はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

避難への備え。ケージのおはなし

地震の相次ぐ日本です。
地震そのもので傷ついた人も、避難や関連したあれこれで傷ついた人も、そしてそのどうぶつたちも。
心や身体が、少しでも楽に、そして早く治るといいなと思います。

考えたくない万が一だけど、備えておいたほうがいいもののひとつに、ケージがあります。
クレート とか キャリー などとよぶ人もいますね。
これは、普段使いもできるものなので、銀色の非常持出袋などとは違い 備えてます!感があまりないのもいいところ。
さらに、ヘルメットなどと違い、普段使いしても劣化していかないのも 魅力です。

この ケージ、ざっくり分けると ハードとソフトに分けられます。
ハードケージは、形が変わらないもの。
ソフトは、いわゆるかばんやスリングのように、柔軟に形を変えるものです。
中でも、災害に備える という目的では、当院のオススメはハードケージ。
バリケンネルなどの ブランド品でなくても、IATAイアタ という基準を満たすものなら、国際線の飛行機などに乗るときも使えますし、一定の品質が保証されるので 安心です。
ソフトは、肩からかけて抱っこのスタイルで、抱っこの好きな子などはとてもいいのですが、自立しないものも多いし、どうぶつのためのパーソナルスペースを確保できないので、災害に備える用途なら あまりオススメはできません。

そして、買うだけ、持ってるだけ ではなく、ケージは使って慣らしておくことで 最大の効果を発揮します。
というのも、ケージというのは、本来どうぶつたちを閉じ込めておくものではなく、パーソナルスペースを確保してあげるためのもの。
どんなに仲のいい家族でも、ひとりになりたい時間って ありますよね。
24時間365日ずーっと一緒 というのは、気が詰まってしまうと思います。
そんなときに ひとりになれるスペース。
それがケージです。
叱られて落ち込んだときも、新しいイタズラを考えるときも、見慣れないお客さんからちょっと距離を置きたいときだって。
逃げ込める場所、とりあえずここにいれば安心な場所。
どうぶつたちも、そんな場所が必要なんです。

ケージを手に入れたら、閉じ込めてはいけません。
ここはボクだけの安心な場所 と教えてあげてください。
それにはたとえば、中に好きなおもちゃを入れてあげたり、ごはんやおやつを食べさせたり。
その子が安心して、落ち着いていられるようにしてあげれば、そのうち自分で好きなときに入っていくようになります。

ケージの中で静かにジッとしていられる子は、同行避難もしやすいもの。
同行避難だけでなく、日常のいろんな場面で そのありがたみを噛みしめることは多いと思います。
それには、日ごろから、ケージの中にいるのはいいこと、落ち着くこと と教えてあげるのが一番です。
避難したときに、日常から大きく離れるのが 最大のストレスなんだと言っている人がいました。
ケージは、持ち運べる日常です。
防災のため、避難に備えて… だけではなく、もっと気軽に使ってほしいなと思います。

また、ケージはサイズ選びも大切です。
サイズ選びの基準は、中で余裕をもってクルッと回れる大きさがベスト とされていますが、
大きすぎも、実はあんまりよくないんです。
広いスペースを確保してあげたいからと、チワワちゃんやトイプーちゃんに ラブちゃんなど大型犬用ケージを使わせるのは、かえって落ち着かないのでオススメできません。

ケージって、ほんとうはわんちゃん、ねこちゃんのためになるものです。
「いくら避難のためだって、あんなせまい箱に閉じ込めるなんて…かわいそう」とおっしゃる方もいるのですが、
ほんとうなら よろこんで入っていくもの。
わんちゃん、ねこちゃんの習性ですから、性格 とか 生活スタイル とは、関係ないんですね。
もし、そうでないのなら、ケージの使い方を間違えているかもしれません。
ケージを嫌がる子は、いま一度 使い方を確認してみてください。
閉じ込めるような使い方をしていませんか?
思い当たる方は、まずは ケージが嫌な場所でなく、落ち着くところだと教えてあげるところから始めましょう。

ケージに入れる子は、病院の受診もしやすいですよね。
結果、病気が早く見つかり、手が早く打てることも。
いろんな 万が一 に備えましょう。