はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

PLE(タンパク漏出性腸症)という病気のはなし

新幹線で福岡へ行ってきました。
なぜ飛行機を使わなかったか。
それは、とにかくものすごく、高かったから…

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博多グルメの筆頭、博多らーめん。

控えめに言って最高でした。

飲み物かのように 替え玉したことをご報告します。


そんなわけで、お尻が割れそうになりながらの長旅をしてきたわけですが、
道中、Facebookで目にはいったのが、PLE こと タンパク漏出性腸症 という病気。
セカンドオピニオン を通り過ぎ、若干 ドクターショッピング気味に 後輩の病院へ駆け込んできた患者さんが、
たまたま PLEをテーマに卒論を書いていた後輩のところで、無事に診断がつき、ガリガリに痩せていたのが改善した…という投稿でした。
TLには、良かったね!というコメントや、PLEはわからん…と嘆く声など さまざまな声が溢れました。


PLEとは、さまざまな原因で、腸からタンパク質が漏れ出てしまうという病気。
そうするとどうなるか。
低タンパク血症の症状があらわれます。
具体的には、元気がない、下痢、痩せていく、免疫力が落ちてしょっちゅう体調を崩す…など。


そう。
PLEには、典型的な症状、「この症状が出たらこの病気を疑え」といった症状がないんです。
そもそも、PLE自体、病名というより、症状名。
タンパク質が腸から漏れ出して、低タンパク血症の症状が出ることを、PLEと呼ぼう、と決めただけで、
なぜタンパク質が腸から漏れ出してしまうか?
ということには、フォーカスしていません。
したがって、PLEの原因もさまざま。
がんや腸炎が多いですが、特発性 といって、原因不明だけれども とにかく便にタンパク質が出てしまっている。
ということも多いんですね。


教科書には、血液検査でタンパク質が低く、便にタンパク質が出ていれば、との記載がありますが、
セカンドオピニオンに来たような患者さんで、血液や便の検査をしないはずがないんです。
それに、タンパク質は基本中の基本の項目。
血液検査は、より素早く検査結果を出すため、どこのメーカーの検査機器でも いくつかの項目がセットなったものに、個別に検査したい項目を加えて使うのが基本です。
症状により どのセットを使うかを決めるわけですが、タンパク質はまずどのセットにも含まれる項目です。
逆に、血液検査でタンパク質を検査しないほうが難しいくらい、本当に基本なんですね。


セカンドオピニオンに来られるくらいですから、検査費用をとにかく少しでも抑えるために 項目を削りまくるより、可能性のある項目すべて 検査をしておくくらいの姿勢がふつうです。
実際、診断した後輩も、運が良かった…と言っていました。


PLEの治療は、対症療法でしのぎつつ、原因を探る…というのが スタンダード。
タンパク質が漏れていってしまうので、補いつつ、なぜ漏れるのか?を探って その原因を叩きます。
直接の原因として多いのは、やはり腸の炎症ですから、まずは炎症を抑えます。
そして、なぜ炎症が起きるか?を探るんですね。
がんや、アレルギーなどの自己免疫疾患が 背後に隠れている場合もありますし、
単純に炎症というより、腸の粘膜の問題だったり、いろいろな原因が考えられます。


目に見える症状は、低タンパク血症の症状だけですから、PLEと診断がつき、タンパクを補えば 目先の症状はおさまります。
一過性のPLE、原因も結局よくわからない…ということもあるので、これで終わってめでたし、となることもありますが、
実は その背後に、もっと大きな 病気が隠れていることがよくあるのですね。
実際、PLEと診断した後輩も、腸管型リンパ腫といって がんの一種が背後に隠れていることを疑い、もっと大きな病院で がんの検査を受けることを勧めたそうです。


わたしたち、臨床獣医師は、目の前の子、目の前の症状から、その背後にある 大きな病気を見落とさず、見つけ出せるよう、いつもいつも努力を重ねています。
PLEではありませんでしたが、何度か転院を経て当院へ来られた方に、「もう、この子のこと、諦めなきゃいけないのかと思ってました」と、言われたことがあります。
生き物ですから、病気によっては、完全な健康体にしてあげることは出来ないかもしれません。
でも、出来るだけ 良い状態でいられるように、その子の病状や 生活パターン、金銭や 看護面での負担を総合的に考えて、いっしょに、ベストな道を 探っていきましょう。


あなたのご来院、お待ちしています。