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夏のわんちゃんに多い病気(2) 熱中症編

熱中症
ちょっと前までは、「日射病」「熱射病」なんて言い方もありました。
基本的には同じ、暑さ負けによる体調不良なのですが、ひどくなると命に関わる病気です。
わんちゃんに限らず、どうぶつというのは、寒さよりも暑さに弱いです。
夏になると、日陰でグターッとしている外猫さんを見かけること、ありませんか。
家の中で、わんちゃんや猫さんのいつもいるところがいちばん涼しい、なんて話も、よく聞きます。

どうぶつたちがこのように暑さに弱いのは、毛皮を着ていることと、ヒトのように汗をかいて熱を発散できないことが原因です。
たとえば、南極でソリを引いたりする ハスキー犬。
あの子たちは、マイナス何十度という環境でも凍えずにいられるために、あたたかく、そして雪や氷でケガをしないようなじょうぶな毛皮になるよう 品種改良を重ねてきました。
そして、わんちゃんは足の裏からしか汗をかけません。
からだにこもった熱は、口を大きく開けてハッハッと息をする=パンティングでしか発散できないのです。
もし、ぴったりしたサウナスーツの上に南極へ行くようなコートを重ね着して、日本の真夏にクーラーなしで過ごしたら…?
炎天下の車の中で待たされたら…庭先の熱いコンクリートの上に立たされたら…
ごく短い間だったとしても、暑さで体調を崩してしまいますよね。

わんちゃんの場合、暑さによる体調不良は、まずおなかにくることが多いです。
吐いたり、下したり、そこまでいかなくても お腹がギュルギュルいう音が聞こえたり。
梅雨の晴れ間に わんちゃんのお腹の具合がおかしかったら、もしかしたら日中 暑い時間帯があるのかもしれません。
この時期、びっくりするくらい部屋の奥まで 西陽が差し込むことがありますし、いつも隠れる涼しい部屋に 今日はたまたま荷物があって入れなかったのかも。
日中いっしょに過ごせる方も、目を離す時間帯って きっとありますよね。
そんなとき、わんちゃんたちは毛皮とサウナスーツを着ているんだ…、と 考えてあげてください。
自分が毛皮+サウナスーツではきついな…と感じる気温なら、ためらわず クーラーをつけてほしいと思います。


以前、車で少しだけ待たせて戻ったらわんちゃんが倒れてしまっている!グッタリしてしまって呼びかけにも反応しない!どうしたら!!?!というご相談を受けたことがあります。
お休みの日だったので、家族で遠出して、コンビニに立ち寄って車に戻ったら そんな風になってしまっていると、パニックになってのお電話でした。
たまたまコンビニで買っていたつめたい缶コーヒーを おなかなどの皮膚の薄いところに当てて、クーラーをフル稼働させながら とにかく近くの動物病院へ!とお伝えし、なんとか 退院できたと聞きました。

こんなとき、つめたい水をかけてあげたら 早く涼しくしてあげられるかも…なんて思いがちですが、実はこれ やってはいけないんです。
というのも、熱中症だからと冷やしすぎて あっという間に今度は低体温症になってしまった ということがよくあるから。
からだを冷やすのをやめるタイミングを見誤ると、また別の病気を引き起こしてしまう可能性があるんです。
つめたい水をからだに直接かけてしまうと、毛皮がびしょ濡れになりますよね。
そうすると、冷やすのをやめたいタイミングでも からだがどんどん冷え続けてしまい、かえって違う病気を招いてしまう可能性も。

知識の備えはばっちりと、でも 活用する必要のない夏をお過ごしください。