はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

コリネバクテリウム・ウルセランス?あたらしい伝染病のはなし

2018年になりました。
元号が1年間ずっと「平成」の最後の年です。
「平成」のうちにやりたいこと、行ってみたいところ、いろいろなことを実現していくような年にしたいですね。


さて、そんな 平成30年。
1月に厚生労働省から、衝撃的な発表のあった、ひとつの病気があります。
「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」という病気です。
これは、赤ちゃんが生後3ヶ月になってから何度か打つ「四種混合ワクチン」で予防できる「ジフテリア」という病気や、1歳になるまでに打つ「BCGワクチン」で予防できる「結核」という病気に近いもの。
原因になる菌が親戚同士にあたります。
この「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」という病気、平成25年から29年の5年間に わかっているだけでも日本で25例かかった人がいる病気です。
概算で1億3千万人近くが住んでいる この日本で、たった25例?0.00002%の人がかかる病気なんて、大したことないんじゃ・・・ と、あなどってはいけません。
この病気は 結核ジフテリアとはちがい、そもそも報告義務のない病気。
にもかかわらず、症状や状況などから、診察した先生などが「これは 報告しておいたほうがいいだろう」と判断して 報告されたもの。
つまり、よくある症状・ありがちな状況ではない。言い換えれば、お医者さんが「おやっ?」と思うような病気 ということなんです。
厚生労働省の発表は、この病気で、平成28年に亡くなった方がいらっしゃる というものでした。
彼女は、3匹の外猫さんにエサをあげていたことがわかっており、この子たちに接触したときに 菌に感染したと考えられています。


そもそも この菌は、ジフテリア結核とは異なり、常在菌=どこにでもいる菌 です。
どちらかといえば、人間の暮らす環境よりも、牛など家畜の暮らす環境に多くいる菌で、牛の乳房炎などの原因になることが多いので、わたしたち獣医師にはなじみのある菌です。
(余談ですが、獣医学部の現5年生、来年度に繁殖学の試験を受験予定の学生さんへ→Corynebacterium ulceransは、みなさんが受ける試験で出題される可能性が例年より高いように思いますので、押さえておいたほうがいいかもしれません。Corynebacterium属菌といえば、牛の乳房炎ですよね。乳房炎は畜産業に与える経済的影響が多いですし、もともと出題頻度の高い分野でもありますから、みなさんふつうに押さえてはいると思いますが。今回こうして話題となった菌ということで、例年よりも取り上げられやすいと思います。ただのOBのカン、ですけどね)
じゃあ、牧場や農場にいくときだけ 気をつけていればだいじょうぶなの?というと、そうではありません。
わんちゃんやねこさんの 皮膚病のあるところからも、比較的よく取れる菌ですし、風邪っぽい症状のある子どうしで 菌をうつしあってしまうこともあります。
中でも、外猫さんは ケンカ傷や擦り傷があることも多く、おうちから出ない子にくらべて 皮膚病や風邪をひくことが多いので、菌を持っている可能性が高いんですね。


厚生労働省も、
・外で出会った子はもちろん、ペットや牧場で飼われている家畜も含め、どうぶつに触った後は、手洗い・うがいなどをして清潔にする
・キスや食べ物の口移しなどの、濃厚な接触を避ける
など、心がけたほうがいいことを呼びかけています。
ごく普通のことではありますが、かわいいとついキスしてしまったり、冬場で水が冷たいと ついつい手洗いが雑になってしまったり。
いたずらに恐れたり、神経質になったりする必要はありませんが、亡くなった方がいるとなると、やはり気をつけたほうがいいことは間違いありませんから。


2018年を ハッピーに過ごすために。
憂いは少しでも 減らしておきたいですよね。
うがい、手洗いを徹底しつつ、健康管理に努めましょう。
小さな家族の体調不良は、当院へご相談くださいね。
あなたのご来院、お待ちしております。