はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

こんなもので?身近に潜む中毒

毒のある魚が 販売され、買われ、そして食べられてしまった。
起こってはならないことが起こりました。
ニュースで知ったときは、ほんとうに鳥肌が…
健康被害は今のところないようですが、ご本人はもちろん、わたしたちも。
スーパーの魚は大丈夫?と、心配になりますよね。


わたしたち獣医師は 毒のある魚についても勉強しています。
有名なフグはもちろん、プランクトンを食べて体に蓄積したシガテラ毒を持つ毒魚、毒きのこや毒草についても きちんと講義や試験を受けるんですね。
というのも、獣医師は 食品衛生にも携わるから。
と場や 飲食店などに衛生指導をしたりすることもありますし、食中毒が出たりすると さまざまな検査をして原因を突き止めたりするのも、医師などと協力して 獣医師が行うことがあるんですよ。


山の幸の多くが旬を迎える冬は、毒のあるものを誤って食べてしまう ということが多いんです。
山菜と間違えて毒草を食べる。
毒きのこや毒魚を間違えて食べる。
そんなことがあっては、せっかくのお正月や年末年始のごちそうが、台無しです。


でもね。
毒魚や毒草、毒キノコだけではありません。
実は、わたしたちのごく身近にあるものが、わんちゃんやねこさんに牙をむくことがあるんです。


まず、なんといっても 有名なのはタマネギ。
これの恐ろしさは、アレルギー的に症状が出ることにあります。
以前に経験した症例です。
盗み食いの性癖がある子で、1ヶ月に1回くらい 油断したすきに親子丼やカレー、タマネギサラダなどを盗み食いされてしまっていたそうです。
まあまあの量のタマネギを食べられてしまうこともありましたが、いつも全く平気でケロッとしていたので、中毒といっても大した症状は出ないのね、うちの子はタマネギに強い体質なのかしら…と 飼い主さんは思っていたそうです。
そんなある日、今度は 留守番中に 刻んだタマネギの入ったハンバーグを盗み食い。
帰宅すると、明らかに元気がなくてグッタリ。
慌てて連れてこられ、急いで血液検査を…するまでもなく、血をちょっと取っただけでも 明らかにおかしく、緊急入院しました。
診断はもちろん タマネギ中毒。
盗み食いした量は 今まででいちばん少なかったそうですが、症状がとても激しく出たんです。
タマネギ中毒の怖いのは、食べた量と症状が比例しないこと。
でも、ひとたびタマネギ中毒を発症すると、ごく少量でも症状が強く出るようになります。
年末年始の食卓、タマネギって わりとなんにでも入っていますよね。
タマネギ中毒を起こしたら、ネギ類全般に反応するようになりますから、危険さは一段と増すんです。


それから、これは案外知られていない、オレンジのクリーナー。
ねこさんのいるおうちには、オレンジのクリーナーは絶対にだめなんです。
というのも、ねこさんは オレンジの精油が禁忌なのですが、オレンジのクリーナーには たくさん入っているから。


年の瀬の大掃除、どうせならいい匂いで。
よく落ちると聞いたから。
そう、オレンジのクリーナーはたしかにいい匂いでよく落ちるのですが、それでも。
猫さんがいるのなら、オレンジのクリーナーを使ってはいけません。
オレンジのクリーナーに含まれる成分が、猫さんの肝臓には毒なんです。
かなり苦しい思いをさせてしまいますから、オレンジのアロマはもちろん、オレンジのクリーナーも気をつけてくださいね。


他にも、観葉植物やお正月の飾りとしてよく見る ナンテン
これも、赤い実で一見美味しそうだからと 口に入れてしまうと、大変なことになります。
ユリやカラーなど、花束でよく使われる花や、この時期よくお花屋さんで見かける 鉢植えのカランコエ
これも、毒があって危険ですから、植物をかじっていたずらするタイプの子は 口の届かないところへ置きましょう。


こんなもので!?と、驚くようなものでも 口に入れてしまうと中毒になる場合が。
でも、裏を返せば、口にさえ入れなければ 中毒にはなりません。
口に入れさせなければ、問題にはなりませんから、ぜひ気をつけてあげてくださいね。


あれ、もしかして…
と思ったら。
手遅れになってしまう前に、急いで最寄りの動物病院へ行ってくださいね。
あなたのご来院、お待ちしています。