はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

ヒナは拾わないで!毎年のお願いです

 ようやく 浸透してきましたね。
野鳥のヒナを拾ってはいけない ということ。

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こういう人とか…


これは、野鳥の会環境省などが、長年にわたり 啓蒙し続けてきたことです。
野鳥のヒナを拾ってはいけないのです。


野鳥側の理由としては、なんといっても ヒトが拾ってしまうと 親が迎えにこれなくなってしまう ということ。
落ちている ように見えて、親が近くに隠れているのですが、拾ってしまうと 迎えにこれなくなります。
こうして、保護 したつもりで 拉致 されてしまったヒナは、野生に戻されても その後きちんと野生復帰できないことがほとんどだそう。
自力で食べ物を手に入れることもできず、親からきちんと「しつけ」をしてもらうこともできなかったヒナは、すぐに死んでしまうのだそうです。
野鳥の命を守りたいからこそ 拾うのに、結果 早く死なせてしまうことにつながります。
野鳥のヒナは、拾うことで死なせてしまうことになるから、拾ってはいけないんですね。


次に、法律の観点から。
野鳥は、許可なく飼ってはいけないことになっています。
むしろ、セキセイインコ文鳥など、許可なく飼ってよい種類のほうが 圧倒的に少ないんですね。
ハトやカラス、スズメといった、比較的よく見かける鳥はもちろん、ヒヨドリなど この時期 「保護」されてしまいがちな鳥も 飼うのなら許可が必要なんです。
一時的な保護だから…と思うなかれ。
この 許可が必要 という事実には、期間や目的の決まりはないのです。
つまり、5分でも、5年でも、食用でも、愛玩用(ペットとして)でも、同じこと。
保護であって、飼っているのではない…と言い張っても、法律上は同じこと。
つまり、野鳥のヒナが落ちているからと 拾って家に連れ帰ることは、法律違反と罪に問われても 仕方のない行為なのです。
わざわざ 罪を犯したい人はいませんね。
野鳥のヒナを拾うことで、法律に違反してしまうから、拾ってはいけないんです。


また、わたしたち獣医師は、どうぶつのことだけ考えているわけではありません。
どうぶつの健康を通じて、社会全般、言い換えれば 人間の健康についても 向上させることが仕事なんです。
そういった、人間の健康 という観点からいって、野鳥のヒナを拾うのは とても 危険な行為です。
それは、野鳥は どんな病気を持っているかわからないから。
中でも、人間の命に即関わってくるような、恐ろしい病気を持っている場合が 多々あるのです。
毎年のように 鶏の大量の処分をしている、高病原性鳥インフルエンザ
ジカウイルスなどと同じ、感染症法4類に分類される オウム病。
他にも、抗酸菌症、ニューカッスル病など、いろいろな病気を持っているリスクがあります。
さらに恐ろしいのが、これらは 人間の医療分野では、比較的マイナーな病気だということ。
言い換えれば、なかなか診断がつかず、治療が遅れる可能性があるのです。
落ちている(ように見える)野鳥のヒナを拾うことで、こういった病気にかかるリスクが とてもとても高まります。
中でも、免疫力がまだまだ発展途上の 子どもたち。
落ちているヒナを見つける 名人でもありますが、非常に危険な行為であることがわかりますよね。
野鳥のヒナは、恐ろしい病気をうつされる危険性が高いから、拾ってはいけないんです。


いろいろな立場から、拾ってはいけないことを お伝えしてきました。
そうは言ってもケガしてるみたいだから、放っておけないよ…という、優しいあなた。
まずは、都道府県の 野生動物窓口に連絡をしてみてください。
ただ、「放っておいてやってください」などと言われる可能性もあります。
野生動物は、ペットとは違います。
目の前で弱った小さな動物を 見過ごせない。
あなたのその優しさは、ぜひ 自分の小さな家族に注いであげてください。


小さな家族の健康管理は、当院におまかせを。
あなたのご来院、お待ちしています。