はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

猫と心臓病 「風が吹けば桶屋が儲かる」

寒いですね。
寒さにもいろいろありますが、忘れられないのはやはり 某国での寒さ。
気温はマイナス20度以下が当たり前なのですが、向こうで気にしているのはそれより何より 体感温度
実際の気温がどうか?より、何度くらいの寒さと感じるか?が大事なんです。

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川が凍り出す時期。

来てます。寒波が来てます。

 

そんな某国、天気予報に欠かせないのが 「ウインド・チル」の有無でした。
これは、日本で最近使われるようになった、「チルってる=心地いい」とは、真逆の意味。
ウインド・チルとは、北極からの風が強く吹くことなんです。
すごく冷たい風が吹いてくるので、気温は高くても 体感温度がむちゃくちゃ下がります。
晴れた日など、「今日は気温はマイナス20度くらいまで上がりますが、お昼ごろはウインド・チルがあるので、体感温度はマイナス40度以下。室外へ出るのは避けましょう」なんて、予報を聞くことがあります。
低すぎてなんだかよくわかりませんが、気温の差でいうと、20度くらいです。
この差を、日本で考えてみます。
いま、12月の東京の平均気温は 12度。
8月の平均気温が、ちょうど20度くらい上、31度くらいです。
つまり、風が吹くだけで、実際の気温は8月なのに、12月くらいに感じられてしまう、というのが、ウインドチルなんです。


たかが 風。
でも、気温を20度も下げて感じさせるくらいの力があるのが 風なんですよね。


そんな 風。
風が吹けば桶屋が儲かる、ということわざを ご存知でしょうか。
1. 風が吹くと、埃が立つ
2. 埃が目に入り、目の病気で失明する人が増える
3. 失明した方は音楽を生業とすることが多いので、三味線の需要が増える
4. 三味線の材料にされるため、猫が減る
5. 猫が減ると、ねずみが増える
6. 増えたねずみが桶をかじって壊す
7. 桶の需要が増えるので、桶屋が儲かる
というのが一般的ですが、オホーツク海沿岸では違うのだそう。
オホーツク海沿岸バージョンでは、
1. 北風が吹くと、流氷が接岸
2. 室温が氷点下になる
3. 水場で使われる桶が凍結し、壊れる
4. 桶の需要が増すので、桶屋が儲かる
と、全く別な流れで 桶屋が儲かるのだそうですよ。

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寒波により、完全に凍りついた時期の同じ川。

セントラルヒーティングがなければ、確かに、室内のものが壊れてもおかしくないかも。


ところで、足の痛みから、心臓の病気がわかることがあるのを ご存知ですか。
一見、まったく話がつながらないようですが、「風が吹けば桶屋が儲かる」のと同様、背後には隠された流れがあるんです。


足の痛みを引き起こす 心臓の病気。
それは、肥大型心筋症 という病気です。


肥大型心筋症とは、その名の通り、心筋が肥大する病気。
ひらたくいえば、心臓の筋肉が 分厚くなる病気です。
筋肉体操などで鍛えられる、いわゆる 裏切らない 筋肉とは違い、心臓のような臓器は 平滑筋 といって、鍛えても大きくはならない筋肉でできています。
これが、大きくなってしまう病気。
それが 肥大型心筋症なんです。


心臓の筋肉が大きくなる、つまり、心筋が分厚くなると、何がいけないか。
まず、心臓の中の部屋、血液を貯めておくスペースが 狭くなります。
これにより、一回の鼓動で 押し出せる血液の量が少なくなりますね。
全身に血液を巡らせるために、鼓動の数が増えるわけです。


さらにいけないのは、鼓動がうまくできなくなること。
そもそも、心臓は、電気信号で鼓動を生み出しています。
縮め!という電気信号が心臓の筋肉に伝わるから 縮む。
縮め!の信号がなくなるので、ゆるむ。
これの繰り返しが 鼓動です。
ということは。
縮め!の信号が、心臓の筋肉にうまく伝わらなかったり、伝わっても 縮むことができない場合。
心臓は鼓動ができません。


病気で大きくなってしまった 心臓の筋肉は、信号をうまく伝えられず、伝わっても うまく縮むことができません。
つまり、鼓動ができないんですね。


鼓動ができないということは、心臓が止まっているのと同じこと。
全身に血液が巡らないわけです。
でも、止まりっぱなしではありません。
止まりっぱなしでは死んでいたり、倒れたりします。
病気が進行して 重症になれば、もちろんそうなることもありますが、初めのうちは ときどき脈が飛ぶとか、脈が乱れる状態になります。


この、脈が飛んだり 乱れたりしているとき。
血液はどうなっているか?というと、澱んでいます。
巡らない、動いていないわけですからね。


するとどうなるか。
しだいに集まり、固まって、栓を作ります。
これが突然、後ろ足のほうへと伸びている血管に詰まってしまうことが ねこさんではよくあるんですね。


脳の血管に栓が詰まると、脳梗塞を起こします。
このとき、感じる症状としては、「経験したことのないほどの頭痛」「バットで頭を思い切り殴られたような痛み」など、とにかく強い痛みが出ます。
これと同じことが 足に起きるわけです。
脳梗塞と違い、意識はありますから、痛いままなのですね。


そうです。
これが、足の痛みから 心臓病がわかる!?の流れ。
1. 心臓の筋肉が病的に分厚くなる
2. 電気信号がきちんと伝わらなかったり、伝わっていても送り出せる血液の量が減る
3. 血液の巡りが悪くなる
4. 血液が澱み、血栓が出来る
5. 血栓が詰まって、痛みが出る
全身のうち、到達するまでの道のり=血管が長い分、途中で詰まるリスクが高いのが 足。
そして、動かす部分なので、より症状が分かりやすいのも 足なんです。


…すっかり 長くなりました。
次回、治療と予後(その後)を お送りします。


当院、かなり 経験を積んでいます。
ある日急に足が動かなくなり、ニャーニャーと騒ぐようになったら。
出来るだけ早く、病院へ連れて行ってください。
それは、様子を見ていても、良くならないどころか どんどん悪くなっていく病気。
引っ張れば引っ張るほど、時間もお金もかかるし、命にも関わる病気です。


あなたのご来院、お待ちしています。

猫と心臓の話・序章 冬は循環器に厳しい季節です

冬です。

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心臓や腎臓に不安のある子には、厳しい季節ですね。
アメリカでは、100年近くずっと、心臓の病気が死因のトップなのだとか。
肥満や糖尿病など、心臓に負担のかかっている人が多いことによるもの、だそうですが、気候もきっと大きな要因なんじゃないかと思っています。
だいたい北極のアラスカはもちろん、ボストンやニューヨーク、シカゴなんかも けっこう寒いですもんね。
いや、カナダには 遠く及びませんけども。(北から目線)


そもそも、冬がなんで心臓、腎臓に厳しいのか。
それは、水分の摂取量が減ることと、血圧が上がりやすいから。


冬は寒いので、たくさん汗をかく夏よりも喉が渇きませんね。
そのため、水分の摂取量は少なくなるのが一般的。
水分の摂取量が減ると、どうなるか。


まず、腎臓目線で考えます。
腎臓は、体の水分調節を司る臓器。
たくさん水分を取れば、体から余分な水を捨てるため、薄い尿をたくさん出します。
逆に、水分を取る量が少なければ、体に水を保つ必要がありますから、濃い尿を少しだけ出しますね。
冬は水分を取る量が減るわけですから、濃い尿を少しだけ出すことに。
でも、濃い尿を出すと、腎臓には負担がかかります。
濃い尿とは、少しの液体にたくさんの老廃物が浮いている状態。
たくさんの液体といっしょに流せば 詰まらない量の老廃物も、少しの液体としか流せなければ、詰まってしまうこともありますね。
それと同じことなんです。


次に、血液目線で見てみましょう。
血液は、水分に 血球などがたくさん浮いている状態です。
寒くて、水分を摂る量が減るわけですから、血液の液体部分は減ります。
すると、少しの液体にたくさんの物体が浮いている…という状態に。
おや?どこかでそんな話を見かけましたね。


次々いきましょう。
今度は 血管目線。
血管は、血液の通る管です。
よく、ホースに例えられることがありますね。
血球の浮いた液体、つまり 血液がサラサラと流れるのが 血管。
冬は寒いので、体の熱が奪われないよう、血管はキュッと縮みがち。
つまり、ホースの径が短く、通り道が細くなるわけです。
ここへ、濃い血液が流れるわけです。
通りにくいところへ、通りにくいものが流れようとする、という状態になります。


最後は、心臓目線。
心臓といえば、全身の血液を巡らせる ポンプですよね。
心臓に入ってきた血液を、全身に行き渡らせるため、強く押し出す役割です。
思い返してみましょう。
冬、心臓に入ってくる血液は、濃くて流れにくい血液になっています。
それは、液体の部分が少ないからでしたね。
そのような、流れにくい血液を、心臓が押し出す先は 血管。
血管も、細く流れにくい状態です。
流れにくいところを流すために、心臓はどうするか。
頑張って強く押し出しますね。

つまり、血圧が高くなる、というわけ。


そう。
これこそが、冬に心臓に負担がかかるメカニズムです。
他にも、交感神経が…とか、ホルモンで…とか、いろいろな要因があります。
でも、一番大きいのは、このメカニズムによるものです。


字数がえらいことになってしまいました。
肝心なところへ たどり着く前に、これにて一旦 小休止といたします。


…ドロン!

ONE TEAM

季節の変わり目を 完全に見逃していた1号。
先週の、いきなり寒くなった日に、夏服+カーディガンでちょっと歩き回ったら、ばっちり風邪を引きました…。
10月末には 副鼻腔炎もやったばかり。
いろいろと反省しています。(ガラガラ声で)

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秋の空…ですね


さて。
いよいよ、令和元年の12月。
いまは、亥の月といって、来年以降の 準備をするべき時期なのだそうです。


そのためなのか、年明け以降のトリミングのご予約も 徐々に埋まり始めてきましたよ。
例年、年末とお盆前は ご予約が混み合いますが、今年の勢いも かなりのもの。
特に、当院は、一般のサロンさんでは断られてしまう 持病のある子の専門サロンということもあり、年内に綺麗にして…と、お考えの方は、お早目のご連絡 お待ちしております。
持病があっても、年末年始くらい 綺麗な状態で迎えたいですもんね。


そうそう、当院に長く通っていただいている方には、トリミングに出している間に、大掃除や床のワックスがけなど、わんちゃんのいない間にやりたい作業を終わらせる!
という方もおられます。
かつて、トリミングのあいだに引越しを終わらせた!という 猛者もおられました。
確かに、新居に綺麗な状態で入れますから、とてもいい方法ですよね。


当院では、トリミング前後のお預かり料金はいただきません。
朝一番にお預かりし、診察時間終了ギリギリにお迎えに来ていただいても いただくのはトリミング料金のみです。
(心臓病などで、お預かりの間 酸素室を使う子だけは、例外として 酸素室の利用料をいただいています)


預けたい日程や、トリミングを受けたいお日にちが お決まりの方。
受付枠は、どんどん埋まってしまいます。
お早めにご連絡くださいね。


そんな12月。
今年の流行語大賞は「one team」に決まったのだそうですね。

流行語大賞に「ワンチーム」 トップ10に「タピる」も

 今年話題になった言葉に贈られる「現代用語の基礎知識選 2019ユーキャン新語・流行語大賞」が2日発表され、年間大賞にラグビー・ワールドカップ(W杯)日本代表のスローガン「ONE TEAM(ワンチーム)」が選ばれた。 トップテンには、台風接近に伴い鉄道各社が実施し…


ラグビーワールドカップの興奮は、未だに忘れられませんし、
もっと日本にラグビーというスポーツを浸透させたい!という情熱のもと、選手や監督が スポーツ番組のみならず、ニュースやバラエティなど、幅広い番組に 積極的に出演されている影響もあるのか、
開幕前よりも ずっと身近に思えるようになりました。


そんな中での、流行語大賞選出…
まさに追い風!ですね。


one teamといえば、当院の目指す 獣医療の姿でもあります。
どうぶつ本人、飼い主さま、そしてわたしたち。
トリミングチームによる皮膚や毛の手入れと、それによる暮らしやすさ。
獣医師チームによる治療や予防、そして啓蒙。
そして、医療者でもあり、獣医師よりも飼い主さまにより近い目線をもつ 看護師チーム。
当院で提供している獣医療は、この三位一体からなり、どの要素が欠けても 成立しないものなのです。


ラグビー日本代表は、日本を含め、7つもの国の出身選手からなるチームだったそうです。
お互いの文化や背景に敬意を払い、同じ目標に向けてベストを尽くし合う。
その精神を込めたスローガンが「one  team」…
なんとも素敵。
さすがは 紳士のスポーツですね。


元号「令和」を抑えての大賞ということで、どれほど盛り上がったのか 後世の人々に伝わるといいなと思います。
当院も、ブレイブ・ブロッサムズを見習って、病気にタックル!
ジャッカルさせずにすかさずスイープ!!
そのまま回復へトライ!!!
からの、完全治癒というコンバージョンゴール!!!を 決めていきたいと思います。


覚えた言葉は まるで生まれたときから知ってたかのようにバンバン使っていくタイプです。
にわかファンの 1号でした。


あなたのご来院、お待ちしています。
 

PLE(タンパク漏出性腸症)という病気のはなし

新幹線で福岡へ行ってきました。
なぜ飛行機を使わなかったか。
それは、とにかくものすごく、高かったから…

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博多グルメの筆頭、博多らーめん。

控えめに言って最高でした。

飲み物かのように 替え玉したことをご報告します。


そんなわけで、お尻が割れそうになりながらの長旅をしてきたわけですが、
道中、Facebookで目にはいったのが、PLE こと タンパク漏出性腸症 という病気。
セカンドオピニオン を通り過ぎ、若干 ドクターショッピング気味に 後輩の病院へ駆け込んできた患者さんが、
たまたま PLEをテーマに卒論を書いていた後輩のところで、無事に診断がつき、ガリガリに痩せていたのが改善した…という投稿でした。
TLには、良かったね!というコメントや、PLEはわからん…と嘆く声など さまざまな声が溢れました。


PLEとは、さまざまな原因で、腸からタンパク質が漏れ出てしまうという病気。
そうするとどうなるか。
低タンパク血症の症状があらわれます。
具体的には、元気がない、下痢、痩せていく、免疫力が落ちてしょっちゅう体調を崩す…など。


そう。
PLEには、典型的な症状、「この症状が出たらこの病気を疑え」といった症状がないんです。
そもそも、PLE自体、病名というより、症状名。
タンパク質が腸から漏れ出して、低タンパク血症の症状が出ることを、PLEと呼ぼう、と決めただけで、
なぜタンパク質が腸から漏れ出してしまうか?
ということには、フォーカスしていません。
したがって、PLEの原因もさまざま。
がんや腸炎が多いですが、特発性 といって、原因不明だけれども とにかく便にタンパク質が出てしまっている。
ということも多いんですね。


教科書には、血液検査でタンパク質が低く、便にタンパク質が出ていれば、との記載がありますが、
セカンドオピニオンに来たような患者さんで、血液や便の検査をしないはずがないんです。
それに、タンパク質は基本中の基本の項目。
血液検査は、より素早く検査結果を出すため、どこのメーカーの検査機器でも いくつかの項目がセットなったものに、個別に検査したい項目を加えて使うのが基本です。
症状により どのセットを使うかを決めるわけですが、タンパク質はまずどのセットにも含まれる項目です。
逆に、血液検査でタンパク質を検査しないほうが難しいくらい、本当に基本なんですね。


セカンドオピニオンに来られるくらいですから、検査費用をとにかく少しでも抑えるために 項目を削りまくるより、可能性のある項目すべて 検査をしておくくらいの姿勢がふつうです。
実際、診断した後輩も、運が良かった…と言っていました。


PLEの治療は、対症療法でしのぎつつ、原因を探る…というのが スタンダード。
タンパク質が漏れていってしまうので、補いつつ、なぜ漏れるのか?を探って その原因を叩きます。
直接の原因として多いのは、やはり腸の炎症ですから、まずは炎症を抑えます。
そして、なぜ炎症が起きるか?を探るんですね。
がんや、アレルギーなどの自己免疫疾患が 背後に隠れている場合もありますし、
単純に炎症というより、腸の粘膜の問題だったり、いろいろな原因が考えられます。


目に見える症状は、低タンパク血症の症状だけですから、PLEと診断がつき、タンパクを補えば 目先の症状はおさまります。
一過性のPLE、原因も結局よくわからない…ということもあるので、これで終わってめでたし、となることもありますが、
実は その背後に、もっと大きな 病気が隠れていることがよくあるのですね。
実際、PLEと診断した後輩も、腸管型リンパ腫といって がんの一種が背後に隠れていることを疑い、もっと大きな病院で がんの検査を受けることを勧めたそうです。


わたしたち、臨床獣医師は、目の前の子、目の前の症状から、その背後にある 大きな病気を見落とさず、見つけ出せるよう、いつもいつも努力を重ねています。
PLEではありませんでしたが、何度か転院を経て当院へ来られた方に、「もう、この子のこと、諦めなきゃいけないのかと思ってました」と、言われたことがあります。
生き物ですから、病気によっては、完全な健康体にしてあげることは出来ないかもしれません。
でも、出来るだけ 良い状態でいられるように、その子の病状や 生活パターン、金銭や 看護面での負担を総合的に考えて、いっしょに、ベストな道を 探っていきましょう。


あなたのご来院、お待ちしています。

豚コレラ 改め CSFのはなし 狂犬病ワクチンを打ちましょう!

秋が深まってきました。
秋、人間は、インフルエンザワクチン、花粉症対策のレーザー治療など、やることがたくさん。
秋冬はどうしても病院にいく機会が増えてしまいますね。


特に1号は子連れだし、待ち時間も長いし、帰宅が遅れる分翌日への影響も大きいので、通院は基本的に憂鬱なのですが、どうしてもいくしかないのなら、せめてちょっとしたぜいたくで幸せに、と、病院帰りには外食する派の1号です。
ぜいたくといっても、麺が大好きな子どもたちのせいで、基本的には丸亀うどん。
いや、うちたて茹でたてのうどんは最高に美味しいですよね。

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と言いつつ 丸亀でないうどん。

この硬さでなければ、味噌煮込みうどんではございません。


そんな診察帰りの日、豚コレラが山梨でも出た、というニュースが。
それとともに、大きく書かれていたのが、豚コレラは人間には感染しません!の一文でした。


そうですよね。
狂犬病だって、狂牛病だって、病名に動物の名前が入っているけれど、人間にもうつる病気です。
コレラだってもしや…と、心配になって当然です。


そのため、農水省は改名を決めたそう。
外国と同じ、CSF という言い方で今後は行くのだそうです。


そもそも、わたしたち人間に感染するコレラは、細菌による病気。
ウイルスが原因の 豚コレラアフリカ豚コレラとは、まったく違う病気です。


じゃあなんでこんな紛らわしい名前にしたのか?というと、
たまたま、世界で初めて 豚コレラが出たとき、近くで症状の似た 人間のコレラも流行っていたのだそうです。
それで、よくわからないけど 仲間なのかな?と、つけた名前だったのだそう。
その後、研究が進み、まったく別な病気であることがわかったものの、慣習的に 呼び名は変えずにいた…ということなんだそうです。


たしかに、呼び名が変わると、また新しい病気かな??と、混乱しますものね。
でも、それよりも 豚コレラは人間にうつるのか?という心配をかけないことを 優先した…ということだと思います。
昔、狂牛病と呼んでいた病気も、狂犬病と紛らわしいとか、さまざまな理由により、牛海綿状脳症と呼ばれるようになりました。
最終的には、BSEと呼ばれるようになりましたよね。
IS(イスラミックステート)も、旧称の「イスラム国」は、実在する国家と紛らわしいから呼び方を変え、ISと呼ばれるようになりました。
同じことですね。


この 豚コレラ 改め CSF。
発生してしまった地域では、ワクチンを打って 感染の拡大を防ごうとしています。


悲痛な顔の 養豚農家の方が、絞り出すように「ワクチンを打ちたい」と訴える姿を、テレビでご覧になった方も 多いと思います。
これは、CSFのウイルスが、野生のイノシシに入り込んでいるので、イノシシの糞にウイルスが出てきてしまい、その糞が 土に紛れて、養豚農場に入ってしまう可能性があるからです。


当然、養豚農場では、外から土が入らないよう、二重三重に 対策をしていますが、野生のイノシシが養豚農場のごく近くで 糞をすると、乾いた糞は 粉となって舞い上がり、わずかな隙間などから 入り込んでしまうことがあるのです。
その粉の中には、ウイルスが含まれていますから、粉が入り込むことにより、養豚農場の中にウイルスが入り込んでしまう…というわけ。


そのため、同じ県内や、県境の近くでは、ワクチンを打ちたい。
たとえ、農場の中にウイルスが入っても、周りに被害を広げないよう、ウイルスが広がらないようにしたいんですね。


このように、感染症の爆発的流行、いわゆる パンデミックを防ぐ 最後の砦。
それが、ワクチンの接種です。


CSFは、26年間日本での発生はありませんでした。
でも、今回、26年ぶりに 日本で出てしまった…
それは、他の病気でも 例外ではありません。


わたしたちが一番気にしているのは、やはり 狂犬病
なんと言っても 致死率100%、すべての哺乳類に感染する病気ですから。
出てしまったときの恐ろしさは、致死率50-80%のエボラ出血熱や、種特異性 といって、違う種類の動物にはうつらない CSFやインフルエンザなどとは、桁が違います。
そして、たくさんの人やモノが行き来する ということは、それにくっついて ウイルスが侵入してくる可能性も増えている ということ。
もし、狂犬病が日本に入り込み、そして、発生、流行してしまったら…
どんな恐ろしいことになるのか、想像もつきません。


春、わんちゃんに注射を打ちそびれた方。
秋に、お住まいの市区町村から、ハガキが来ているかと思います。
そのハガキを持って、当院に狂犬病の予防接種を打ちにきてください。
狂犬病は、もはや 対岸の火事ではないんです。
目の前に迫った危機 なんですね。


あなたのご来院、お待ちしています。

蜂窩織炎(ほうかしきえん)のおそろしさ

今年も残すところ2ヶ月となった、今月の頭。
当院院長の盟友、山内アニマルセンターの山内先生が、Facebook上にて、閉院と今後の展開を公表されました。
晴れ晴れとした寂しさもありつつ、新しい門出に胸が熱くなる11月です。


そんなある日。
このニュースに1号は釘付けになりました。

 

フェレットにかまれ感染症に 16年半闘病の警官が死亡:朝日新聞デジタル

 捕獲しようとしたフェレットにかまれて感染症を発症し、16年半の闘病の末、今年1月に41歳で亡くなった大分県警の男性警部補について、地方公務員災害補償基金大分県支部が7月、公務災害と認定していたことが…

 

フェレットに噛まれた警察官の方が、蜂窩織炎で16年半もの闘病ののち、亡くなった…という記事です。

彼は、公園にいたフェレットを捕獲、保護しようとして噛まれ、そこから蜂窩織炎に。
一時期は復職できるほど回復されたそうですが、その後、状態が悪化し亡くなったそうです。
噛まれて病気に…
わたしたちも他人事ではありません。


蜂窩織炎(ほうかしきえん)とは、英語で「フレグモーネ」ともいいます。
皮膚の小さな傷や毛根から入り込んだ細菌が、皮膚の下で大暴れする病気です。
おそろしいのは、菌の入り込む傷口はそれほど大きくないのに、皮膚の下で大きく広がって暴れるということ。
そして、職業柄、動物に噛まれたり 引っ掻かれたりといったケガを負いやすいわたしたち。
リスクがとても高いのですね。


わたしたちがこういった危険に晒されないために、いちばん大切なのは 飼い主さまのご協力です。
噛むかも、とか、怖がりです、と教えていただけると、こちらの心構えも変わります。
油断しているわけではありませんが、診察中、わたしたちは考えるべきことがたくさんあり、注意を払うこともたくさんたくさんあるのです。
事前に情報をいただければ、注意を払う優先順位を変えられるし、できる対策も取れるので。
お互いに安全に かつ、お互いにハッピーな状態で、診察を終えられます。


ときどき、噛みます、とか、怖がりです、などと言うと診てもらえないかも…と、心配される方がおられます。
たしかに、そういった先生もおられるかもしれません。
でも、そういう方針の先生は、診察中に噛んだり、攻撃するそぶりがあった場合、それ以降の診察も 受けられませんから。
結局診てもらえない という点では、伝えようが伝えまいが同じです。
それなら、リスクがわかっていることは 事前に伝えておいて、取れる対策は取っておいてもらう方が お互いにハッピーですよね。


実は、リスクが高いのは わたしたちだけではありません。
どうぶつたちも、とてもハイリスク。


というのは、犬や猫の場合、ケンカをすると、噛んだり引っ掻いたりをやり合うから。
歯や爪による傷は、牛や馬のように蹄で叩いたり蹴ったり、キリンなどのように体当たりでのケガよりも、細菌感染のリスクが高いんです。


また、家で飼われている子たちの場合、おうちシャンプーで しっかり毛根まで乾かさないことにより、傷口ではなく 湿った毛根、皮膚のバリアが崩れたところから 感染することもあります。
野良の子なら、シャンプーをすることはきっと 一生に一度もないくらいかもしれませんが、家で暮らす場合、シャンプーの頻度は野良生活に比べ うんと高いですよね。


蜂窩織炎は、100%防ぐのは難しい病気です。
菌はごく小さな傷や、ふつうに存在する毛穴からも入ってきますから。


でも、かかってしまうリスクを下げることはできます。
それは、どうぶつたちの避妊・去勢をして ケンカの可能性を下げ、歯磨きをして 口の中の菌の数を減らし、シャンプー後にはきちんと乾かして 皮膚の上にいる菌の数を少なくしつつ 蒸れて皮膚の状態が悪くならないようにする という、ごくごくベーシックな方法です。


ふだんの生活から、こういった方法で対策をしつつ、ときどきは 皮膚の状態を見てみてください。
蜂窩織炎を起こし、手足などが腫れ上がっていれば、だれでもすぐにわかります。
でも、そこまで進むと相当な痛みがあります。
腫れ上がってしまう前、少し赤みが広がってきたくらいとか、腫れ始めたころあたりにお薬を使い始めることで、治りの早さも変わってきます。


皮膚の色が いつもと違ってきたら。
ぜひ、急いで病院へ。
あなたのご来院、お待ちしています。

 


 

大雨の備えに、マイクロチップ!

日常生活の疲労を軽減 の文字に、思わずsuper c.c.レモンを手に取ってしまった1号です。
育児に、仕事に、家事に、全力の皆さま。
お疲れ様です。
一緒に、シュワシュワーっ!とリフレッシュいたしましょう。


そんな今日この頃。
大雨の被害から、少しずつ 立ち直る方向、前を向く方向へと向かっているようです。
明日からの三連休はボランティア三昧だ!と、張り切っているとおぼしき方を、駅でたくさん見かけました。
体力ゼロで鈍臭いという、行けば必ず足手まといとなるであろう1号は、自分自身のかわりにお財布からボランティアを数名派遣。
全力で働いていただいた人たちですから、間違いなくいい仕事をしてくれるはず。
私の代わりに頑張ってきてね。


そんな日々。
少しずつですが、マイクロチップについてのお問い合わせが増えてきました。


今回のような災害時、被災して飼い主さまとはぐれてしまったときにも、再会できる可能性の高い個体識別方法。
それが マイクロチップです。 
インターネットのニュースサイトなどでも、そういった啓蒙記事をよく目にするようになりました。


マイクロチップは、小さなガラスチューブに入った バーコード=チップを身体の中に入れる 個体識別法。
マイクロ というだけあり、とても小さなガラスチューブですから、入れた後に疼くとか、気にするといったことはありません。
どうぶつたちの場合、皮膚の下に皮下織といって、人間にはない 大きなアソビがあります。
ここの中は無感覚ゾーン。
この中へ入れるので、私たちでいう 傷口に小石が入っているような痛みはないんです。
入れた後、すぐに触っても、気にもしない子がほとんどなんですよ。
当院では、基本的に わんちゃんには 首に、ねこさんには 肩に入れています。
これは、皮膚のアソビが もっとも大きな場所を選んでいるから。
いわば、二重に保険を掛けているような状態です。


マイクロチップの入ったチューブは ガラス製。
アレルギーの心配もほぼなく安全なんです。
さらに、しっかりと覆われているので、抜け落ちたり 読み取れなくなる可能性もとても低いのです。
ガラスでできていても、ごく小さく、また、中にチップも入っています。
割れる可能性が全くゼロではありませんが、破損するリスクはとても低いのですね。
ですから、気を使うことなく 暮らしてゆけます。


鑑札や首輪、ハーネスなどを付けていても、大雨などで被災した場合、外れてしまう可能性があります。
でも、身体の中に入れる マイクロチップなら、被災しても身体の外に出てしまうリスクは ほぼゼロ。
現状、身元を証明する もっとも重要な方法が マイクロチップなんです。


当院では、マイクロチップは 安心の老舗メーカーのもの。
最近の新規参入メーカーでは、不具合や番号の取り違いの不安があります。
少しでもリスクを減らしたいから、老舗メーカーのものを選んでいるんです。
それに、原材料や形など、老舗メーカーであれば 長年の蓄積、実績がありますから、より確実ですよね。
安心のために入れるマイクロチップですから、安心のうえにも 安心を、と考えています。


大雨のほかにも、いろんなシチュエーションで どうぶつたちは迷子になってしまうことがあります。
そんなときに マイクロチップが入っていれば、帰ってこれる可能性が高くなりますから。


当院では、避妊・去勢や、歯石取りなど、麻酔をかけるついでにマイクロチップを入れることもできますし、
ふだんの診察のついでに 入れることもできます。
所要時間は 予防注射と変わりません。


気になったときが、入れ時だと思いますよ。
あなたのご来院、お待ちしています。