はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

蜂窩織炎(ほうかしきえん)のおそろしさ

今年も残すところ2ヶ月となった、今月の頭。
当院院長の盟友、山内アニマルセンターの山内先生が、Facebook上にて、閉院と今後の展開を公表されました。
晴れ晴れとした寂しさもありつつ、新しい門出に胸が熱くなる11月です。


そんなある日。
このニュースに1号は釘付けになりました。

 

フェレットにかまれ感染症に 16年半闘病の警官が死亡:朝日新聞デジタル

 捕獲しようとしたフェレットにかまれて感染症を発症し、16年半の闘病の末、今年1月に41歳で亡くなった大分県警の男性警部補について、地方公務員災害補償基金大分県支部が7月、公務災害と認定していたことが…

 

フェレットに噛まれた警察官の方が、蜂窩織炎で16年半もの闘病ののち、亡くなった…という記事です。

彼は、公園にいたフェレットを捕獲、保護しようとして噛まれ、そこから蜂窩織炎に。
一時期は復職できるほど回復されたそうですが、その後、状態が悪化し亡くなったそうです。
噛まれて病気に…
わたしたちも他人事ではありません。


蜂窩織炎(ほうかしきえん)とは、英語で「フレグモーネ」ともいいます。
皮膚の小さな傷や毛根から入り込んだ細菌が、皮膚の下で大暴れする病気です。
おそろしいのは、菌の入り込む傷口はそれほど大きくないのに、皮膚の下で大きく広がって暴れるということ。
そして、職業柄、動物に噛まれたり 引っ掻かれたりといったケガを負いやすいわたしたち。
リスクがとても高いのですね。


わたしたちがこういった危険に晒されないために、いちばん大切なのは 飼い主さまのご協力です。
噛むかも、とか、怖がりです、と教えていただけると、こちらの心構えも変わります。
油断しているわけではありませんが、診察中、わたしたちは考えるべきことがたくさんあり、注意を払うこともたくさんたくさんあるのです。
事前に情報をいただければ、注意を払う優先順位を変えられるし、できる対策も取れるので。
お互いに安全に かつ、お互いにハッピーな状態で、診察を終えられます。


ときどき、噛みます、とか、怖がりです、などと言うと診てもらえないかも…と、心配される方がおられます。
たしかに、そういった先生もおられるかもしれません。
でも、そういう方針の先生は、診察中に噛んだり、攻撃するそぶりがあった場合、それ以降の診察も 受けられませんから。
結局診てもらえない という点では、伝えようが伝えまいが同じです。
それなら、リスクがわかっていることは 事前に伝えておいて、取れる対策は取っておいてもらう方が お互いにハッピーですよね。


実は、リスクが高いのは わたしたちだけではありません。
どうぶつたちも、とてもハイリスク。


というのは、犬や猫の場合、ケンカをすると、噛んだり引っ掻いたりをやり合うから。
歯や爪による傷は、牛や馬のように蹄で叩いたり蹴ったり、キリンなどのように体当たりでのケガよりも、細菌感染のリスクが高いんです。


また、家で飼われている子たちの場合、おうちシャンプーで しっかり毛根まで乾かさないことにより、傷口ではなく 湿った毛根、皮膚のバリアが崩れたところから 感染することもあります。
野良の子なら、シャンプーをすることはきっと 一生に一度もないくらいかもしれませんが、家で暮らす場合、シャンプーの頻度は野良生活に比べ うんと高いですよね。


蜂窩織炎は、100%防ぐのは難しい病気です。
菌はごく小さな傷や、ふつうに存在する毛穴からも入ってきますから。


でも、かかってしまうリスクを下げることはできます。
それは、どうぶつたちの避妊・去勢をして ケンカの可能性を下げ、歯磨きをして 口の中の菌の数を減らし、シャンプー後にはきちんと乾かして 皮膚の上にいる菌の数を少なくしつつ 蒸れて皮膚の状態が悪くならないようにする という、ごくごくベーシックな方法です。


ふだんの生活から、こういった方法で対策をしつつ、ときどきは 皮膚の状態を見てみてください。
蜂窩織炎を起こし、手足などが腫れ上がっていれば、だれでもすぐにわかります。
でも、そこまで進むと相当な痛みがあります。
腫れ上がってしまう前、少し赤みが広がってきたくらいとか、腫れ始めたころあたりにお薬を使い始めることで、治りの早さも変わってきます。


皮膚の色が いつもと違ってきたら。
ぜひ、急いで病院へ。
あなたのご来院、お待ちしています。