はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

秋田犬のプレゼント

花粉症について、熱い記事を書いていた ここ最近の1号。
ですが、聞き捨てならないニュースが飛び込んできました。
ごうがーい!ごうがーい!!

というわけで、秋田犬について。
平昌五輪のフィギュア女子金メダリスト、アリーナ・ザギトワ選手に、プレゼントとして秋田犬の子犬が送られたそうですね。
いままでの日本の傾向からして、これを機会に 秋田犬が流行してしまわないとも限りません。
事前に警鐘を鳴らしたいと思い、この記事を書いています。

先にお伝えしておきますが、1号は秋田犬が大好きです。
嫌いで悪口を言っているわけではありません。
が。
秋田犬は、特殊な犬です。
アリーナ・ザギトワ選手のように、写真を見て一目惚れ→飼いたい→飼う!となっている人。
ちょっと待ってください。

まず、秋田犬のあのフサフサモコモコ。
あれは秋田の厳しい寒さに耐えられるように生える毛です。
マタギといわれる猟師といっしょに、雪深い山に入って夜を過ごすような生活をする犬のための毛です。
東京の夏には耐えられません。
東京で秋田犬を飼うのなら、かれらが快適に過ごせる冷房代を出す覚悟が必要です。
電気は最大アンペアでは足りませんから、業務契約になるでしょう。
1台では、壊れた時即命に関わりますし、おそらく冷房性能が足りませんから、大きなエアコンを複数台設置しなくてはいけません。
買ってきてつけられるようなサイズでは厳しいですから、おうちをリフォームする覚悟も 必要ですね。

つぎに、秋田犬は大きくなります。
日本犬最大の犬種が秋田犬なのです。大人になったら30kg超えは当たり前の大型犬です。
大型犬が本気を出したら、そこそこ鍛えた男性でも引っ張られます。秋田犬は猟犬ですから、本気になると見境がなくなるところがあります。
制御できない人が飼うと、たいへんなことになるでしょう。
また、秋田犬に限りませんが、大型犬は病院通いが多いです。
時間的にも、費用的にも、体調を崩したときにきちんと病院に連れていける人でないと、お互いが不幸になります。

たとえば、都内在住で小学生ふたり、日中パートのおかあさんと終電まで働くおとうさん。家は持ち家で小さい庭、週末は家族で遊びに行ったり、のんびり家で過ごしたり。
そんな家庭で、覚悟も準備もなく 秋田犬を飼ったら どうなるでしょう。
まず、子どもたちは二人とも ケガだらけになります。
犬に倒されたり、突き飛ばされたりがしょっちゅうです。
二人のうちどちらかは、骨折レベルのケガを何度もするかもしれません。
それから、おかあさんのパート代は、全部病院代で使い果たすことになります。もしかすると、おとうさんの残業代も。
子どもたちの病院代、犬の病院代、犬がケガをさせた人の病院代も払うことになるかもしれませんから。
そして、終電まで働くおとうさん。
週末は犬を連れて病院通いが定番になります。
おとうさんしか犬を制御できませんから、週末家族で遊びに行くのも 家でのんびりももうできません。
そして、犬自身。
おとうさんのいない平日は、危ないので散歩にはいけません。
仕方なく庭に放されていますが、狭いのでヒマを持て余し、吠えたり家屋をキズだらけにしたり。
こんなはずじゃなかったのに。
微笑んでいるみたいな顔で、おかえりなさいとそっと迎えに来てくれる大きな犬。
フワフワの毛に顔をうずめると、温かい舌でそっとなめて愛情を伝えてくる。
ああなんてかわいいんだろう、秋田犬ってほんとうに最高。
そうなるはずだったのに…

秋田犬はもちろん、犬を飼おうと考えている みなさん。
もう一度、よく考えてください。
かわいいだけでは犬は飼えません。
散歩、しつけ、うんちやおしっこの始末、ごはんの世話、ワクチンの接種や登録に、毛の手入れ、健康管理。
ありとあらゆることが すべて飼い主の責任です。
暑くても、寒くても、雨の日も、雪の日も、花粉やPM2.5のひどい日も、足を骨折している日も、インフルエンザにかかって一家全滅した日も。
それでも犬の世話ができますか?
犬を飼うこと、犬と暮らすこと。
そこに、そこまでする価値を見いだせる人だけが、犬と暮らせるのです。
かわいいから。
犬を飼ってみたいから。
犬がいる暮らしってなんか素敵。
そんな理由で、不幸な犬を作ってはだめです。

犬を誰かにプレゼントしようとしている方。
犬をプレゼントすることは、もらった人の人生の一部を あげた犬のために使うことを強制することです。
もう一度、よくよく考えてください。

繰り返しになりますが、当院も1号も ザギトワ選手はもちろん、彼女に秋田犬を贈った人を 批判する意図はありません。
ただ、犬が、中でも 大型犬が好きでたまらないから、不幸になる犬や 犬のせいで悲しい思いをする人をなくしたい。
そう願っています。

セカンドオピニオンのその後で

平昌オリンピック、盛り上がっていますね!!
連日のメダルラッシュのおかげで、選手本人はもちろん、喜んでいる人の顔をテレビでたくさん見かけるようになり、嬉しい1号です。

今回は、前回の 「セカンドオピニオンの流儀」の後編をお届けします。
というのも、コメントや お声がけをいただいたから。
セカンドオピニオンに興味があるという方は多いのですが、その後どうなるの?と疑問に思われる方も多いようですね。
紹介先の病院、一度や二度行くのは都合がつくけれど、毎週通うとか、これからはずっと紹介先で ということになると正直きついから、セカンドオピニオンを取りたいけれど取れない…といったご相談もありました。

実は、セカンドオピニオンというのは、ご紹介してハイ終わり…とはならないことがほとんど。
受ける病院は、たいてい広くて大きいので、通いにくい場所であることが多いです。
都内の比較的便利なところにある病院でも、駐車場がまさかの3台とか、けっこうあります。
また、先生もたくさんの受診希望の患者さんを待たせておられることが多く、先生でないとダメな診断や処方はともかく、経過を観察するための定期通院や、決まったお薬のお渡しは、紹介元の病院でというのが基本。
セカンドオピニオンから、完全に紹介先へ転院となることのほうが、ずっと少ないのです。

そんなわけで、ご紹介先の病院さんを受診され、他の先生のご意見を聞いたり、手術や放射線治療などの高度医療を受けたりしたあと、定期通院や決まったおくすりの処方などは、当院で行うことが多いのですが、
「紹介先の先生はどんなご意見でしたか」
「どんな薬を処方されましたか」
「治療方針はどのようになりましたか」
など、当院に戻ってこられた患者さまにお聞きすると、「先生が連絡するとおっしゃっていたので…」とおっしゃる方がときどきいらっしゃいます。
確かに、そうなのですが、ご紹介先の先生は多忙でいらっしゃることがとても多いです。
病院にもよりますが、海外でのセミナー、雑誌の記事や書籍、論文などの執筆、学会出席、講演と、たくさんの受診希望の患者さんの診察・治療のほかにも、さまざまな仕事を抱えておられる先生がほとんどです。
こういった先生に診ていただくと、やはり紹介もとの病院=当院などへの連絡はどうしても後回しになりがちなんですね。
セカンドオピニオンで受診されたら、おくすりの内容や治療方針など、ぜひよく聞いてきていただきたいなと思います。

 

ご協力、よろしくお願いいたします。

セカンドオピニオンの流儀

今週月曜日に放映された、「プロフェッショナル 仕事の流儀」。
http://www.nhk.or.jp/professional/2018/0129/index.html
戌年ということで、ワンちゃんスペシャルと題し、犬に関連したプロフェッショナルたち3人の 特集回でした。

全国4万人近くの獣医師の中から取り上げられていたのは、小林哲也先生。
公益財団法人 日本小動物医療センターの理事長、埼玉の日本小動物がんセンターのセンター長を兼任され、日本獣医生命科学大学の非常勤講師でもあります。
この 日本小動物がんセンター、埼玉県所沢市にあり、当院からもセカンドオピニオンでご紹介したことが何度かあります。
小林先生と直接お話ししたことはないのですが、1号の同級生や後輩も勤務していて、勝手に親近感を覚えている病院さんでもあり、「日本小動物がんセンターでセカンドオピニオンを受けたい」といったお申し出があると、張り切って予約を取ってしまいます。
他にも、当院からセカンドオピニオンでご紹介することの多い病院さんといえば、武蔵境の日本獣医生命科学大学や、東京農工大学、ER府中など。

ただ、セカンドオピニオンで 日本小動物がんセンターや大学病院をご紹介することは、昔より多くはなってきましたが、まだまだ少ないのが現状です。
がんや難病をかかえる子と暮らす方のブログなどを拝見すると、
かかりつけ医に セカンドオピニオンを取りたい と言うと、わたしの診断が信用できないのか!?と思われるのではないか?
そんなご心配をされている方が多いようですね。
実際、当院でも、「セカンドオピニオンを取りませんか」とおすすめすると、「先生から勧められるとは思いませんでした」と驚かれる飼い主さまもいらっしゃいます。

当院では、セカンドオピニオンについて、「当院とはちがった見方での意見をもらえる」というふうに考えています。
そこに、優劣は存在しないんですね。
当院は わんちゃんやねこさんの診療に関して豊富な経験があります。ひとつひとつの症例に真摯に向き合っていくうちに、当院のカラーというものができていくので、経験のぶんだけ 当院の独自色は濃くなります。
高度診療施設をはじめとした他院さんで診ていただくことで、この当院のカラーに影響されない(他院さんのカラーには影響されていますが)診断を受けられます。
番組の中で、小林先生も同じようなニュアンスのことをおっしゃっていましたが、当院も 治療方針はわたしたち獣医師が決めるものではないと考えています。
あくまで、飼い主さまご自身が決めるもの・・・という考え方なんです。
その、治療方針を決めていただく 手がかりのひとつとして、わたしたちがお示しできるのが、病名や 獣医師としての意見です。
なので、手がかりは多い方がいい。
当院はこういう考え方なので、セカンドオピニオンを取っていただくことには大賛成ですし、こちらからお勧めしたりすることもあるんです。

セカンドオピニオンを、より権威のある病院で診断名を答え合わせすること のように捉えられている方もいらっしゃるかもしれませんね。
そういう方は、思い悩んだ挙句、かかりつけ医にはなにもいわずに そっと転院するようなかたちで セカンドオピニオンを取りに行かれることも多いようです。
でも、そういった形でのセカンドオピニオンはあまりおすすめしません。
というのも、費用も時間も 無駄になってしまうことが多いからです。

セカンドオピニオンのためには、通常、紹介状をご用意します。
症状や病気の経過、検査の情報、お薬の合う・合わないなどの体質といったさまざまな情報を、紹介先の病院さんに伝えるためのものですが、これがない状態で受診してしまうと、検査をぜんぶやり直さなくてはならず、内容によっては数週間・数万円かかることもよくあります。
症状や病気の経過、投薬などは、飼い主さまの日記や記憶などで辿れると思いがちですが、検査結果や投薬と連動することも多く、肝心な情報が漏れてしまっては意味がありません。
せっかくセカンドオピニオンを取るのなら、最短時間・最小の費用でいきたいですから、間違いのない 紹介状を持って受診されることをおすすめします。
他院さんについては よくわかりませんが、セカンドオピニオンに関する 当院の流儀は こんな感じです。

ファーストオピニオンから、セカンドオピニオンまで。
あなたのファーストコンタクト、お待ちしています。

コリネバクテリウム・ウルセランス?あたらしい伝染病のはなし

2018年になりました。
元号が1年間ずっと「平成」の最後の年です。
「平成」のうちにやりたいこと、行ってみたいところ、いろいろなことを実現していくような年にしたいですね。


さて、そんな 平成30年。
1月に厚生労働省から、衝撃的な発表のあった、ひとつの病気があります。
「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」という病気です。
これは、赤ちゃんが生後3ヶ月になってから何度か打つ「四種混合ワクチン」で予防できる「ジフテリア」という病気や、1歳になるまでに打つ「BCGワクチン」で予防できる「結核」という病気に近いもの。
原因になる菌が親戚同士にあたります。
この「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」という病気、平成25年から29年の5年間に わかっているだけでも日本で25例かかった人がいる病気です。
概算で1億3千万人近くが住んでいる この日本で、たった25例?0.00002%の人がかかる病気なんて、大したことないんじゃ・・・ と、あなどってはいけません。
この病気は 結核ジフテリアとはちがい、そもそも報告義務のない病気。
にもかかわらず、症状や状況などから、診察した先生などが「これは 報告しておいたほうがいいだろう」と判断して 報告されたもの。
つまり、よくある症状・ありがちな状況ではない。言い換えれば、お医者さんが「おやっ?」と思うような病気 ということなんです。
厚生労働省の発表は、この病気で、平成28年に亡くなった方がいらっしゃる というものでした。
彼女は、3匹の外猫さんにエサをあげていたことがわかっており、この子たちに接触したときに 菌に感染したと考えられています。


そもそも この菌は、ジフテリア結核とは異なり、常在菌=どこにでもいる菌 です。
どちらかといえば、人間の暮らす環境よりも、牛など家畜の暮らす環境に多くいる菌で、牛の乳房炎などの原因になることが多いので、わたしたち獣医師にはなじみのある菌です。
(余談ですが、獣医学部の現5年生、来年度に繁殖学の試験を受験予定の学生さんへ→Corynebacterium ulceransは、みなさんが受ける試験で出題される可能性が例年より高いように思いますので、押さえておいたほうがいいかもしれません。Corynebacterium属菌といえば、牛の乳房炎ですよね。乳房炎は畜産業に与える経済的影響が多いですし、もともと出題頻度の高い分野でもありますから、みなさんふつうに押さえてはいると思いますが。今回こうして話題となった菌ということで、例年よりも取り上げられやすいと思います。ただのOBのカン、ですけどね)
じゃあ、牧場や農場にいくときだけ 気をつけていればだいじょうぶなの?というと、そうではありません。
わんちゃんやねこさんの 皮膚病のあるところからも、比較的よく取れる菌ですし、風邪っぽい症状のある子どうしで 菌をうつしあってしまうこともあります。
中でも、外猫さんは ケンカ傷や擦り傷があることも多く、おうちから出ない子にくらべて 皮膚病や風邪をひくことが多いので、菌を持っている可能性が高いんですね。


厚生労働省も、
・外で出会った子はもちろん、ペットや牧場で飼われている家畜も含め、どうぶつに触った後は、手洗い・うがいなどをして清潔にする
・キスや食べ物の口移しなどの、濃厚な接触を避ける
など、心がけたほうがいいことを呼びかけています。
ごく普通のことではありますが、かわいいとついキスしてしまったり、冬場で水が冷たいと ついつい手洗いが雑になってしまったり。
いたずらに恐れたり、神経質になったりする必要はありませんが、亡くなった方がいるとなると、やはり気をつけたほうがいいことは間違いありませんから。


2018年を ハッピーに過ごすために。
憂いは少しでも 減らしておきたいですよね。
うがい、手洗いを徹底しつつ、健康管理に努めましょう。
小さな家族の体調不良は、当院へご相談くださいね。
あなたのご来院、お待ちしております。

まさか!?猫さんがわんちゃんを逆転!

戌年目前の この時期に、驚きのニュースが飛び込んで来ました。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2017122201001637.html

一般社団法人 ぺットフード協会 http://www.petfood.or.jp/index.html というところが発表したニュースで、実態調査の結果、猫の飼育数が犬を60万匹上回ったというのです。
ここ数年の傾向として、ねこさんの飼育数は減っていないのに対し、わんちゃんは減っており、今年ついに逆転したのだそう。
わんちゃんは、ねこさんに比べて散歩などの手間や費用がかかる、集合住宅で禁止されているなどの理由で、飼う人が減ってきているのだとか。

1990年代以降、ペットブームといわれた日本では、漫画「動物のお医者さん」の影響で大流行したシベリアンハスキー、芸能人が飼っていると流行り出したダックス、CMがきっかけで大ブームになったチワワ、トイプードルなど、数年単位で 特定の犬種が大流行してきました。
たしかに、最近は、いっときほど 同じ犬種の子犬ちゃんが毎日毎日何家族もどんどんどんどん来る というようなことは少なくなったな・・・
と感じていましたが、ついに ねこさんと逆転したんですねえ。
今は空前の猫ブーム、などと報じているマスコミもあるようで、そういった報道によれば、アメリカン・ショートヘアーやスコティッシュ・フォールド、マンチカンなど、いわゆる「鼻ぺちゃ」のねこさんが今は人気なのだそう。
わんちゃんの大ブームほどの流行っぷりではない気はしますが、たしかにペットショップの店頭などでは 鼻ぺちゃのねこさんを多く見かけます。

ねこさんは、比較的「流行っているから」という理由で飼う方は少ないように思いますが、その分「飼いやすそう」「手がかからなそう」と気軽に飼い始めてしまう方が多いように思います。
わんちゃんは そうはいってもお散歩やお世話のことなど、いろいろ考えて飼い始めるという方がほとんどですが、ねこさんはいまだに「飼ってて手に負えなければ、外へ行けるようにしてやればいいや。運動もできるし、自分で狩りもするだろうし」と、安易に飼い始める人が一定の割合でいます。
そういった人は、「むしろ、外へ出かけられない方がかわいそう。狭い家の中でなく、外で自由に遊べるほうが猫も幸せだろう」とまで言い出すことも。
でも、外へ出るほうが、ねこさんにとっては危険なんです。
交通事故に遭ったり、知らない猫と喧嘩になったり。
おかしな人に捕まって酷い目にあわされるかもしれません。
変なものを拾い食いして、病気になるかもしれません。
寒いから暖を取ろうと、車のエンジンルームに入り込んで 大怪我をするかもしれません。
どれもこれも、家の中から出なければ起こらないことですよね。

これからも、わんちゃんの飼育数が減り、ねこさんは増える傾向は続きそうです。
何かペットが飼いたいし、ねこさんは手軽そうだから と飼い始めるのでなく、いろいろ考えた結果ねこさんが一番飼いたいから!と 飼い始める人が増えてほしいなと思います。

そうして、飼い始めた かわいこちゃんの健康管理は、当院にお任せください。
あなたのご来院、お待ちしています。

 

パンダと動物愛護法とクリスマス

いよいよ、来週19日から始まるシャンシャンの観覧。
1日400組限定のところ、最大で144倍の応募があったとか。
同じジャイアントパンダを飼育している和歌山アドベンチャーワールドでは、2014年・2016年と出産が続いたのに対して、上野動物園では2012年に生後1週間で亡くなってしまった子以降、出産がありませんでした。
上野で生まれた赤ちゃんパンダに会いに行けるのは実に29年ぶりとなるのだそうですから、この盛り上がりも納得です。
さて、シャンシャンの観覧開始は、生後半年を待って 日にちが決まりました。
お母さんシンシンにも、赤ちゃんのシャンシャンにも負担にならないようにと、生後半年まで大事に大事に育てられてきたわけです。
彼らのような、動物園で飼われるどうぶつというのは、種の保存(絶滅しないように保護する)、生態の解明(どんなふうに暮らしているのか、一生を通して観察する)、そして 展示(たくさんの人に観覧してもらい、啓もうしたり教育に貢献したりする)と、さまざまな役割を果たします。
生まれてからずっと、動物園動物の重要な役割のひとつである 観覧を犠牲にして、もっと大きな役割=種の保存に専念してきたシャンシャンが、観覧がはじまることで 動物園動物として 新しい一歩を踏み出すことになったわけです。
ただ シャンシャンに会えるようになった!うれしい!というだけではない、とても大きなことなのですね。

では、わたしたちの家族、犬や猫はどうでしょう。
ペットショップなどで展示され、販売される子犬や子猫は、動物愛護法で、どんなに若くても生後45日以上経っていないと展示してはいけない、と決められています。
ここでいう「展示」というのは、シャンシャンの「展示」とは違う意味で、どちらかといえば、商品として陳列されることに近い意味合いです。
これは、平成24年に改正、25年に施行された法律で、施行から3年たったら「45日」から「49日」に延びることになっていました。
平成25年に施行されていますから、平成28年=去年から、ペットショップなどで展示・販売されている子は、どんなに若くても生後49日以上経っている子たち、ということなんです。

生後49日というと、2か月になる前(2回目の 誕生日とおなじ日付を迎えるよりも前)ですよね。
人間の赤ちゃんでいうと、まだ予防接種も打てるようになる前の時期(ロタなど例外もあります)ですし、カンガルーでいえば、お母さんの袋の中を出て生活できるようになる生後8か月まで、あと半年以上もあります。
寿命の短い 犬や猫は、成長も早いので、一概には言えませんが、生後2か月未満ってそれくらいなんだな・・・と なんとなく感じます。
たしかに、若いころに家族に迎えることで、人間と暮らすことに慣れやすかったり、そのおうち独自の生活習慣を受け入れやすかったりと、いい面もたくさんあります。
でも、あんまり若すぎるうちに お母さんやきょうだいと引き離してしまうと、その後問題行動につながることも多いもの。
ときどき、ペットショップなどで、「とにかく若いうちに連れて帰りたい。1日でも若いうちに、若ければ若いほどいい!!」と言っている方を見かけますが、パンやバナナを買うんじゃないんだから・・・だいじょうぶかな・・・と心配になることがあります。

さらに心配になるのが、値札に大きく書かれた「飼いやすい子です。クリスマスプレゼントに最適!」の文字。
だいぶ減ってきたと思っていたのですが、いまだにあるんですね。
クリスマスプレゼントに子犬や子猫。

犬の交配は、晩夏~初秋にシーズンが来ます。
そこから2か月くらいの妊娠期間があり、生まれた子が2か月近く経って 店頭に並べられる時期になるの、ボーナスが出てクリスマス前くらいの ちょうどいまの時期。
いちばん若く店頭に出せる時期が、いちばん値段が高くつけられますから、お店としてもここで売りたいというのはよくわかります。
年末年始、スタッフも減るし、お店がお休みなのに子犬や子猫の世話をするためだけに出勤するのもイヤだし、高く売り切っちゃってのんびりしたいなーーー
そんなひどいお店ばかりではないと、同じどうぶつを相手に仕事をしている身としては信じたいのですが、うーん・・・という売り方をしているお店があるのも事実です。

ジャイアントパンダという生き物を代表して ある意味で「公務」に従事しながら上野で暮らすシャンシャンと、家族の一員として暮らす わんちゃんやねこさん。
立場はちがうけれど、私たちを幸せにしてくれるという点では、どちらも同じです。
そんな彼らの幸せについても、ぜひ考えてみてください。

あなたの家族の幸せの一環、健康管理は当院がお手伝いします。
あなたのご来院、お待ちしています。

戌年の年賀状。写真撮影のコツ、教えます!

来年は戌年ですね。
12年に1度の せっかくの機会だから、愛犬を年賀状に!と考えるみなさんも 多いのではないでしょうか。
家族みんなで 気合を入れてプロに撮ってもらうという方、到底アマチュアとは思えないような すごい機材をお持ちの方、いろんな方がいらっしゃいます。
せっかくの晴れ姿、どうせならいちばんキレイな姿で!と考える方が多いからでしょうか、最近 トリミングの枠が着々と埋まってきております。
もともと、年末年始は ご予約が多く、混みあうのですが、今年はさらに早いようです。

当院でのトリミングは、皮膚病、心臓病やてんかん、がんの子など、一般のサロンではトリミングが受けられない 当院患者様限定で行っています。
数分おきに休み休み進めなければならない子、酸素を使いながらのほうが良い子、獣医師が付きっきりで トリミングというよりはもはや診察になってしまう子…いろいろな状態の子が来ます。
混み合うと、それぞれの子に負担がかかりやすくなったり、トリマーさんだけでなく 獣医師の対応が追いつかなくなってしまう可能性があるため、予約の枠が限られます。
写真の撮影日がもう決まっていたり、家族みんなの都合が合う日はこの日だけ!など 日にちに制約のある患者様は、ぜひ お早めにご連絡を。

さて、そんな 戌年のご家族写真。
プロに頼むほどじゃないし、機材といってもふつうのデジカメやスマホくらいしかないのよね。でも、せっかくだし、うちの子の写真も…
なんて、お思いの方。
ちょっとしたコツを押さえて撮れば、見違える写真が撮れるんです。

ポイントは2つ。
まず、1つ目は、被写体の目にピントを合わせるということ。
目にピントがあっていないと、なんとなくボヤけたり、違和感のある写真になりがちです。
たとえば この写真。
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全体的にピントを合わせているので、なんとなくボヤけています。

主役が誰だか よくわからないというか。
主題が明確でない、違和感の出やすい写真になってしまうのですね。
集合写真のように、全体のようすを伝えるのならいいのですが、年賀状のように うちのこの子を見て!という使い方をするなら、イマイチになってしまいます。
そうはいっても、オートフォーカスでカメラが勝手にピントを合わせるから…とお思いの方。
オートフォーカスは、一点集中でピントを合わせることは苦手なことが多いです。
フワーッとこのへん、という感じでピントが合うものが多いので、うーん、なんだかなあ…という写真が撮れがち。
最近のカメラやスマホは、ピントを合わせたいところにタッチすれば、そこにピントが合うようになっていますから、ぜひそのひと手間をかけ タッチしてからシャッターを切ってください。

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こんなかんじで
もし、そういったタイプのカメラやスマホをお持ちでないのなら、微妙に手の角度や伸ばし方を変えて 何枚も撮りましょう。
何枚も撮った中に、ピタリとピントの合うものがあるはずです。

次のポイントは、<b><u>明るく撮る</b></u>ということ。
年賀状とかでは特に、背景を消して わんちゃんの顔だけを切りだして使ったりしますよね。
このときに、写真が暗いと、なにがなんだかわからないことになりがちです。

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この対策として、いちばん手軽なのは、スマホの無料アプリ、LINEやSNOWで写真を撮ること。
あの手の、勝手に美白補正のかかるアプリを使えば、ふつうに撮っていても 年賀状映えする写真が撮れやすいです。

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毛の白い子など、写真全体が白っぽくて何がなんだか…になってしまったら、写真のアプリから自動補正を使いましょう。
iPhoneなら、右上に出る星と棒のマークをタッチ。
これでいい感じになるはずです。
スマホでなくデジカメで撮りたい という方は、画面の中でも影になった暗めの場所をタッチするか、ピントを合わせたい箇所をタッチして そのままフリック。
機種によって異なりますが、タッチした指を離さず画面上で上下左右どれかの方向に振れば、明るさが変わるはずです。

以前、写真がうまくなりたくて カメラマンバイトをしていたとき、現場で出会ったポートレート撮影の職業カメラマンの方は、いい写真を撮るにはまずいい表情を引き出すこと、と教えてくれました。
それを一度のチャンスで写しとるのがプロだと。
プロのように、一度のチャンスでベストショットを決めるのは難しいかもしれませんが、わんちゃんやねこさんのいちばんいい表情を引き出せるのは 飼い主様なんです。
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いい表情?
一度で撮ろう!と思わず、何枚も撮るうちに 年賀状にふさわしいベストショットが撮れますよ。

表情はだいぶ引きつってしまうかもしれません…が、診察室や待合室で お写真撮影させていただくことも。
あなたのご来院、お待ちしています。