車が動かないし、安全のためにと、商店街も、ショッピングモールも、ディズニーランドでさえ軒並み閉店時間を早めるなど、影響は大きかったようですね。
でも英断だったと思います。
もしも無理に運行を続け、台風の中、あちこちで電車が立ち往生したら?
駅には来ない電車を待つ人が溢れかえり、構内にも入れなくなり。
どしゃ降りの強風の中、大混乱が発生することは必至です。


こういったとき、きっと電車会社の偉い人たちは、台風やばそうだし運休したほうがいいかなーでもお客さんからは大クレームだろうしー実際停めるとしてどれくらい大変なの?ちょっとシミュレーションしてみようよーえー悩んでるあいだにもう台風来ちゃったー、とかいう感じになるんじゃないかと想像します。
運休したとして、被害が大したことなかったら?うちの会社だけだったら?ヘタレとかチキンとか言われるんじゃない?大変なクレームになるんじゃない?なんて考えると、停めないほうがマシかな…なんて。
多少遅れたりはしたけれど、でも停めなかったぜ、がんばったぜ、のほうが賞賛されやすく、危なそうだから停めました!は弱腰と叩かれやすいですものね。
そんな中、運休する!電車を停める!と決めるのには、きっとかなりの決断力を要すると思うのです。
ただひたすら、やります!がんばります!と唱えるだけではなく、今回のJR東日本のように、いざというときには止めるという決断も、必要とあれば迷わず下せる。
そんな社会人になりたいですね。
10月は異動の時期。
新天地で心機一転、のあなたも、1号と同じく 一つ所で一所懸命のあなたも。
ともにがんばりましょう。


さて、このような 気候の乱れの大きい時期は、体調を崩しやすいもの。
持病のある方も、ない方も、ふだんより健康に気を遣うきっかけにできたらいいですよね。


毎年、9月20日〜26日は、動物愛護週間です。
当院にも、例年10月中旬くらいから、愛護週間の里親イベントからのご縁で家族が増えました、とご来院いただく飼い主さんがいらっしゃいます。
里親さんを募集している団体や、個人から引き取った子の場合、健康状態はさまざまです。
中には、持病があることはわかっているけれど、どうしてもうちの子になってほしくて…と 引き取られる方も。
わかります。
1号家のシェパードも、持病があることを承知の上で家族になりました。
家族になるのに、病気がある・ない は、大事なことですが 決め手にはならないんですよね。


そんな、持病のある子はもちろん、今のところ特に病気があるわけではないという子も、引き取ってから早めにしていただきたいのが 健康チェックです。
これは、団体さんなどでは 里親になる人に義務づけているところも。
それくらい大事なことだからなんです。


健康チェックで来院いただくと、わたしたち獣医師はまず、ふだんの様子をお聞きし、お話しながら全身の状態をチェックします。
毛のつやからは、皮膚病や栄養状態がわかります。
目の輝き、歯や皮膚の状態や爪の具合、立ち姿からもある程度の情報が得られるし、ノミやダニなどがついているか?など、どんな飼われ方をしてきたのか、まで見えることも。
問診、視診に加え、聴診器を使って聴診し、あちこち触って触診すれば、もうかなりのことがわかってきます。


この健康チェック、大事なのは「この子のふつう」「ふだんのこの子」をかかりつけの獣医師に見せておく、ということ。
それによって、「いつもと違う」を見つけやすくするのが狙いなんです。
定期的に健康チェックをしていれば、「いつもと違う」センサーはどんどん磨かれていきます。
その分、小さな異常を見つけやすくなり、早いうちに手が打てるようになります。


だから、定期的に健康チェックするといいですよ!とお伝えすると、かなりの方が「でもお金が…」「時間がなくて…」とおっしゃいます。
お気持ちはよーくわかります。
でも、実は、定期チェックのほうがずっと安く、しかも短くて済むんです。


まず、定期チェックの費用について。
当院では、一般的な健康チェックは再診料のみで行っています。
もし、血液検査やエコー検査、レントゲンなどが必要になれば、追加でかかることはありますが、基本は再診料に含まれているんですね。
そして、飼い主さんに検査の必要性と費用の目安をお伝えし、OKをいただかずに検査をやってしまうということはありません。


次に、通院にかかる時間について。
当院は、予約制を取っておりません。
ということは、たとえばお散歩のついでに 通りかかったら空いてたから…と、お気軽にお立ち寄りいただいて検査を受けていただくことができます。
こうしたやり方でしたら、お待たせする時間はほとんどありませんから、30分もかからず病院を出ることができます。
ちょっと長めのお散歩の感覚ですよね。
これなら、月に1回くらい受けても、そこまで負担はないのではないでしょうか。


実際の病気になってしまってからでは、負担はとても大きいもの。
だから、そうなる前に、まずは「ふだんのこの子」を見せに行きましょう。


あなたのご来店、お待ちしています。

天災と伝染病② 小さくてもこわーい、媒介昆虫

真備町、大阪に続いて、こんどは厚真町
西でも北でも、大変な日々が続きます。
真備町には親戚、大阪と胆振には知り合いの多い1号、ここ最近は 常に誰かと連絡が取れたとか、取れないとか…
東日本直後のような、落ち着かない気持ちで過ごしています。


さて。
前回、レプトスピラ症という病気の話をしました。
今回は、媒介昆虫のお話です。
ばいかいこんちゅう と読みます。
何か特殊な虫?…というわけではありません。
蚊やノミ、ダニといった、ごく一般的でどこにでもいるような虫たちです。
えーでも、蚊に食われたとしても、死ぬの生きるのと騒ぐようなことじゃあないじゃない…
そう思いますか?
実は、そうとは限らないんです。
大雨や地震など、災害のあとには 特に。


蚊やノミ、ダニの何が問題か。
それは、病気をうつすことです。
蚊自体に食われても、多少痒いくらいで済みますが、蚊やノミ、ダニに食われて、うつってしまう可能性のある病気の種類は とても多いんです。
デング熱、ジカウイルスのような ニュースで聞いたことがある!といった病気。
日本脳炎のような、あー昔予防接種したっけ?どうだっけ??といった病気。
たくさんの病気が、こういった 媒介昆虫によって うつされてしまうんです。
刺されて痒いだけでなく、病気がうつったかもしれないと心配までさせられる。
それが、媒介昆虫の害なんです。


避難生活を余儀なくされると、どうしても こういった媒介昆虫に刺されやすくなります。
天災は、かれらのふだんいる場所も破壊しますから、居場所がなくなり 外をウロウロしがち…というのも、要因のひとつです。
出くわしてしまう可能性が 高まりますから。
他にも、建物の隙間から入り込んだり、片付けや移動に手いっぱいで 刺されたのに気づかなかったり、いつもの虫除けグッズが使えなかったり、服装も いつもと違ったり…
さまざまな要因で、刺される可能性がとても高くなるんですね。


避難生活中は、辛くても 我慢してしまいがちだといいます。
でも、こうした 媒介昆虫に刺されたことで、病気になってしまっている可能性もありますから。
辛いときには、ぜひ 早めに声を上げてほしいと思います。
風邪みたい…な症状ではじまる、重病もたくさんありますから、軽くみないことが大切です。
病院に行って、なあんだ取り越し苦労した!と笑って帰ってくれば、それでいいんです。
病院は、そのための場所でもあるんですから。


人間だけではありません。
どうぶつたちだって、蚊やノミ、ダニにうつされる おそろしい病気は、フィラリアに瓜実条虫、SFTSをはじめ、たくさんあります。
自分たちが発病する病気だけではありません。
媒介昆虫のせいで、病原体を体の中に飼っている、キャリアー と呼ばれる状態になってしまうこともあります。
体を貸して寄生虫を育ててあげる、宿主 という状態になってしまうこともあります。
この夏、避難生活に備え 避難バッグを用意したり、備蓄をしたりする人がたくさんいたといいますが、ぜひ どうぶつたちにも。
万が一のとき、フィラリア対策や ノミダニ予防をしていれば、1ヶ月は安心していられます。
予備を避難バッグに保管することにしておけば、より安心ですよね。


こうした媒介昆虫対策、実は 暑い時期だけのものではありません。
見かけなくなってから、もう1ヶ月は 追加が必要です。
涼しくなったしそろそろいいか…ではなく、これからこそが危ない時期。
真夏は、暑すぎてむしろ数が少なかったり、活動がおとなしかったりしますから、実は秋から冬にかけてが虫シーズンなんです。


当院では、やば…忘れてた…というあなたのために、検査も処方もまだまだ受け付けております。
お気軽に ご相談ください。
五日市街道も、小金井公園も、緑が豊かということは、虫のすみかも豊富ということ。
刺されて心配するよりも、刺されない対策をしましょう。
あなたのご来院、お待ちしております。
 

天災と伝染病① レプトスピラ症って、なんですか?

リンゴ台風以来の、「非常に強い」まま 上陸した台風でした。
関東は電車のダイヤ乱れくらいで済みましたが、
関西以西の被害は…
西日本豪雨といい、辛い毎日が続きます。
1号の友人が関空で働いていて、一時は連絡も取れなくなってとても心配しました。
もう、こんな被害が出ませんように。


こうした天災の後に、片付けが本格的に始まると、心配になるのが 病気のまん延です。
菌やウイルスはもちろん、時期的に 虫もたくさん出ますから、そういう意味でもとても心配です。
中でも、今回のように 大雨や洪水の被害があると、心配になるのが レプトスピラ症 という病気です。


レプトスピラ症は、らせん菌 という菌の一種が原因でかかる病気。
ネズミの腎臓などに住み着いている菌で、おしっこに混じって身体の外へ出てきます。
菌の混じった水や土に触ったり、あやまって飲んでしまったりすると うつってしまう病気で、わたしたち人間も どうぶつたちもかかる病気です。
上下水道が整備された日本では、かなり少なくなってきたとはいえ、自然の中で水辺のレジャーをする人にとっては、比較的身近な病気です。


そんな レプトスピラ症。
汚れた水や土を介して広がっていく という特徴があり、皮膚からもうつる病気。
ということは、実際に洪水が起きている間はもちろん、後片付けのときにも、油断はできません。
作業をするときには、必ず手袋を着け、マスクをし、できれば眼鏡も。
実際、過去の大雨災害や台風の後には、レプトスピラ症が流行してしまうこともありました。
油断は禁物です。


レプトスピラ症の症状は、いわゆる 風邪 のような症状といわれています。
そのまま気づかずに治ってしまう、軽症で済むこともあるかもしれません。
が、おそろしいのは それで済まなかった場合です。
肝臓がやられて 黄疸が出たり、腎臓がやられてしまう場合があるんです。
こうなってしまうと、命を脅かされることもあります。
日本よりも大雨や洪水の多い東南アジアなどでは、災害の後にレプトスピラ症が大流行し 亡くなる方も多くいるとか。


こんな おそろしいレプトスピラ症、人間では、あまり一般的ではないようですが、どうぶつたちには ワクチンがあります。
今のところ、日本では 猫さん用のものはなく、わんちゃん用のもののみが出回っています。
レプトスピラ症のワクチンには、複数のタイプがありますが、当院でおすすめしているのは、特に危険な2タイプを予防できるもの。
当院では、いつでも在庫を切らさないようにしていますから、水辺のレジャーに行く子はもちろん、川の近くにお住まいの方も、お気軽にお申し付けください。


あなたのご来院、お待ちしています。

獣医が教える、おうちシャンプーのコツ

お盆過ぎ、街に喧騒が戻ってきました。
通勤電車も、また満員に…
お休みでリフレッシュできた うらやましいあなたも、1号と同じく 休みなど幻想!と 駆け抜けたあなたも。
お疲れ様です。
平成最後の夏、引き続き、頑張っていきましょう。


お盆を過ぎると、暑い中にも 心なしか秋を感じることが増えてきます。
空の高さや青さ、風の温度…
秋の花粉症が始まる という方も、いらっしゃるかもしれませんね。


実は、どうぶつたちは、春よりも 秋の花粉症のほうが多い といわれています。
これは、秋の花粉症の原因となる植物は、春のものよりも 背の低い草のような形の植物が多いからなんです。


わたしたちは 目や鼻に症状の出ることが多い花粉症。
どうぶつたちは、皮膚に出ることが多いといわれています。
ですから、皮膚により花粉が付いてしまいやすい、草の形をした 植物の花粉に反応しやすいんですね。


花粉の季節には、目玉を取り出してゴシゴシ洗いたいとか、鼻の穴にホースを入れてジャブジャブ洗い流したい…なんて 思うことも多いもの。
目や鼻の場合には、実際にそうすることは難しいわけですが、皮膚なら話は違います。
シャンプーで洗い流してあげることができますからね。


今くらいの時期から、妙に体を痒がって噛んだり、引っ掻いたりするなあ?と思ったら。
もしかしたら、花粉症かもしれません。
水で洗い流すだけでも だいぶ違いますが、どうぶつたちの毛は 案外脂ぎっているもの。
症状に合わせ、適切なシャンプーで洗えば、花粉症の苦しみを かなり軽くしてあげられるんですよ。


人間用シャンプーでも、石鹸やボディソープでも、正しい量で洗い、きちんとすすげるならば 問題ないことも多いのですが。
どうぶつ専用品でないものは、どうぶつたちに合わない香料が入っていたり、適量の見極めが難しかったり、きちんとすすぎができていなかったりと、リスクもたくさんあります。
特に、既に症状の出ている子は、うまく洗えないともっと症状が悪化してしまうかも。
当院では、薬用シャンプーだけ お渡しすることもできますから、ぜひお仕事帰りに サクッとご来院ください。


おうちシャンプーをする場合、何よりも気をつけていただきたいのは すすぎがとにかく大事!ということ。
すすぎが足りないせいで、皮膚に残ってしまったシャンプーが 肌荒れの原因になってしまうことがとても多いんです。
すすぎは 毛の短い子でも5分。
長い子は、10分くらいかけてもいいです。
そのとき、体感でそろそろかな?とやると、ついつい短くなってしまいがちですから、必ずタイマーを使ってくださいね。
すすぎのときに、トリマーさんに教わったコツをひとつ。
すすぐときはシャワーヘッドを肌に直接当てましょう。
そうすると、シャワーの水圧で毛がかき分けられるので、より効率よく すすぐことができます。
シャワーヘッドをまず背骨に沿って 頭からお尻まで撫で、次にアルファベットのTを書くように、背骨からお腹に向かって撫でていきます。
全身くまなく シャワーヘッドで撫でていきましょう。
丁寧にやれば、5分はあっという間です。


秋花粉、こじらせると 飲み薬が必要になりますが、こじれる前なら シャンプーでも充分症状を抑えてあげられます。
掻いたり 噛んだり しているようなら、ぜひ一度 薬用シャンプーで洗ってみてください。
そのときは、できれば 症状に合わせて動物病院で選んでもらってくださいね。


あなたのご来院、お待ちしています。

スポーツドリンクはペットにもいいの?水中毒にご用心

つい 先日のこと。
某イベントのお手伝いで、着ぐるみに入って キャラになりきってきました。
身長の低い1号、あなたが入ると着ぐるみが一段と可愛くみえる!と、お墨付きをいただいてきましたよ。


それにしても、着ぐるみの中というのは暑いです。
中の人 になるにあたって、経験者のブログなどを読みあさって覚悟はしていましたが、だいたいその5倍は暑いように感じました。
たまーに、なら、サウナのごとく汗をかくので、むちゃくちゃデトックスできて悪くはないですが、しょっちゅうとなると…
1号は やはり着ぐるみよりも 本物の犬のほうが好きだな と思いました。


そんな、暑い暑い着ぐるみ。
何よりも大切なのは、やはり水分補給だそうで、1号もかなり飲みました。
スポーツドリンク。
汗をかく という表現では足らないくらい、汗をかきますのでね。
経験者の人たちが 「もういいかな、と思ってからあとひと口の「追いスポドリ」が大事!」と言う意味が よくわかりました。


そうやって、水分をガンガン摂取していると、ふと 頭をよぎるのは、水中毒 という言葉。
これは、汗をかいて体から 水分といっしょにミネラルやイオンが出て行っているのに 水だけを飲み続けると、ミネラルバランス、イオンバランスが崩れるので 体調を崩してしまう…というものです。


ミネラルやイオンというのは、細胞のかたちを保つためにとても大切なはたらきをしていますから、このバランスが崩れるということは、細胞のかたちがおかしくなってしまうわけです。
細胞は、レゴやブロックにたとえられることが多いのですが、レゴやブロック(細胞)のかたちが変わってしまうと、お城や飛行機(体や臓器)のかたちが保てなくなったり、機能が果たせなくなったりします。
いわゆる 多臓器不全 という状態になりますから、すぐに死につながる おそろしい事態なのですね。


少し前までは、あまり話題にはなっていませんでしたが、最近はよくテレビやネットニュースなんかで 取り上げられるようになってきました。
やはり、熱中症を避けようとするあまり、水をがぶ飲みして 水中毒になってしまう人が多いのですね。


テレビなどでは、水よりもスポーツドリンクを!とか、塩飴、梅干しなどもいっしょに取って、と 伝えています。
では、どうぶつたちはどうでしょう。
お散歩中、のどが乾いただろうからと水を飲ませると…あれ、いつもより長く飲んでいるんじゃない?こんなに一気に飲んで、大丈夫?
なんて、心配になったりしませんか。


わんちゃんやねこさんは、汗をかきません。
ですから、わたしたちのように 汗といっしょにミネラルやイオンが一気に出て行く ということはないんです。
言い換えれば、人間よりは 水中毒になってしまうリスクは低いんですね。
とはいえ、あまりにも一気に水を飲むと、やはりミネラルバランス、イオンバランスは崩れてしまいます。
それに、「こんなに一気に飲むと、水中毒になってしまうかも…まだ飲みたいけど止めておこう」と セルフコントロールすることができないので、暑い日や、走ったりなどして いつもより喉のかわいたときに、ついつい一気に水を飲み過ぎてしまう可能性もあります。


いちばん手軽な対策は、やはり ただの水ではなくて、ミネラルやイオンが含まれたものを飲ませること。
わたしたちがふだん飲んでいるスポーツドリンクは、どうぶつたちには濃すぎるので、水で薄めてあげるのがいちばんおすすめです。
そのときには、レモン味などのついていない、できるだけプレーンなものを、少なくとも、倍以上には 薄めてあげてくださいね。
1号家のシェパードには、ポ●リや●クエリアスをあげていました。
それと、糖尿病や 尿結石、腎臓、肝臓、心臓などに病気のある子は、かかりつけの先生に相談してから。
こういった病気のある子は、病気のせいですでに バランスが変わっていることが多く、薬や食餌で調節していることも多いんです。
そこへ、スポーツドリンクやイオン飲料などを飲ませてしまうと、またバランスが変わってきてしまいます。
飲ませてしまうと、病状が安定しなくなってしまう可能性がありますので、必ず先生に相談してくださいね。
尿結石の子は特に、ミネラルが芯になって 石が大きく、詰まりやすくなってしまったりしますから、注意が必要です。


こうやって気をつけていても、もし、水中毒や、熱中症かも!?と思うことがあったら。
それは、緊急事態ですから、ためらわず 近くの動物病院に駆け込んでください。
車で30分かけていつもの病院へ…ではなく、走って5分で着く 最寄りの病院へ。
こういった緊急時には、どこの病院へかかるか?より、いつ病院へかかったか?が、結果に直結しますからね。


暑い暑い夏。
それでも、一昨日の7日には 立秋を迎えており、季節はたしかに 秋、そして冬へと向かって進んでいます。
小さな工夫で、少しでも快適に、過ごしやすくしたいですね。
あなたのご来院、お待ちしています。

診る を考える。相模原事件によせて

戦後最悪といわれた、相模原障害者施設殺傷事件から、1年が経ちました。
節目ということで、様々に特番が組まれたり、改めていろいろなことを考えた方も多かったのではないでしょうか。


犯行の当初から、犯人は「私の考える『意思疎通がとれる』とは、正確に自己紹介をすることができる人間」と定義した上で、意思疎通がとれないと犯人が勝手にみなした人に対して「生きる価値なし」と身勝手に決め付け、殺害を実行に移しています。
犯人自身が属する側=大多数と、意思疎通ができないとみなした命に対して、「価値はない」だから「奪ってもよい」と主張しているわけです。
でもね。
彼は日本語では「正確に」自己紹介できるかもしれませんが、他の言語ではどうでしょう。
文科省の発表している 世界の母語人口で上位にランキングされている 中国語、英語、スペイン語で自己紹介されたとして、「正確に」言われていることがわかるのでしょうか。
言葉が通じないことを、意思疎通がとれないとみなすのならば、そして 意思疎通がとれない命を奪ってもよいとするのならば、日本語しか話せない人は 英語話者や中国語話者から いつ殺されても文句は言えないということになりはしませんか。
他にも、障害があるとはいわれていない子どもたちだって、年齢によっては 正確に自己紹介できません。
将来できるようになる ということならば、いま意思疎通がとれず「障害者」と定義されている人たちだって、現代医学の限界上そうなっているというだけのこと。
たとえば数年後、医学が飛躍的に進んだ結果、現時点で思いもつかないような方法で意思疎通がとれるようになる可能性だって、ゼロではありませんから、現時点でできなくても、将来できるようになるかもしれない という点においては子どもたちと同じです。
そもそも、正確に自己紹介するって何?ということからして曖昧なんですから、定義が定義になっていませんね。
出発点からしておかしいわけです。


犯人の主張に、1号は人として絶対に 同意はしません。
が、言わんとすることを理解することはできます。できるつもりです。
理解した上で、視野が狭すぎる、話を一般化しすぎだ と指摘したいのです。
もっと多様さを許容できなければ、待っているのは全滅か、独裁か…
いずれにせよ、「世界が平和に」なる未来は 期待できません。

 


翻って、当院で働く わたしたち獣医師の職務。
それは、どうぶつを診ることです。
ここまで読んでいただいた方なら、曲解される方はいないと信じていますが、診る相手とは 言語による意思疎通はできないわけです。


ではどうしているのか?というと、わたしたちは全身を診て 診察をしています。
たとえば、 「足のつま先に切り傷が」と言って来院した子でも、全身を診るんですね。
目が見えにくくないかな?頭や腰に病気があってふらついてしまったのかも?体が痒くて足元に集中していなかったんじゃない?
言葉で痛みや辛さを表してくれない相手だから、読み取るためによりいっそうの努力をするんです。


傷を治療するのは 当たり前。
でも、それだけではだめなんです。
なんで傷ができたのか?
目の前の傷や、いま悩まされている症状はもちろん、その原因になっている病気がないか。
あるとしたら、どうしたら治せるか、治せない病気でも、より良い状態にしたり 進行を食い止めてあげられるか。
当院の目指す治療は、そういったものなんです。


言葉による意思疎通は、簡単でわかりやすいかもしれません。
でも、それがすべてであるはずがない。
言葉で意思疎通できなくても、もしかしたら言葉よりずっと雄弁に、そして深く。
意思疎通する方法はあります。あると信じています。
そのために欠かせないのが、目の前の一匹を 真剣に診る姿勢。
何千、何万を相手にする 公務員や企業とは違い、わたしたち臨床獣医師の手が届くのは、きっと一生頑張り続けても 千にも満たない数でしょう。
それでも、それだからこそ、目の前の一匹に 全身で向かい合っています。
言葉では聞こえない、もしかしたらまだ起こっていない、「助けて」「痛い」「しんどい」を聞くために。

 


夏休み、当院で 実習をしたい、見学させてほしいというご連絡をいただくことが増えてきました。
当院では、いっしょに働く獣医師の募集を行っています。
こんな熱い思いで診察にあたっている わたしたちにも負けないくらいに熱いあなたと、いっしょに仕事がしたいです。
われこそは!というあなたは、ぜひ、042-323-4567まで、お電話ください。
お待ちしています。


事件で失われた命と、傷ついたすべての人に、安らぎが訪れますように。