はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

型にこだわる

掃除に始まり、掃除に終わった週末でした。
土曜日から上の子が吐きっぱなしで、うッ となるとところ構わずだったのです。
クレラップ姉妹みたいな髪型なので、汚れてしまいやすく、お風呂にも何度入れたことか…
人間の病院、特に 小児科は、土曜日は休診だったり 外来は予約やワクチンのみだったりとどこにも診てもらえず、どうにもならずに救急病院へ駆け込んだら ロタウイルスで点滴入院。
下の子も 中耳炎で高熱を出して小児科と耳鼻科をはしごしたりと、季節の変わり目と言うに余りある 凄まじい変わり目を経験しています。
1号は 趣味の個人輸入で手に入れた 外国のビタミンサプリで乗り切ると自分に言い聞かせていますよ。
季節の変わり目に やられているあなたも、乗り切れそうなあなたも。
ともに頑張りましょう。


さて。
ロタウイルス といえば、1回1万円超え×2回の 飲ませるワクチンがあります。
これは、公費負担がない、つまり やるのなら自己負担でね ということ。
1号家は、下は早く保育園に入れることが決まっていたので  飲ませていました。
今回、ゲエゲエしている上の子にずーっと まとわりついていたわりに、下の子にまったく症状が出なかったのは、きっと 3万円近くのお布施をお納めした ワクチン大明神様のお陰と 自分に言い聞かせています。


このように、ワクチンを打っていても、病気になるときはなる…というワクチンと、
ワクチンを打っていれば大丈夫!というタイプの病気があるのを ご存知ですか。


なるときはなる タイプの病気の代表が インフルエンザ。
ワクチン打っていたのになってしまったー…という人、多いですよね。
それに、ロタウイルスも同じです。
打っていても、なるときはなります。


いっぽう、きちんと決められた方法で打っていれば大丈夫!タイプの病気といえば、いま話題の 麻しん(はしか)や風疹。
これらは、ちゃんと正しく打っていれば、かかることはありません。


これらは、何が違うのでしょう。
根本的にそもそも違う病原体…というのは当然なのですが、それはさておき、
なるときはなる タイプの病原体には、 型がたくさんある という特徴があります。


言い換えれば、一生大丈夫なタイプのワクチンは、特定の型が原因でかかる病気のワクチン。
なるときはなるタイプのワクチンは、インフルエンザやロタウイルスのように、原因となる病原体の型がたくさんあるのです。
ワクチンを打つ上では、この 型 を選ぶのが、とても重要だったりします。


日本国内で流通している 混合ワクチンは、あまり大きな違いはありません。
が、一つだけ 大きなポイントがあります。
それが、レプトスピラ という病原体です。


レプトスピラは、たくさんの型がありますが、一部の型は 監視伝染病 といって、人間でいう 感染症法に基づく報告 のように、診断した獣医師に 報告義務のあるものがあります。
報告義務の対象になっている型は 全部で7つ。
じゃあ、この7つ全部をカバーしたワクチンを打とうかな…と 思うかもしれませんが、この7つを全てカバーしたワクチンはありません。


そもそも、ワクチンというのは、防げる病気が多いものほど、副作用も出やすいもの。
7種全部入り!というのは、その面からみても 現実的ではありません。


それに、報告義務のある型は7つでも、よくみると対象動物には 牛や豚、鹿なども含まれています。
つまり、今までにかかったという報告があるのは牛や豚だけで、犬での報告はない という型もあるんですね。


具体的に犬の報告事例があるのは、5型。
じゃ5型入り!と思うなかれ。


そもそも、ワクチンを打つのは、恐ろしい病気による重い症状を防ぐため。
風邪やちょっとした胃腸炎のような、ごく軽い病気に、わざわざワクチンは打ちませんね。
レプトスピラも、牛や豚では 重い症状が出るけれど、犬にはそこまで悪さはしない というタイプがいます。
副作用のリスクと、ワクチンによる効果をくらべたとき、リスクのほうが高いものなら、わざわざ痛い思いをして危険を冒すことはありません。


5型のうち、特に犬に重い症状が出るのは、カニコーラ型。
これは、入っているもののほうがよさそうです。


次に、ちょっと違った角度から見てみます。
それは、人間にはうつるのか?という角度。
人獣共通感染症(ズーノーシス)なのかどうか、という見方です。


レプトスピラ7型のうち、ズーノーシスにあたるのは 4型。
さらに、その中で、犬にある程度の症状が出るリスクがあるのが、1 又は 2型。
これは、評価の方法により、見解が分かれています。


レプトスピラは、犬に重い症状が出る 1型と、症状があって 人間に病気がうつる可能性のある 1 又は 2型。
合計2型 又は 型が含まれたワクチンを打っていれば、ローリスクで かなりのリターンが得られます。


当院では、より 副作用のリスクが少ない 2型入りのワクチンをご用意しています。
これは、東京都下という当院の立地や、猟犬など レプトスピラにかかるリスクの特別高い子が ほとんど来ないといったことが理由。
中でも、副作用の心配の少ない 大手メーカーのものを使っています。


ワクチンを打つなら、型にもこだわってみてください。
あなたのご来院、お待ちしています。