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猫と心臓の話・序章 冬は循環器に厳しい季節です

冬です。

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心臓や腎臓に不安のある子には、厳しい季節ですね。
アメリカでは、100年近くずっと、心臓の病気が死因のトップなのだとか。
肥満や糖尿病など、心臓に負担のかかっている人が多いことによるもの、だそうですが、気候もきっと大きな要因なんじゃないかと思っています。
だいたい北極のアラスカはもちろん、ボストンやニューヨーク、シカゴなんかも けっこう寒いですもんね。
いや、カナダには 遠く及びませんけども。(北から目線)


そもそも、冬がなんで心臓、腎臓に厳しいのか。
それは、水分の摂取量が減ることと、血圧が上がりやすいから。


冬は寒いので、たくさん汗をかく夏よりも喉が渇きませんね。
そのため、水分の摂取量は少なくなるのが一般的。
水分の摂取量が減ると、どうなるか。


まず、腎臓目線で考えます。
腎臓は、体の水分調節を司る臓器。
たくさん水分を取れば、体から余分な水を捨てるため、薄い尿をたくさん出します。
逆に、水分を取る量が少なければ、体に水を保つ必要がありますから、濃い尿を少しだけ出しますね。
冬は水分を取る量が減るわけですから、濃い尿を少しだけ出すことに。
でも、濃い尿を出すと、腎臓には負担がかかります。
濃い尿とは、少しの液体にたくさんの老廃物が浮いている状態。
たくさんの液体といっしょに流せば 詰まらない量の老廃物も、少しの液体としか流せなければ、詰まってしまうこともありますね。
それと同じことなんです。


次に、血液目線で見てみましょう。
血液は、水分に 血球などがたくさん浮いている状態です。
寒くて、水分を摂る量が減るわけですから、血液の液体部分は減ります。
すると、少しの液体にたくさんの物体が浮いている…という状態に。
おや?どこかでそんな話を見かけましたね。


次々いきましょう。
今度は 血管目線。
血管は、血液の通る管です。
よく、ホースに例えられることがありますね。
血球の浮いた液体、つまり 血液がサラサラと流れるのが 血管。
冬は寒いので、体の熱が奪われないよう、血管はキュッと縮みがち。
つまり、ホースの径が短く、通り道が細くなるわけです。
ここへ、濃い血液が流れるわけです。
通りにくいところへ、通りにくいものが流れようとする、という状態になります。


最後は、心臓目線。
心臓といえば、全身の血液を巡らせる ポンプですよね。
心臓に入ってきた血液を、全身に行き渡らせるため、強く押し出す役割です。
思い返してみましょう。
冬、心臓に入ってくる血液は、濃くて流れにくい血液になっています。
それは、液体の部分が少ないからでしたね。
そのような、流れにくい血液を、心臓が押し出す先は 血管。
血管も、細く流れにくい状態です。
流れにくいところを流すために、心臓はどうするか。
頑張って強く押し出しますね。

つまり、血圧が高くなる、というわけ。


そう。
これこそが、冬に心臓に負担がかかるメカニズムです。
他にも、交感神経が…とか、ホルモンで…とか、いろいろな要因があります。
でも、一番大きいのは、このメカニズムによるものです。


字数がえらいことになってしまいました。
肝心なところへ たどり着く前に、これにて一旦 小休止といたします。


…ドロン!