はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

ノミ・ダニ対策をしないと、どうなるか

降ったり止んだり、梅雨らしい天気になってきました。
とはいえ、晴れ間が週末に重なることも多いようで、自粛明けを楽しむこともできている方が多いのではないでしょうか。
1号も、ベランダで育てているトマト・ゴーヤが例に漏れずえらいことになっており・・・
ベランダ園芸に精を出しています。
肥料や支柱など、自粛中は気軽に買い足しには 行けませんでしたものね。


さて。
ベランダ園芸を楽しんでいると、やはり虫が目につきます。
1号家のキッズはザ・女子2名なので、その度にいちいちキャアキャアうるさいわけですが、
中にはダニっぽいやつ、ノミっぽいやつ、色々なやつがいたりして。
ついつい、ノミ・ダニ対策に思いを馳せてしまいます。


ノミ・ダニ対策をなぜどこの動物病院でもしつこく言うか。
中には、「儲かるからだ」なんて尤もらしく言う方もいますが、ぶっちゃけそれほどでもありません。
原価もそこそこしますし、だいたい、ノミ・ダニ対策は薬を売るわけですから、簡単に言えば物販。
一度でも物販に関わったことのある方なら容易にお分かりかとは思いますが、店舗を構えて物販をする以上、在庫管理が発生します。
それだけに専念していても難しい在庫管理という業務、獣医師はもちろん、看護師・トリマーが診療・サロンワークと並行するのはとても大変なんですね。
動物病院が本気で儲けるのなら、皆さんにノミ・ダニ対策を勧める という、手間もかかる上、効果も確実に見込めるかどうか・・・といったものではなく、もっと楽で簡単な方法はいくらでもあります。


ではなぜ?
それは、ノミ・ダニ対策をすることで防げる病気がいくつもあるからなんです。


わたしたち獣医師は、獣医師法に書いてあるとおり、獣医事をとおして公衆衛生の向上に寄与することが任務です。
診察するとか、動物園の動物を飼育するとかいったことだけでは不十分で、
それを行うことで 公衆衛生の向上…つまり、人々の衛生状態をよくする というのが、本来の任務。
ですから、ノミ・ダニ対策を!と皆さんにお伝えすることは、獣医師が本来やるべきことの最たるものなんですね。
ノミ・ダニにきちんと対策をすることで防げる病気は、どれも 人獣共通感染症
動物からヒトにうつる可能性のある病気の、実際に「うつす」役割を果たしてしまうのが、ノミ・ダニですから、
これはぜひ皆さんに対策をしていただきたいと、手を替え品を替えて お伝えをしているんです。


具体的に見ていきましょう。
まずは、ノミ。
ノミは条虫という寄生虫をうつします。
いわゆるサナダムシですね。
これにかかると、吐いたり下したりするのは当然として、栄養が取れないので 痩せていきます。
さらに、お尻から虫が出るときにはかなり痒いので、そこら中にお尻を擦り付けます。
単純に汚いし、周りに広げてしまう可能性もあるばかりか、擦り付けたことでお尻の皮膚に傷がつきますので、皮膚炎など別の病気を引き起こしてしまうかも・・・


また、ノミは、サナダムシに関係なく、皮膚炎の原因にもなります。
動物の血液が好物で、犬・猫はもちろん、ヒトの血を吸うんです。
蚊とは違い、オスもメスも血を吸います。
ノミに血を吸われることを「ノミ刺咬症」といいます。
蚊と同じように、ノミも 血を吸っているときに 動物に気付かれないよう、麻酔のような作用のある物質を注入します。
これ自体に対してアレルギー反応を起こしてしまい、アレルギー性皮膚炎になってしまったり。
また、この物質は、後から強い痒みの原因になりますので、掻きむしってしまい、皮膚についた傷から 皮膚炎になってしまったり。
皮膚炎がひどいと、どうしてもフケや皮膚片が落ちますが、ノミはそういったものを栄養源としてどんどん繁殖しますので、家の中でさらにさらに増えて行くことも・・・
おそろしいことですね。


次に、ダニ。
ノミは、言うてちょっと痩せたり、痒かったりするくらいでした。
でもダニは違います。
ダニからうつる病気で、死ぬことがあります。
しかも、そんなおそろしい病気は複数あるんですよ。


なんと言っても、最近、話題になってきているのが、 重症熱性血小板減少症候群 という長い名前の病気です。
通称は、SFTS
簡単にいうと、熱が出て血小板が減ってしまう病気です。
血小板が減ると、血が止まりにくくなりますので、体の中で出血が止まらなくなってしまったりすると 死んでしまうことも。
致死率は10-30%と言われていて、これは コロナ(CoVID-19)の致死率(全世界で約5%)のおよそ倍〜6倍の数値です。
この病気の恐ろしいのは、治療法がまだないこと。
コロナと同じく、支持療法 といって、とにかく死なないようにしつつ、本人の免疫が病気を打ち負かすのを期待するしかないんです。


また、他にもマダニにうつされる病気はたくさん。
ダニ媒介脳炎という、同じく治療法のない病気や、
日本紅斑熱、ライム病、ツツガムシ病という病気が代表的です。
中でも、ライム病は、カナダ出身のアーティスト、アヴリル・ラヴィーンさんがかかったことでも 有名になりました。
彼女は、壮絶な闘病の経験として、死を受け入れ、身体の機能が停止していくのを感じた…と綴っています。
治療法があるとはいえ、それでも、肉体的にも精神的にも今までの人生で一番辛い日々だった…とまで言わしめる病気。
それが、ライム病なのです。


こういった恐ろしい病気は、あまり声高に語られることこそありませんが、実際に今もかかって苦しんでいる人がいます。
今年、2020年も 19名の方が既にSFTSにかかったと報告されています。
2019年には、102名の方がかかり、そのうち5名の方が亡くなられているんですね。


恐ろしい病原体をもったマダニは、身近にいます。
ダニ対策をしていないと、ペットについたダニが家の中に入り込み、咬まれ、そして 病気をうつされる危険があるんです。


コロナで 家庭の経済状況も 落ち込んでいますね。
日々、ニュースやネットニュースを見ては、支出を抑えないと…と思っていらっしゃる方も 多いのではないでしょうか。
でもね。
抑えてよいところと、抑えてはダメなところがあります。
お散歩に出る子の ノミ・ダニ対策は、抑えてはいけないところです。


そうは言っても、感染が心配…な あなたのために、
当院では、事前にご連絡をいただければ、ご用意をして お待ちをしております。
体重が安定している子、去年検査をして お薬をすべて飲み切っている子は、わんちゃんが来院しなくても お薬をお出しできますよ。
心配ごとは 一つでも少なく。
あなたのご来院、お待ちしています。