はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

伸縮リード、とっさのときは

以前から公園でときどきラブちゃんを連れてお散歩しているのをお見かけしていた 還暦くらいのご夫婦。
いつの頃からか、見かけるとご挨拶くらいはする、くらいの関係でしたが、ここしばらくおかあさんとわんちゃんだけで散歩していて 気になっていました。
とってもイケメンなおとうさん、我が家の面食い3歳児も その不在が気になっていたようで、ある日「おじいちゃんは?」と突撃。
「おじいちゃんはね、いまお手手が痛くておうちにいるのよ」
おかあさんによると、公園で伸縮リードのロックを解除してラブちゃんを遊ばせていたら、猫さんを追って 公園から飛び出していきそうになったのだそうです。
タイミング悪く、大型トラックが向かってくるのが見え、慌てたおとうさん、とりあえずラブちゃんを止めようとリードを掴んだそうなのですが、大型犬が本気で猫を追いかけているわけですから、全くかなわず。
すごい勢いで伸びるリードで擦ってしまい、手を大やけどしてしまったんだそうです。
「もう10日くらいになるのに、傷も深くてまだ痛いみたいだし、スパッと切ったわけじゃないからか、治りも遅いのよ。利き手を包帯でグルグル巻きだから、何もできなくてね。日常生活もとても不便なの。でも、病院の先生によると、こういう伸びるリードでケガをする人ってけっこういらっしゃるんですってね」
お大事に、と言ってお別れしました。


そうなんです。
伸びるリードでやけどする方、多いんです。
ラブちゃんのおとうさんのように 突然飛び出した子を制御しようとしてうっかりリードを握ってしまう方、
飼い主さんの足や腕に絡まった状態で 勢い良くリードが伸縮してしまったという方、
状況はいろいろですが、何しろ傷が深くて治りの遅いのが特徴です。
中には、ケロイドみたいになってしまって 大きな跡になった方も。


飼い主さんがケガをするだけではありません。
リードの伸縮をロックしたつもりで きちんとできておらず、自転車やベビーカー、走ってきた子どもを引っ掛けて転ばせてしまったとか、
道路に飛び出してしまったという事例もあります。


伸縮リードって便利なんですよね。
ノーリードOKのドッグランではないけれど、ちょっと走らせてやりたいな、なんてとき。
周りに人もいないし、リードが長ければいつもよりは自由にさせてあげられるんだけど、長いリードを持ち歩くのも かさばるし重いし絡まってじゃまになるし。
そんなとき、伸縮リードがあれば、かさばらず絡まらず、それでいて伸ばしてやりたいときには伸ばせますから とってもいいんです。
子犬ちゃんはじめてセット みたいなのにもたいがい入っていますよね。
でも、こんなふうに 自分が大やけどをするかもしれないこと、誰かにケガをさせるかもしれないことは、ぜひ 心に留めておいてくださいね。


ちなみに、1号も伸縮リードを持っています。
チワワにも シェパードにも使っていましたし、実家のビーグルも使っています。
1号が使うときは、必ず リードを2本着けます。
伸縮リードと、普通のリードの2本で、とっさのときには普通のリードをつかむようにしています。
と同時に、伸縮リードを足で踏みます。
足で踏めば、勢いよく伸縮しても、最悪靴はだめになるかもしれませんが 手をやけどするよりマシですからね。
反射的に手で握ってしまったとしても、足でも踏めば キズは浅くて済みます。
ロックがついている伸縮リードでも、とっさのときにロックできるとは限りませんから、
あっ!と思ったら、とりあえず足で踏む!

心の片隅にでも とどめておいてください。


ペットホテルで お預かりの子のお散歩は、念のためリード2本づかいです。
やんちゃな子や パニックになって駆け出すタイプの子は さらに念のため、スタッフの体に3本目のリードをたすきがけにし そこにもつないでいますよ。
変わった人…
ではありません。
危機管理 というやつです。
危機管理意識のしっかりした方も、危機管理とかめんどくさいあなたも。
ご来院、お待ちしております。