はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

広がる 多頭飼育崩壊

先日のクロ現プラス こと、クローズアップ現代プラス。
1号、遅い夕食そっちのけで、釘付けになりました。
テーマが、ペット多頭飼育崩壊だったんです。
(https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3892/index.html)

動物病院で働いていると、多頭飼育崩壊について ときどきご相談を受けることがあります。
お話を聞くと、多頭飼育崩壊に陥る方というのは、優しく面倒見がよく、そして自己主張の少ない方が多いようです。
優しいから、避妊や去勢手術はかわいそうと受けさせない。
面倒見がいいから、困っている命を見捨てられず拾ってくる。
自己主張しないから、だれにも相談しない。できない。

…でもね。
崩壊させてしまうのなら、それはただの無責任。
だって、飼い主さまが若くて体力があって散歩も掃除もキッチリできるなら、それは普通の多頭飼育ですし、
若くもないし体力もなくたって、人を雇って代行してもらうだけの経済力があるなら、それも普通の多頭飼育。
そういったことができないのにどんどん増やして、
やがてどうしようもなくなり、ボランティア団体や自治体に事態の収拾を丸投げ。
それって、無責任ですよね。

当院に相談して来られる方は、崩壊の当事者であることはまれで、ご近所さんやお身内など、見かねた第三者から…というのが多いです。
うるさい か、臭い かで迷惑を被っている方がほとんどです。
でも、甲状腺機能亢進症や 痴呆で騒いでしまう子、皮膚病などで臭いのある子などなら 当院で治療できるかもしれませんが、
多頭飼育崩壊の場合は、当院では直接解決のお手伝いはできず、お話を聞いたり、行政に相談してみては…などとご案内するていどです。

当院は、複数飼育を全否定しているわけではないんてす。
複数飼育は、ペットちゃん本人にも、ご家族にとっても、メリットがあります。
でも、それには 飼い主としての責任を果たしてはじめて 享受できるメリットです。
飼い主としての責任 とは、避妊や去勢手術、ワクチンの接種はもちろん、ペットちゃんの病気、冠婚葬祭や飼い主さまの入院など ペットちゃんが同行できない数日間などへの備えなどや、
吐いたり下痢をしたりしているのがどの子か すぐに見分けられるか?なんてことまで。
そういったことができないのなら、多頭飼育に手を出してはだめなのです。

いま、多頭飼育崩壊で 困っている方は、行政にご相談を。
ひとりが一度相談したくらいでは 動いてくれなくても、何人もが何度も相談すれば 動いてくれるかもしれませんから。
多頭飼育が崩壊しそうな方、させそうな方は、一刻も早く それ以上の状況悪化を防ぎましょう。
具体的には、拾う・保護することを中断する、今いる子たちに 避妊・去勢の手術を受けさせることです。
いままでやっていたのを止めるのは…と 心理的に抵抗をおぼえる方は、もう一度よくよく考えてください。
拾っただけ、保護しただけではただの自己満足です。
幸せにしてあげられないのなら、手を出してはいけません。
それは、幸せになるチャンスを潰すことです。
そして、手術をしていない方。
手術をせず、ひとつ屋根の下にどうぶつをどんどん増やすのは、産めよ増やせよ と言っているのと同じです。
生まれた子全員幸せにしてあげられないのなら、今すぐ手術を。
お金がかかるとためらっているうちに、手術が必要な子がどんどん増え、費用もどんどんかかります。
今すぐに予約を入れてください。
良心的な病院なら、どの子から手術をするのが一番効率的か、一緒に考えてくれるでしょう。
多頭飼育崩壊の現場では、親子や兄弟で子どもを作ってしまうこともよくあり、そうなると身体に障害のあるどうぶつが生まれてしまうかもしれません。
手術を受けさせるのとどちらがかわいそうなのか、いま一度よく考えてみてください。

多頭飼育崩壊という 人間のエゴに巻き込まれてしまった どうぶつの幸せを祈っています。