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だったらどうしろと?続・獣医学部新設のニュースに、現役獣医師が思うこと

大雨の降った 夏至の日でした。
1号は野暮用で横浜の海のそばにいたのですが、日中は大荒れだったものの、夕方、帰路につくころには、つかの間の夕焼けを楽しむことができました。
ビルに反射して いつまでも太陽が沈まないような感覚になる都市の夕焼けもだいすきなのですが、海、空、沈む夕日…という プリミティブな夕焼けも とても素敵だと思います。

さて。
先日の、「獣医学部新設のニュースに、現役獣医師が思うこと」http://kurimotoah.hatenablog.com/entry/2017/06/16/191815
この記事に、たいへんな反響をいただいています。
直接コメントをくださる方、返信記事を書いてくださる方。
PVも見たことのない数字で、読んでくださっている方がたくさんいらっしゃるんだなと感激しています。
そんな中で、数人の方からのご意見として、「だったらどうしろと?」というものがありました。
中には、実際にいま、獣医師不足に困っているのだろうと思われる方からのものも。
日本の法律で、獣医師でなければ、診療してはいけないことになっていますから、
目の前に苦しむどうぶつがいても 獣医師がいなければ何の治療もしてやれない。
悔しいですよね。
そういう方からすれば、一人でも志のある獣医師が増える可能性のある獣医学部の新設は、待ち望んでいることだと思います。

1号の個人的な見解、個人的な意見は、「学部の新設にこだわるのではなく、後継者推薦枠をなくせばいい」と思います。
これは、私立大学にはとても多い制度で、動物病院を開業している人の子弟に限り 特別な推薦枠を作って一定数を受け入れるというもの。
学校により、卒業生の子弟に限る場合と、卒業生に限らず 開業獣医師の子弟は広く受け入れる場合がありますが、
この枠で入学してくる生徒たちは、ほぼ100%が小動物の臨床へ進みます。
大学病院などの高度医療施設で 武者修行兼人脈作りをしてから 後を継いだり。
人によっては、箔付けのために博士課程進学したり、留学したりすることもありますが、
修行を終えたり、学位を取ったりしたあとは、 後を継ぐ病院が決まっていますから。
公務員獣医師や 家畜の獣医師にはならないわけです。

こういった枠があると、後継者をぜひ入学させたい病院経営者などから、大学に多額の寄付金が見込めます。
いくら以上という決まりはありませんが、額の大きい方が より有利になるのでは?と 誰でも考えますよね。
獣医学部は、医学部などと比べ 留年率も低いですから、入学さえすれば あまりにもアホでない限り、スムーズに卒業→国家試験合格 となりやすいんです。
獣医師免許はコネとカネで取れる と言われてしまうのは このためなんですね。

1号の仲の良かった子で この枠を利用して入学した子がいました。
彼は、お父さんと仲が悪く、「俺はおやじの後なんて継ぎたくない」と公言していました。
「子どものころに入院してた犬に噛まれて、それ以来犬がだめ。猫も何を考えているかわからなくて、気持ち悪い。動物が好きじゃないのに、なんで獣医なんかにならなくちゃならないんだ。これから一生、嫌いな動物に関わって生きていく人生なんて」
獣医学部の学生は、それなりの思いを持って入学してくる学生も多く、飲み会で、いかに動物が好きか とか、どんな獣医師になりたいか というのは、鉄板の話題でした。
そんな話題で盛り上がる同級生たちの中で、彼はほんとうに辛そうでした。

この枠のおかげで、小動物臨床に進むんだ!という強い意志を持った学生を優先的に入学させられる というメリットも たしかに大きいです。
少ないとはいえ、留年してしまったり、国家試験に落ちてしまったりする学生もいますが、
卒業して獣医師になる!という強い意志があれば、そういった可能性は下がりますし、周りにもその姿勢は影響しますから。
留年率を下げ、国家試験合格率を上げたい大学としては、理にかなった制度かもしれません。
でも、小動物臨床の分野では 獣医師が余っているというのも現実です。
教育の質を保つために、それぞれの学校が採る 入学者数は増やさないのであれば。
その 限られた入学者の中に、公務員や家畜を診療する道を目指す可能性のある人の割合を上げるのが 合理的です。
そのためには、公務員や家畜を診療する道は100%選ばない と決まっている人の専用枠をなくすのがいちばん早いやり方だと、1号は考えています。

蛇足になりますが、1号は後継者推薦枠の悪口が言いたいわけではありません。
この枠があったからこそ、同じ大学に通い、ともに学ぶことのできた得難い友人もたくさんいます。
でも。
わたしたちは、獣医師として携わるすべての場面において、動物や畜産業、ひいては社会のために働くことが任務。
ペットの診療をするときも、公務員として検査や指導をするときも、そして家畜を診るときも。
目の前のどうぶつのためだけでなく、自分たちを取り巻く社会のために仕事をしなければならないのです。
自分の人生をかけて築き上げて来たものの 後を継いでほしい、次世代へ残していきたいという気持ち。
子どもが出来て、昔よりはわかるようになったつもりですが、やはりそこは獣医師として。
社会のために、ぜひ後継者推薦枠の撤廃も 考えてほしいと思います。
なにより、子どもがほんとうに獣医師になり、親の築き上げて来た病院の後を継ぎたいと思えば、後継者推薦枠などなくても 自力で大学に受かります。
模試でE判定だろうが 周りに何を言われようが ぜったいに、ちゃんと合格しますから。

あなたのご意見、お待ちしています。