はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

犬と心臓病② 拡張型心筋症

こんにちわわ!
なんて書き出しで、ブログを書いていた時代がありました。
…(枕に顔を押し当て足をバタバタさせながら)そんな時代もありました。


さて。
前回、心臓病のお話をしました。
見ていただいているようで、twitterなどのSNSや、診察室で、お声がけをいただくことが増えています。
今回は、引き続き心臓病の話をいたします。


前回は、僧帽弁閉鎖不全症といって、小型犬に多い病気でした。
マルチーズヨークシャーテリア、チワワやキャバリアといった子たちに多い病気です。


今回は、拡張型心筋症という病気。
これは、シェパードなどの大型犬や、わんわん物語で有名な コッカースパニエルに多い病気です。


心臓というのは、筋肉の塊です。
肺と全身に血液を巡らすポンプです。
筋肉の中でも、手足のように わたしたちの意志で動かせる筋肉ではなくて、平滑筋 という特殊な筋肉。
他の内臓と同じように、自分の意志では動かせない筋肉=不随意筋 で、できています。


普通の心臓では、この 心臓の筋肉がしっかりしており、ばねのように必要なときに大きく、強く伸び縮みしますので、たくさんの血液を押し出せます。


でも、この 拡張型心筋症 の子の心臓は、筋肉が薄くなってしまいます。
ばねが伸びきってしまった状態ですので、がんばっても 押し出せる血液の量が少ないんですね。
巡る血液の量が少ないわけですから、回数を多く鼓動するしかない…
前回と 似たような展開になってきましたね。


普通の心臓は、水風船に水を入れて口をきゅっと締め、必要になったら口を開け ぎゅっと風船を握りつぶして水を勢いよく押し出すことができます。
僧帽弁閉鎖不全症では、この風船に水をいっぱいに入れても、口をきゅっと締めることができないため、ダラダラと口から水が漏れ続けます。
なので、ぎゅっと風船を握りつぶしても、押し出せる水の量が少ないんですね。
いっぽう、拡張型心筋症では、風船自体のゴムがダランと伸びきってしまっています。
なので、水をいっぱいに入れてぎゅっと握りつぶしても、勢いよくたくさんの水を押し出すことができないんです。
ほかに、風船のゴム自体が分厚くなり、水を入れるスペースが小さくなってしまう、肥大型心筋症という病気もありますが、これは犬たちではかなりまれですので、わたしたちが日ごろよく診るのは 圧倒的にこのどちらか。
心臓病は、口の締まりがゆるくなるか、ゴムが伸びきるか、です。


拡張型心筋症の場合も、僧帽弁閉鎖不全症と同じように、心臓の動きを助ける 強心剤や、出口を広くして 少しでも多くの血液を送り出せるよう、血管拡張薬がよく使われます。
このほかに、拡張型心筋症の場合、心臓の無駄打ち、つまり 鼓動はしているのに 血液を送り出せない といった症状が出ることがあります。
これが続くと、要は 心臓がまったく機能できてない、つまり 止まっているのと同じ状態になります。
いきなり倒れたり、最悪 突然死してしまうこともある、恐ろしい状態です。
こういった症状を抑えてくれるのが、抗不整脈薬。
この薬も 使われることの多いお薬です。


拡張型心筋症は、何より怖いのが この突然死。
突然死を防ぐ!が、何よりも優先されます。
大型犬が、夏の暑さでハアハア言ってるだけ…と思ったら、バタッと倒れてそのまま。
そんなことも普通にあるのが、拡張型心筋症の怖さです。


本格的に暑くなってしまうと、出かけるのもためらいます。
外へ出るだけで具合が悪くなってしまいそうですよね。
そうなる前に、一度 心臓のチェックをしておきましょう。
心臓病は、早くケアを始めれば 始めただけ、調子のよい期間が長く、お薬も少なくて済みます。
少し天気の悪い日なんかは 大チャンス!
早めに 動物病院にお越しください。
当院では、待合室を涼しくして みなさまをお待ちしています。
お散歩ついでに、ぜひ お立ち寄りください!
あなたの来院、お待ちしています。

 

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