はい、栗本動物病院です。

東京都小平市の栗本動物病院です。ときどき更新しています。

台風のあとは…足下にご注意!こんなときには、すぐ動物病院へ

すごい台風でした。
海まで30分の 1号家。
川も近いので、聞いたことない音がスマホから何度も流れ、見れば 避難準備情報の通知だったり。
最初に鳴ったとき たまたま駅にいましたが、何十台ものスマホから 同時にあの音…
地震のころを思い出して ちょっとドキドキしました。

さて、こんなとき、「散歩から帰ったら、いつの間にか足を引きずっていて…」とか、「キャンと叫んでから足を痛がってるみたいなんです」なんて方が増えます。
台風のように、気圧が短時間で上下するときは、神経や関節に障ることも多いもの。
いつもの腰痛かな?と、様子を見てしまいがちなのですが。
実は、早く病院へ連れて行ったほうがいい場合もあるんです。

わんちゃん、ねこさんは、足のうらの肉球の間に 毛が生えています。
この毛に、とがった木の実や 割れたガラス、トゲなどが絡まってしまうことがあるんです。
台風など、強い風が吹いたあとは、特にこうしたゴミが落ちている確率が高くなり、とても危ないんですね。
毛が生えている ということは、蒸れやすいわけで、もし 刺さってキズができてしまった場合、ばい菌が入って膿んだり、治りにくくなってしまう確率が高いんです。

台風など 強い風が吹いたあとに お出かけして、気づいたら足を引きずっている。痛がっている。
そんなときは、早めに病院へ連れて行きましょう。
いつもの関節痛かな?嫌だこの子ももう年かしら、神経痛かも…
そう思って 様子を見てはいけません。
早く行けば そのぶん処置も軽く済みますし、薬も軽いものでいい場合が多いですから。
なまじ 様子を見てしまって、奥深くまで トゲやガラスが入り込んでしまうと、手術して取らないといけなくなってしまうかもしれません。
そうなれば、時間もお金もかかるうえに 長く痛い思いをさせてしまうことになります。

足のうらにトゲが見えない、キズが見当たらないからと 様子を見てしまう方もいらっしゃいますが、実はとっても見にくい角度で刺さっていたり、そもそも嫌がって見せてくれない子も。
特に、柴ちゃんなど 和犬の血が入っている子は、弱点である足のうらを触られたり 見せることすら嫌がる子も多いんです。
病院で、特殊なライトを当て、プロの看護師さんにしっかりと抱っこしてもらってはじめて見つけられるような 小さな小さなトゲやキズが、こじらせると足全体を腫れ上がらせてしまうことにつながるかもしれません。
強風のあと 足を痛がってる…
そんなときは、できるだけ早く病院へ連れて行きましょう。

あなたのご来院、お待ちしています。

 

ペットからSFTSをうつされる!?こんなときは病院へ!

ついに 出てしまいました。
マダニ感染症「犬からヒト」初確認 徳島の男性、既に回復 http://mw.nikkei.com/sp/#!/article/DGXMZO22077920Q7A011C1CR8000/

当院ブログでも、今年の8月、9月に連続して記事をアップしていた この病気。
SFTS、日本語では「重症熱性血小板減少症候群」という病気です。
今まで、どうぶつからヒトにうつった証拠はない とされてきた病気ですが、昨日10日、ついに厚生労働省が どうぶつからヒトにうつったことが確認されたと 発表しました。
この新しい、それでいて死亡率3割にもなるという報告もある おそろしい病気のことは、ニュースでも大きく取り上げられており、「体調不良のペットと濃厚な接触は避けて」「ペットが体調を崩したら、まずは動物病院へ」などと呼びかけられています。

でも。
濃厚な接触って、なに?
ペットが体調を崩したらっていうけど…どんな症状?よくわからないんですけど?
という方も 多くいらっしゃるのではないでしょうか。

SFTSの話をするうえで、濃厚な接触とは、キス・顔をうんと近づける などのこと。
どうしてそれを避けなくてはならないかというと、SFTSのウイルスは ヨダレやうんちの中にいることが多いからです。
キスするつもりはなくても、顔を近づけると ペロペロと舐められてしまったりすることがありますね。
そうすると、ウイルスの入ったヨダレが 鼻や目、唇などの粘膜について、そこからウイルスが体に入り込んでくることがあるんです。
キスすれば、口と口とがふれあうわけですから、より直接的に ウイルス入りのヨダレが粘膜についてしまう可能性が高くなります。

だいじな家族が 体調を崩したと感じると、つい心配で 顔を近づけてジッと観察してしまったりしますよね。
そういったことをすると、ウイルスが体に入り込む可能性が高くなります。
体調を崩した というのは、SFTSの場合 貧血や消化器症状が出るといわれています。
貧血は、いつもより元気がない、口の中や白目が青白い といった、分かりづらい症状のことが多いのですが、消化器症状とは、吐いたり下したりのこと。
SFTSは典型的な症状がないといわれますが、下痢は比較的多く出る症状ですから、下痢が出たときは、早めに動物病院へ。
そして、その下痢を、ついじっくり見分してしまったりすると 危険かもしれません。
サッと取って 病院へ持っていきましょう。

SFTSは、元来、マダニからうつる病気です。
つまり、マダニの対策をしっかりしていれば、あまり恐れる必要のない病気。
わたしたち人間は、やぶや草むらに入るときは長袖・長ズボン。
ペットたちには、フロントラインやネクスガードなどで対策できます。
マダニは、気温が下がってくると活動は鈍ってきますが、東京の平均気温をみると 4月上旬から11月下旬くらいまでは活動できてしまいます。
もう秋だから…と、油断して SFTSに感染しないために。
フロントラインも、ネクスガードも、さいごまできちんと使いましょう。
もうなくなりそう なあなたは、お早めに当院へ。
あなたのご来院、お待ちしています。

 

お月見団子にご用心!何か飲み込んだと思ったら、すぐに動物病院へ

一気に季節が進んでいます。
ついこないだまで、半そでで汗だくだったのに…
そんな今日は、中秋の名月
今週いっぱいは、月を見るといいとか。
毎日保育園帰りに 親子で月光浴を満喫しています。

さて、お月見といえば お団子ですよね。
伝統的には、丸めたお団子を十五夜には15個盛ってお供えし、お下がりをいただく…というのが定番ですが、一人暮らしだったり 和菓子があまり得意でなかったりすると、持て余してしまいがち。
余らせるくらいなら、スーパーの串団子でいいかな…美味しいし…なんて、ついつい手が伸びてしまったり。
でもね。
スーパーのだけでなく、串のついたお団子は とっても危険なんです。
わんちゃんが、飲み込んでしまうことがあるからです。

飲み込んでしまった串は、お腹の中で刺さります。
木や竹だから消化される…と思いきや、消化される前に刺さりますから。
そうなると、消化液が 胃や腸からお腹の中へと漏れだします。
生きたまま、自分で自分を消化してしまうわけですから、もう大変なんですね。
そうなってしまう前に吐かせなきゃ!と思うかもしれませんが、かえって逆効果。
串など、尖ったものを飲んでしまったのを吐かせると、むしろ刺さってしまうことのほうが多いんです。

そんなわけで、串を飲んでしまった!という場合、内視鏡や手術で取り出すしかありません。
飲み込んでしまってすぐなどですと、内視鏡でまず探す→取れたらそのまま取る という方法ができる場合もありますが、
お腹を痛がっているなど、すでに刺さってしまっている可能性が高い場合は、麻酔で眠らせる時間を短くするため あえていきなりお腹を開けることも。

実は、こういったことがいちばん起こりやすいのが、明日から今週末にかけて。
スーパーで串団子をゲット→月光浴しながらもぐもぐ→食べ終わった串はゴミ箱へポイ→お散歩で通りかかったらなんだかいい匂い!→くんくん、見つけた!→コラッやめなさい!→取り上げられる前に飲み込んじゃおう、ゴックン
この流れです。

いつものお散歩コース、明日からは少しだけ いつもより気をつけて歩いてください。
猫さんは あまり串を飲み込んだという話は聞きませんが、可能性はゼロではありません。
猫さんのお散歩のときも、ご用心くださいね。

それでも なにか飲み込んでしまったら…、
お早めに 当院までご相談ください。
刺さってしまう前なら、お腹を開けずに 取り出せるかもしれません。

 

かかりつけ病院の選び方

朝晩の気温が だいぶ下がってきましたね。
10月異動の方は、引っ越し準備に後片付けと、大変な日々が続いているかと思います。
そうでないみなさまも、そろそろ、夏の疲れが 出てきていませんか。
夏風邪は こじらしてしまうと長引きやすいですから、おかしいなと思ったら 早めに病院へ行きましょうね。

最近、ネットで話題の記事。
ウサギさんの飼い主さんが、セカンドオピニオンを取られたところ、病院ごとでこんなにも違うんだ、診察内容と料金とか…と驚いた経験をマンガにした という内容でした。
A院:お預かりして、飼い主さまに見えないところであれこれ検査→原因不明、検査代として5万円くらいの請求
B院:飼い主さまに問診→飲み薬で5千円くらいの請求
その後、飲み薬が効いたのか無事回復…というものです。
その記事に対し、A院ひどいという意見、B院だってたまたまじゃないのかという意見、いろんな意見を目にしました。

まず、金額についてですが、動物病院は 人間の病院と違い、健康保険がありませんので、たしかに お支払いのときに ウッ…となりがちです。
人間の病院で いちばん多いのは3割負担の方ですが、ざっくり言ってその3倍くらいになるわけですから。
ウッとなりますよね。
上の記事では、A院・B院でそれぞれどんな診察内容だったのかについても書かれていました。
検査や注射、それぞれの金額も。
その内容を動物病院で働く我々からみると、A院はうーんまあ23区内で物価高めのエリアとかならわからんでもないかな…まあ高めだけど…これくらいの設定にしてる先生はまあいるんじゃないかなあ…ウサギさんだしねえ…といった意見が多く、
B院もまあこれくらいかなあ…妥当なとこかな…激安でもないし高めともいえないかな…といったところ。

それより何より、1ページ目の2コマ目、4コマ目が引っかかる!という獣医師が とても多かったです。
それは、病院の対応。
ここには、笑顔で 原因不明!と言い放つ病院スタッフと、明らかに納得できておらず 不満顔の飼い主さま…という対比が描かれています。
これが問題なんです。

当院をはじめ、ここに引っかかった獣医師たちは、どうぶつたちの治療をすることを大切に考えています。
それは当然の大前提です。
でも、それと同じくらい、飼い主さまに納得していただくことも 大切に考えているんです。
だって、納得できないことに、何万も払いたくないのがふつうです。
だから、わたしたちは、言葉を尽くして説明します。
納得できるように、きちんと伝わるように、説明をするんです。
そうでないと、治るはずのものが 治りが遅くなったりと、いいことがありませんから。

お引っ越しをされる方で、引っ越し先に 当院の知り合いなど ご紹介できる病院がない方などから、
どうやって新しいかかりつけ先を選んだらいいでしょう…と、ご相談いただくことがあります。
そういう方に、当院がいつもお伝えしているのは、「会話のできる病院がいいですよ」ということ。
たとえ愛想はなくても、きちんと話をしてくれる病院、納得させてくれる病院ならば、対応に納得できず不満…という事態は避けられますから。

この記事で、A院の金額が高い!という意見がとても多かったのですが、実際の飼い主さまの立場になると、マンガの中の飼い主さま同様、この子のためならいくらお金がかかってもいい という気持ちになる方、とても多いです。
大学病院などにセカンドオピニオンを求めて行かれる方などは、7桁支払う覚悟で生命保険を解約して…とか、来月からパートを掛け持ちします!とおっしゃる方も。
A院どころか、ひと桁違う請求でも、それでも、連れていって良かったです!と笑顔で戻ってこられる方、たくさんいらっしゃるんです。

病院ごとで、対応が違うのは当たり前のことです。
人間の病院に行っても、スーパーやコンビニで買い物をするだけでも、違った対応があるでしょう。
だからこそ、話をして、相性をみて 選ぶことが大切なんです。
そういうふうに 病院を選ぶには、時間がかかります。
だから、引っ越しをしたら、早めの病院探しをおすすめします。

小平市小金井市に引っ越して来られた方。
ぜひ当院に お越しください。
お話して、相性が合うなと思っていただけたら、かかりつけに。
ちょっと違うかも…と思われたら、また違うところへ。
何軒か回れば 必ず相性の合うところがありますから、まずは体調を崩す前に 行ってみてください。

あなたのご来院、お待ちしています。

秋になったらなんだか痒い!?それは花粉症かも!

台風が過ぎて、すっかり秋の空気です。
暑さも湿気も少しずつ落ち着いて、だんだんと冬に近づいていきますね。
過ごしやすくなってきた今、は、ハ、ハックショーン!!!!

実は、秋こそ花粉の季節なんです。(鼻をかみながら)

f:id:kurimotoah:20170922083834j:image

某国の秋。

1週間くらいしかない 貴重な秋です。

今年もう初雪が降りました…

 

春の花粉は、どちらかというと、スギやヒノキなど、背の高い木から降り注ぐようなものが多いんです。
風とともに、ざあっと舞い散る黄色い粉…
ああ…
想像しただけで、目がかゆい……
それにくらべ、秋の花粉は、草によるものが多いので、どうぶつたちにとっては おさんぽなどで 体についてしまいやすいんですね。

どうぶつたちの花粉症の症状は、わたしたち人間のように 目や鼻、のどといった呼吸器に出るよりも、皮膚に出るほうが多いといわれています。
特に出やすいのは、お腹や腕の内側など 皮ふの柔らかそうな部分。
それから、鼻の湿ったところと乾いたところの境目のあたり。
目頭や耳のうしろに症状の出る子もいます。
じんましん?あせも??みたいなブツブツが出る場合もあれば、とびひのような 痛痒そうな汁が出てしまうことも。
すりきずのかさぶたのようなものが あちこちできてしまう子もいます。
まさか花粉症とは思わず、すりむいたのかな?まあかさぶたができているし治っていくでしょう と放っておくうち、どんどん増えてしまった…なんてこともよくあるんです。

こうしたとき、わたしたちは、もちろん飲み薬や塗り薬を使います。
でも、同じくらい大切なのが、薬浴。
温泉療法ではなく、皮ふについている花粉を 物理的に洗い流すことで、症状を改善しようというものです。
一般的にいって人間用にふつうに売られているシャンプーは もう症状が出てしまっているどうぶつたちの皮ふには少々強すぎ。
処方されたシャンプーを、処方されたとおりの用法・用量で使うのがおすすめです。

当院では、心臓などに持病があって おうちでシャンプーできない子の薬浴を受けていただけます。
また、皮ふの症状があまりにもひどい、ダニなどにひどくやられてしまったなど、一般のサロンさんでお断りされてしまった…という方も、ご相談ください。

ときどきいただくご相談ですが、皮ふの症状があるときのトリミングはどうしたらいいの?というもの。
これは、どんなライフスタイルなのか?によって お答えが変わってきます。
週に何度もシャンプーや濡れタオルなどで拭いてやれる、という方は、短くしましょう。
サマーカットくらいでもいいです。
時期的に全身サマーカットはちょっとなあ…、と思われるようなら、せめて症状のひどいところやお腹だけでも、うんと短く。
そうすれば、洗い流したり拭いてやるのがラクになります。
手間がなくなりますから、続けやすく早く治るといういいサイクルに。
そのいっぽう、仕事や育児・介護が忙しすぎてそんなには難しい…頑張っても週1回拭いてやるのが精一杯…という方は、毛質にもよりますが 少し長さを残したほうがいいです。
毛が短いということは、そのぶん花粉が皮ふに付きやすくなりますから。
少し長さを残すことで、そのリスクを下げてあげましょう。
具体的には、8mmとか10mmくらいでしょうか。
毛質にもよりますから、トリマーさんとよくご相談ください。
ただし、毛が長いぶん、拭くのも洗うのもたいへんになります。
週1回、多少たいへんだけど頑張って拭いてやるという方はぜひこちらで。
たまに、二人の先生に真逆のことをいわれた…と、お悩みの方がいます。
短くしろといわれたり、長くしろといわれたり、どちらにしたらいいんでしょう?というお悩みです。
それはたぶん、先生たちに、どれくらいの頻度で皮ふのケアができるのか…ということがちゃんと伝わっていないんですね。
マメに洗えるか、どうか?ということを伝えていただけば、きっともう悩む必要はありませんよ。

それでもまだ…という方は、ぜひ一度ご来院ください。
あなたのための皮ふのケア、いっしょに決めていきましょう。

秋は旅行シーズン。ペットを連れてお出かけしよう!

前回の記事が 下書きになったまま投稿されてなかったことに つい先日気づいた1号です。
(T^T)

気を取り直して参りましょう。
今週末から、シルバーウィークに入るという方も いらっしゃるのではないでしょうか?
真夏は 夏休みなどのため どうしても混みあいますし、暑さのせいで事故のリスクも高くなるので、わんちゃんやねこさんと旅行したい…という方は 実は少なめ。
その代わり、ペットホテルが混みあいます。
そのいっぽうで、シルバーウィークに代表される 秋は、ほどよく涼しく 学生さんの夏休み期間も終わっているため、ペット連れでの旅行のチャンスなんです。

ペット連れの旅行に、動物病院としておすすめしたい持ち物が、かかりつけの先生からのお手紙。
診断書…とまではいかないけれど、いままでにかかった病気、かかりやすい病気、お薬の合う・合わないなどを書いてもらうのです。
最近では、ペット保険や ペットショップなどで、わんにゃん母子手帳なんて言い方で 配られていたりもします。
こういった資料があると、旅先で急に体調を崩したときに かかりつけでない病院へ飛び込みで見てもらっても安心なんです。
持病のある子、中でも 発作持ちなど、急に体調を崩す可能性があって、しかも はやく治療しないと命に関わる子の場合、こういったお手紙は特に大事です。
カルテを写メやコピーさせてもらう…とかでもいいのですが、カルテは先生独自のクセがあったり、電子カルテでも独特のシステムを見慣れていないと、ほんとうの緊急時には役に立たないことが多いんです。
他の先生に見せる前提で書いてもらう お手紙のほうが、緊急時の参考にできますから、おすすめです。

そして…
ペット連れでの旅行は、そうでないときより、少しだけ注意が必要です。
移動手段別に 見ていきましょう。

<h1>飛行機・海外編</h1>
国境を超えるような長時間のフライトは、どうしてもペットたちに負担がかかります。
乗り物酔いする子はもちろん、発作や腰痛、関節痛などのある子はまず症状が悪化します。
最悪、到着するやいなや現地の動物病院に駆け込むことになるかもしれません。

さらに、輸出・輸入という特別な手続きが必要です。
これがねえ…
日本から出るのはわりとかんたんですが、経験上帰ってくるのがものすごくたいへんなんです。

出発前にイチから準備すると、まず2ヶ月はかかります。
1号は手続き代行の業者さんを使わず、ぜんぶ自分でやりましたが、費用はかるく6ケタいきましたし、日本でも現地でも病院に何度もいくことになります。
注射や検査も多いうえ、帰りに現地の空港で検査を受けなければならず、予約したり長く待たされたりあちこち行かされたり…と、いろいろだいぶたいへんです。
獣医師ですから知識もあるし、2年住んだ国から日本への帰国 という状況でしたから、土地勘もある、さらにことばもそれなりに話せる。
そんな状態の1号でも、めちゃくちゃたいへんでした。
二度とやりたくない というのが本音です。

輸出・輸入の制度も現地のこともよくわからない、現地のことばでまくし立ててくるネイティブと互角に会話ができない、そんな状態でやることではありません。
なんせとにかく手間がかかるし、手違いで必要な書類が揃っていなかったりしたら、返送されたり殺処分されてしまう可能性があるので、プレッシャーがすごいんです。
旅行を100%楽しむことは難しくなります。

ペットと一緒に海外旅行する予算で、ペットホテルはもちろん、飼い主さまのホテルのランクをかなり上げられますし、なんならオプションでトリミングやツアーをつけても余裕でお釣りが来ますから。
数年単位の移住はともかく、ペットと海外旅行☆は止めておきましょう。

<h1>飛行機や鉄道・国内 編</h1>
移動時間・距離が長く、途中休憩も取りにくいので、そこに注意が必要です。
特に飛行機は、海外ほどの長時間フライトにはなりませんが、やはり気圧の上下があるため、負担がかかります。
持病のある子は、お薬を多めにもらっておいたり、旅行先の近くに 動物病院がないか、調べておいたほうが安心です。

飛行機は、客室内にいっしょに乗り込める路線と、スーツケースなどといっしょに預けなければならない路線があります。
ケージの大きさや材質に、航空会社独自のルールがあることも。
さらに、予約の枠がいっぱいだと、乗せてくれない可能性もありますし、ひと便に数席分しか枠はないことがほとんどですから、予約は早めにしたほうが安心です。

空港近くで働く友達によると、ペットの搭乗に予約が必要と知らず、搭乗口で大揉め→飛行機に乗せてもらえず駆け込みでペットホテル、というパターンが時々あるのだそう。
ケージのルールも知らなくて、慌ててケージを買っていく方もいるのだとか。
せっかくの旅行、出発前にケチがつくのは避けたいですよね。
予約、準備は万全に!

<h1>車・国内 編</h1>
いちばん自由が利くので、人気の行き方ですね。
最近は、サービスエリアにドッグランが併設されていることも多く、マメに休憩を取りながら進めるのも いいところです。

車といえば、車酔いがやっぱり一番心配。
特に、止まったり進んだり曲がったりを繰り返す市街地や、高速でも混んでくると酔いやすくなります。
車内の換気をしたり、朝ごはん抜きで車に乗せる、休憩をしょっちゅう取るなどの対策もありますが、
酔い止めのお薬を試したことのない方は、一度ご相談ください。
いいお薬、あります。

そして、サービスエリアのドッグランを使おうかな とお考えの方に 注意。
ドッグランには、ワクチンを打っていないと入れないところがあります。
狂犬病と混合、両方とも証明書を持っていきましょう。
なくしてしまった!という当院患者さまは、再発行もできますので、ご相談ください。

また、ああいったところのドッグランは、特にダニやノミ、病気をもった蚊などが多いもの。
山を切り開いたりして作りますから、もともと虫のたぐいが多いエリアです。
そこにわざわざ土や原っぱの場所を作って、ドッグランというふうにしているわけですから。
きちんと対策をしていかないと、危険なんです。
ただダニやノミがつく、蚊に食われるだけでは済まず、SFTSフィラリア、瓜実条虫などの病気をうつされてしまうかも。
ネクスガードスペクトラ、フロントライン、カルドメックなどの対策をお忘れなく!

 

 

SFTSって、なんですか?その2

いきなり涼しくなりました。
気温や気候が いきなり変わったり、台風など低気圧で 体調を崩しやすくなります。
9月は新学期、年度の後半に突入と、学生さんも 元・学生さんも、無理をしがちな時期ですが、たまにはゆっくり休みましょうね。
(鼻水を垂らしながら)(1号もまた鼻風邪の気配がします…)

さて。
先日の記事(http://kurimotoah.hatenablog.com/entry/2017/08/22/155903)に、大反響をいただいています。
某時事問題のときに続き、当院ブログ、たくさんの方にお読みいただいているようですね。
いつもありがとうございます。

この記事に関連してなのかはわかりませんが、先日 twitterでちょっと気になるツイートがありました。
ツイート主さんが消されてしまったのか、引用することができないのですが、「野良猫からSFTSをうつされて亡くなった方がいるそうで怖い。もし近所の野良猫から病気をうつされてしまったら…猫を駆除してほしい」といった趣旨のもの。
こ、これは…!
わたしたち獣医師が、SFTSの報道を目にするたびに 心配してきたこと。
それが、現実になってしまおうとしている…
そう感じて 記事にすることにしました。

SFTSが猫さんからうつった?というニュース。
あれは、まだ推測です。
事実としてわかっていることは、
①人間のSFTSと似たような症状で病院にかかったわんちゃん、ねこちゃんの血液やうんちから、SFTSのウイルスが見つかった。
②体調を崩したねこちゃんに咬まれてしまったことのある方のなかに一人、SFTSで亡くなった方がいる。
この二つだけなんですね。

SFTSは、まだ新しい病気です。
わかっていないことがたくさんあるのです。
順番に お話ししますね。

①について。
わんちゃん、ねこちゃんがSFTSにかかるのかどうかは、まだはっきりとわかっていません。
わんちゃん、ねこちゃんたちの体調不良の原因が、SFTSなのか、
別の原因で体調不良の子の体内から、たまたまSFTSのウイルスが見つかっただけなのか、まだわかっていないのです。
獣医学科の学生は、微生物学の講義で必ず習うのですが、コッホの原則というものがあります。
SFTSをはじめとした、伝染病のことを考えるとき、必ず押さえておかなければならない4つのポイントのことです。
ある伝染病に、1.特定の微生物が必ず関係していて、かつ、2.その微生物が分離でき、3.分離した微生物をほかの感受性のある動物に感染させると同じ病気にかかるうえに 4.同じ微生物がまた分離できること。
テロ事件でいえば、事件のたびに1.あるテロ組織がいつも犯行声明を出し、2.そのテロ組織は(他のテロ組織といつも一緒に事件を起こすわけではなく)独立して事件を起こす組織で、3.同じような状況を作ってやるとまた同じような事件が起きるうえに4.同じテロ組織がまた犯行声明を出す…というようなもの。
いまの状況は、事件は起きたし、現場に組織の人間がいたこともわかっているものの、犯行声明もまだ出ていないような状況。
ほんとうにテロなのか?それともただの事故なのか?
それもわかっていないという状況なのです。

②について。
ねこちゃんに咬まれたことと、SFTSで亡くなったこととの間に、因果関係があるのかどうかはわかっていません。
亡くなった方が、ねこちゃんに咬まれる前に、どこかでマダニに咬まれてSFTSにかかっていたかもしれないからです。
さきほどの、テロ事件のたとえを使えば、
テロ事件に巻き込まれて亡くなった方のなかに(=SFTSで亡くなった方のなかに)、テレビなどでテロ組織を批判してきた方がいて(=ねこちゃんに咬まれた方がいて)、その方が組織に暗殺された(=ねこちゃんからSFTSをうつされた)のか、テロ事件の現場に偶然居合わせた(=マダニからSFTSをうつされた)のか、まだわかっていないという状況です。

そう。
SFTSが ねこちゃんから人間にうつるという証拠はまだ見つかっていません。

これを短絡的に結びつけてしまい、猫さんからSFTSがうつる→野良猫は危険→駆除しなきゃ!という方向に進むことが どれだけ恐ろしいことか。
たしかに、SFTSは恐ろしい病気ですし、ねこちゃんに咬まれてうつされた可能性があるというのは 間違いのないことですから、
飼い猫ちゃんのダニ対策、外猫さんにむやみに触らない、ダニの駆虫をしてからでないと家には入れない。
そういった対策は、当然しっかりしなくてはいけません。
それは当然のことなのですが、そのいっぽうで、過剰に怖がったり 野良猫さんを駆除しようとしたりするのは 明らかにやりすぎです。
それは、テロリストにイスラム教徒が多いから、イスラム教を信仰する人の多い国から来た人の入国を禁止する とかいうことと同じなのです。

SFTSは怖い病気ですが、怖がり方をまちがえてはいけません。
そして、正しく対策すれば、それほど怖がる必要のない病気です。
正しい対策とは、ダニに咬まれないようにするということ。
草むらに行く時には、素肌を出さないこと。
そして、飼っているどうぶつには 動物病院で処方される薬をきちんと毎月使うこと。
ダニ対策をしていないどうぶつには、むやみに触らないこと。
この3つをきちんと守れば、SFTSを怖がりすぎる必要はないんです。

最近、ニュースなどで SFTSの話題がよく取り上げられます。
でも、いたずらに怖がらせ、危険危険と叫ぶばかりのものも多い気がします。
限られた時間で伝えると、どうしてもそうなってしまいがちですが、せめて当院ブログをご覧いただいているみなさまには、正しいことを知ってほしいと思います。

それでも、怖いという方は、ぜひお気軽に ご相談ください。
わたしたちの知識 お伝えいたします。